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15世紀の朝鮮王朝という、海外の観客にとってほとんど馴染みのない時代設定の上、序盤でそこから二段階で過去に遡るストーリーテリングの未整理さは気になったが、基本はバストショットの切り返し中心の工夫のない演出による会話劇なので話に置いていかれることはない。しかし、まったく知らない時代と土地の歴史劇でありながら、史実にはあまり忠実ではない(わかっていないことが多いらしい)とのことで、視点をどこに定めたらいいのか最後までわからなかった。
食と女性と家族をこよなく愛するイタリア人男性の類型的イメージそのままの素朴な人柄と、神の祝福について想いを巡らさずにはいられない圧倒的才能が、矛盾することなく共存しているパヴァロッティその人の魅力。その大らかさ故に彼が目指した、アートとコマーシャリズムの両立。死後に作られた作品ということで素材は限られているわけだが、ロン・ハワードらしい衒いのなさと題材との相性の良さもあって、音楽家のドキュメンタリーとしては出色の仕上がりとなっている。
冒頭にクレジットは挿入されるものの、第三者による本人を真似たあの特徴的なしゃがれ声のナレーションで進行していくことに強い違和感を覚えた。こうしたトリックは対象へのリスペクト的にも観客へのモラル的にもご法度なのではないか。作品自体はマイルスのキャリアを簡潔に網羅していて、先行するドキュメンタリー作品やフィクション作品と比べても入門篇としてはよくできている。ただ、半年前からNetflixで配信されている作品であることは言っておくべきだろう。
「ダンケルク」や「1917」の時代(本作のアメリカ公開は19年)に、ハリウッド大作のバジェット規模で、CGでの空中戦(それ自体はよく出来ているが)や戦勝国の軍人とその家族のベタなメロドラマを描いた戦争映画の企画がスルスルと通ったことに驚かされる。技術的に一定の水準に満たない作品以外に★一つはつけないようにしているが、本作の★一つはその企画の謎としか思えない鈍感さに対して。今さらエメリッヒ作品に多くのことは求めはしないが、それにしても。
人間社会では、頭を上げると叱られるほど、身分の低いチャン・ヨンシル(チェ・ミンシク)と、見下げてばかりの王・世宗(ハン・ソッキュ)。身分は違えど、同じく天を仰ぎ見るのが大好きな、二人の友情がほのぼのと描かれる。ヨンシルの緊張をボディタッチで解こうとする王と天才の天然っぷりという、二人のキャラクターの明るさが、映画のトーンを作っている。わかってはいたけれど、最後は二人の名演に泣かされてしまった。ホ・ジノ監督の時間のとらえ方は、相変わらずやさしい。
ブラジルで撮影されたプライベート映像(世界初公開)から始まる本作。鳥のさえずりはまるでパヴァロッティを祝福しているようだ。パヴァロッティの歌唱と彼の人生を重ね合わせた、編集の巧さは、全篇に行き届いている。圧巻は〈誰も寝てはならぬ〉だ。ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴとともにローマ・カラカラ浴場のステージで歌った時(90年)の、輝かしい表情。晩年、オペラへの情熱を取り戻してからの迫力の歌声。全盛期の美声とは異なるが、その声は、愛に満ちていた!
“ジャズの帝王”と呼ばれたマイルスの素顔に迫ったドキュメンタリー。50年も音楽業界の最先端に君臨したマイルスについて、功績を讃えるのではなく、「大好きだ」と微笑むクインシー・ジョーンズのやさしい笑顔が素敵だ。“帝王”というよりは、ジャズという範疇に押し込められることなく、自分の音楽を自由に演奏することにこだわった、クールな人生哲学が垣間見えてくる。『カインド・オブ・ブルー』の収録曲〈フラメンコ・スケッチ〉の使いどころに、監督のマイルスへの愛を感じる。
エメリッヒ監督が、ドイツ人の責任感をもって描いたミッドウェイ海戦。20年かけた渾身作は「戦争は伝染する」という冒頭のメッセージから、最後の「海は全てを覚えている」まで、冷徹な視点で、報われない戦争を描く。真珠湾で、若い米軍兵士が目にする阿鼻叫喚の地獄図が圧巻だ。彼が体感した死への恐怖が画面から迫ってくる。仲間を信じ奇跡を祈る、祖国への愛が、傷つけられた仲間の復讐心を煽り、敵軍への想像力を失わせていく不条理。浅野忠信らのキャスティングは独特で新鮮だ。
朝鮮王朝第4代国王・世宗の実録書に記された「蔣英実は、製作した王の輿が行幸中に壊れたため尋問を受けた」というたった一文から生まれた物語だが、その王の輿大破事件から始まり、二重の回想形式で綴られる。世宗と科学者の蔣英実が行なった天体観測機器などの発明とハングルの創製、それを良しとしない明の圧力、明に媚びる大臣らの策略。冒頭の事件の謎を最後まで引っ張り、その顚末を二人の格差を超えた友情、朝鮮王朝の未来への希望と重ねる構成の巧みさが深い余韻を残す。
ロン・ハワードが以前制作した「ザ・ビートルズ」もそうだったが、近年の音楽ドキュメンタリーは、リズムに合わせるようにテロップや画の繋ぎのエフェクトに力を入れる傾向がある。しかし本作は、オペラとの親和性が低いという判断からか、その手法がほぼない。それも含めたシンプルな構成は、パヴァロッティの天才性、世界の捉え方、そしてオペラの魅力をより正確に伝えていた。全くオペラに馴染みがなかったが、観終わって彼のCDを買ってしまった。
マイルスの豊富な本人映像、スチール、当時の演奏、多くの関係者(元恋人たち、仲間、近所の住人、邪険に扱われたA・シェップまで)のコメントを織り交ぜて、彼自身のナレーションでその生涯を振り返るのだが、当然その声は本人ではなく似た口調で俳優が行なっている。これが良い。関係者のほとんどが自然とマイルスのマネを交えながら彼について語るのも良い。愛と客観性のバランスが取れた構成が素晴らしく、長年のファンは満足するだろうし、マイルスの入門篇としても最高。
第二次世界大戦前夜、東京での山本五十六と後のアメリカ軍情報主任参謀・レイトンの対話から始まるので、双方の視点から描かれるミッドウェイ海戦を期待したが、やはりアメリカ側の英雄譚的展開が軸で、日本側は(敬意は感じるが)付け足された印象。戦艦、艦上機はリアルに再現、戦闘はエメリッヒ印なスペクタクルで、情報を巡る攻防戦としては物足りなかった。多数の実在の人物、実際の出来事を描いているが、コンパクトにまとめた過ぎた感もあり、あと30分長くても良かった。