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世界で五指に入る軍事力を持つフランスの原潜映画なので、設定にはそれなりのリアリティはあるものの、人類の危機という大スケールのイメージと、スタッフの表現力との間に、かなりの落差を感じる。核兵器の存在によって国防の概念が揺るがされることへの追及も弱く、この題材を個人の視点で描くことの限界を意識させてしまう。映像はもちろん、脚本のレベルを含め、25年前にアメリカで発表された「クリムゾン・タイド」の完成度の高さに、あらためて思いを馳せることになった。
スペイン語圏から世界的な人気となった、ラテン音楽とヒップホップを融合した“レゲトン”。セクシャルな歌詞やダンスで、一部アーティストが批判の的ともなったが、そんな鮮烈でセンセーショナルな音楽ジャンルを一人の女性として擬人化させるというのが、本作の試みであろう。とはいえ、それが劇中の複数のパートナーとの性行為や破壊行為に代表されるように、良識や法治に反旗を翻すものとして位置づけるのは、痛快な部分がある一方で、一面的な見方であるようにも思えた。
洗練されたファッションを大衆化し、ジャンルの領域を拡大したデザイナーの先見性が、まさにそれが達成されつつある現代の価値観のなかでとらえ直される。格式や人種、体型などにこだわらない感覚や姿勢の確かさは最近の世の中の流れに合致し、打ち破るべき保守性を打破する役割を担ってきた人物だということが分かる。今昔の写真や映像、著名人のインタビューが並べられるオーソドックスな構成だが、既成概念を乗り越えることの重要性が具体的に示される、意義ある内容だ。
ジェンダー問題に根ざした、韓国における典型的な女性の生活と、著者自身の経験を織り込んだベストセラー小説を、映画作品として見事に脚色。ある年代の韓国女性そのものを抽出した内容は、“憑依”という要素によって、ある種ファンタジックに、性差別の歴史をも掘り起こしていく。「はちどり」とともに、男性が表立ってかたちづくってきた社会と歴史を、これまで陰とされてきた側からとらえる試みは、韓国のみならず、これからの世界の映画の在り方を予言する。近年の重要作だ。
冷戦時代に娯楽大作の一分野にあった潜水艦映画とは、中身が随分異なる。閉塞空間での緊迫したドラマの点は共通しているが、主人公が超人的な聴覚をもつソナー要員というのが斬新。彼を含め、2人の艦長と大将役の4人の豪華俳優の共演は、まるで演技のカルテットのような人間ドラマ。人類滅亡の危機を前にして、大統領の命令を忠実に実行するか覆すか。この展開に主人公のロマンスは不要な気がするが、フランス製の潜水艦映画は、予想以上に見応えのあるヒューマン&サスペンスだ。
試されているとは言い過ぎかもしれないが、ラライン監督の作品を見る楽しみは、物語の複雑さと予測を裏切られる快感。冒頭の信号機が燃えるショットの美しさに引き込まれた今回も、楽しみが削がれることはない。火炎放射器を持って立っているヒロインは放火魔か? を手始めに、大衆的な芸術を認めない夫に対して、あらゆる大衆文化を受け入れ、時に不道徳なまでの性的な奔放さをエマに発揮させる。その分、話を詰め込み過ぎて多焦点の感はあるが、通念に凝り固まった思考はほぐれる。
当時人気絶頂のザ・ビートルズのスーツのデザイナーとして名前を知り、田舎町の高校生だった自分が初めて知った海外のブランドだった。加えて眺める対象だった他の超高級ブランドに対し、地方都市のデパートで買うこともできた。カルダンがオートクチュールとしてでなく、プレタポルテで業界に参入したから若い女の子が手にできたのだと映画でその理由を再認識。多彩なゲストがこのことを含めた功績を語り、軌跡を映すカラフルな映像は、服飾を超えたカルチャーの、楽しめる記録だ。
まずは、共感力の高い物語だ。原作が話題になっていたが、そのエッセンスを損なわず話を現在に移行し、かつ普遍的なエピソードでドラマを組んだ結果だろう。夫の親との関係に育児、再就職に会社での人間関係など、どれも有る有る感が大きい。女性の生きにくさは、日本と同じなのだと妙に感じいる。個人差があるにしても、実は男性の問題でもある。世界経済フォーラムの分析による男女格差指数が、153カ国中121位の日本。「女性が輝く社会」などと看板を掲げるだけではダメですよ。
リアル軍事映画かと思いきや、潜水艦の上に立つ艦長がロケットランチャーで装甲ヘリを大爆破させたり、あっという間に核戦争の危機にまで話が広がっていたりする大雑把な展開に、コイツは細かいこと気にせずに楽しむ潜水艦娯楽映画だと早々に察したのだが、主人公が黄金の耳で艦の種類や位置を割り出す音響識別の天才という設定を生かした繊細な描写も存外に多く、この静と動、リアリティとトンデモのコントラストが編み出す緊迫感が最後まで息切れせずに持続して、滅法面白かった。
エマの狂気の原動力といえる子どもへの愛情を裏付ける具体的な描写がすっぽりと抜け落ちており、そもそも実子ではなく敢えて養子設定にしていることも含め、良くも悪くもこの部分が映画を異色方向に牽引しているような気がするも、劇中のコンテンポラリーダンスと音楽は文句なしの素晴らしさだし、倫理などクソくらえなエマの破壊的ファムファタルキャラに力負けしていない演出もザラついた雰囲気を貫き通してすこぶるカッコよく、今まで馴染みのなかったチリ映画への興味が沸いた。
若くして世界的な成功を収めているピエール・カルダンのドキュメンタリーであるから、素材はタップリ、頭からケツまで天才神話と革命的な功績を要所のみ隙間なくびっちり詰め込んでもこの尺では駆け足になるのは自明で、パーソナル面はジャンヌ・モローとの破局にわずか触れる以外はデザイナー、実業家としての仕事を通した横顔として描かれるにとどまるも、100歳に迫らんとしている今なお現役で自ら現場を指揮し、飄々と「私は芸術家になりたい」と答えるその魂には感動しきり。
女性映画であると同時にかなり真正面からジェンダー問題を扱った社会派映画でもあり、韓国の実情は詳しくないものの、恐らくはさほど誇張なく描かれているであろう女性の生きづらさには考えさせられる部分が多いうえ、フラットとはいえないまでもテーマの明確化のため男性を一方的に貶めることはしない公平性にも目配りの利いた完成度の高い映画だとは思うのだが、主人公に他人の人格が憑依するという要素が物語にさほど有機的に作用していない異物としてわずか喉に残ってしまった。