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ハリウッドのビッグバジェット作品で散々描かれてきた宇宙飛行士と残された家族の物語。そこで今さらフランスの監督がどんなオルタナティブを提示することができるのかと訝って臨んだが、これが見事な出来。メインテーマとして「女性の労働環境」という普遍的な問題が描かれているのだが、綺麗事だけではないヨーロッパ的個人主義に関する優れた省察にもなっている。90年代フレンチ・エレクトロを参照した、近年の坂本龍一らしからぬケレン味に溢れた若々しい劇伴も秀逸。
『ストレンジャー・シングス』のスティーブが当たり役となったジョー・キーリーが、Uber的サービス(タイトルの「スプリー」はその会社名)のドライバーとして迷惑系YouTuber的行動(劇中のモチーフはインスタライブだが)を重ねていく、極めて今っぽい作品。ストーリーは早々と非現実的な方向に転がっていくが、ソーシャルメディア社会の自己承認欲求モンスターの生態自体が非現実的なほど滑稽であるという批評にはなっている。それを映画で観たいかどうかは別の話だが。
ジャッキー・チェンが推進し、多くのアクション・スターに引き継がれてきた「主演俳優による命がけのスタント」の意義とその前時代性について、本作を観ながら改めて考えさせられてしまった。というのも、ロンドン、ドバイ、そしてアフリカへと目まぐるしく舞台が移行していくのだが、その背景にCGを使用しすぎていて、もはやどのシーンが実景なのかの判別がほとんどつかないのだ。正直、スタントの使用よりも、背景CGの濫用の方がはるかに作品の興を削ぐと思うのだが。
あたかもシリーズ作品かのようにキャラクターの背景説明や状況描写もないまま、冒頭から30分近く延々とのっぺりとしたアクションシーンが続くのを呆然と眺めながら、もしかしたら新しいストーリーテリングにチャレンジしているのかもと好意的に解釈しようとも思ったのだが、M・J・バセット、どうやらただの天然だ。エンディング・クレジットで取ってつけたような問題提起がされるのだが、それが専門書や専門家の言葉の引用ではなく、監督本人の文章なのにもずっこけた。
宇宙へ行かずとも出産後、仕事をする上で子供に我慢を強いた自覚があるので、ステラの眼差しが痛かった。子供の頃からの夢を摑み、宇宙飛行士になれたのに、無邪気に英雄扱いされる父親とは対照的に、母親はなぜこんなにつらい思いをせねばならぬのか? そんな切実さも映画では描かれていて、好感を抱いたし、娘との約束を守ったこの母を、私は好きだと思った。エヴァ・グリーンは母親の葛藤を誠実に表現していた。ラスト、元夫の泣き顔は不要。母と娘の笑顔で終わる方が爽やかだ。
SNSの恐怖と不条理を描いた、新感覚ジェットコースター・スリラー。画面に表示される、理不尽なフォロワー数の増減が、生々しい。車に取りつけられた夥しい数のカメラのチープな映像もリアルだ。人生の一発逆転をかけて、暴走する若き主人公カートの不穏さがジョー・キーリーの持つ魅力と相まって、目が離せない。カートに立ち向かうコメディアン、ジェシー・アダムスを演じたサシーア・ザメイタとのバランスも絶妙だ。ユージーン・コトリャレンコ監督の練られた脚本力に興奮。
エンドロールのおしまいまで、ジャッキー・チェン劇場を堪能。中国語映画を世界に知らしめた、スタンリー・トン監督とのコンビも30周年と聞けば、「気概を胸に〜」の歌詞にもグッとくるというものだ。ロンドン、アフリカ、中東、ドバイと世界中を駆け巡りながら、撮影時65歳のジャッキーが披露する、レジェンド級アクションも健在。特にアフリカの激流の川での死闘は、迫力満点。ヤン・ヤン、シュ・ルオハンをはじめ、若手俳優育成に努めるアニキっぷりは、リーダーのトンと重なる。
ミーガン・フォックス扮するサムの敵が、アフリカのテロリストなのか、ライオンなのか? はたまた世の男性なのか? 判然とせぬまま、固唾を飲みつつ、迫力のアクションを見守っていたが、冒頭のシークエンスまできっちり回収して後味スッキリ。M・J・バセット監督の目的は、密猟者の拠点となる、ライオンの繁殖場に対する問題提起だったようだが、雌ライオンを筆頭に、サム、人質の学生アシリアとテッサ、群れない女たちの強さが、監督の思いを観客に訴えかけるパワーとなった。
娘と離れ訓練を受ける女性宇宙飛行士サラの日々が、ドキュメンタリーの素材をラフに繋ぐような構成で淡々と描かれる。様々な言語が入り乱れ、肉体と知能を常にフル回転して訓練に臨む宇宙飛行士のリアルな日常から、シングルマザーのサラの葛藤がジワリと伝わってくる。しかし、ロケット打ち上げ前夜の彼女の行動は不可解。宇宙飛行士である前に一人の母親だ、といういかにもなクライマックス。一気に冷めてしまったが、それだけ私がこの作品世界に入り込んでいたからかもしれない。
SNSでバズりたいカートが実行するライドシェアを使った殺人生配信。それをスマホの画面やGoPro映像だけで構成、「ありふれた事件」「サーチ」などPOVサスペンスを思い出す。ネタ系動画制作者は、仕込みと現実のギリギリを狙うセンスが問われると思うのだが、それがない者はマジを捨て身でやるしかない。SNSが生んだその「いいね」至上主義の滑稽さが全篇を貫く。カートが作る楽曲のショボさやガラガラのDJイベントなど既視感を煽る細部の演出が上手くて、痛い。
80年代のジャッキー黄金期で育ったので、65歳のジャッキーが組織のボスというだけで感慨深い。その設定なので若手中心に物語は進み、彼らがジャッキー往年の唐辛子を使ったギャグアクションなどを披露するが、正直物足りなさは否めない。しかし激流下りの攻防シーンは圧巻。さすがにブルーバックだろうと思っていたが、例のエンドクレジットのメイキングで実際の川で撮影していることがわかり驚愕。スタンリー・トン×ジャッキーの真骨頂、このシーンだけでも観る価値はある。
東アフリカ、誘拐された知事の娘の奪還に成功した傭兵チームは、犯人グループに追撃され、ある敷地の家に逃げ込むが、そこには……。というプロットに「サイコ」や「フロム・ダスク・ティル・ドーン」のような後半から違うジャンルに変化するトンデモ作品を期待したが、前半の流れを中途半端に組み込む想定内の展開に。闇夜に浮かび上がる象の群れは美しく神秘的だったが、肝心のライオンはCG丸わかりで迫力に欠けた。ミーガン・フォックスのボスぶりは意外とハマっていた。