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テレビで短篇を見ているときには、ひつじのショーンは楽しいキャラクターである。しかし長篇となると、文句をつけたくなる。ひつじの仲間たちものんびりした村の生活から、一躍、都会のゴミゴミした所に置くと、いくら着せ替人形のようなことをしても、動きのない表情がついていかない。しかもセリフがないことで、長篇のストーリーに支障をきたす。おかしいギャグもあるのだから、シュヴァンクマイエルのように使えるものは何でも使い、クレイアニメの楽しさを追求してほしかった。
ノルマンディーのこんなところに住んでみたいという風景とその土地でパン屋をしているおやじのファブリス・ルキーニが魅力的。彼がこねるパンもおいしそう。日本でも『金色夜叉』を喜劇的にした芝居はあるけれども、あの『ボヴァリー夫人』をラブ・コメディーにしてしまうとは驚き。俳優はいずれも適役で笑わせるのだが、当然ヒロイン以下、誰にも感情移入はできない。最後のシーンなど、あっけにとられてしまう笑いだけれど、原典を思うと、フランス人の「意地悪さ」も感じる。
ピクサー・スタジオのアニメは、着想が豊かで、楽しいのだけれども、十一歳の少女の頭の中に存在する五つの感情を擬人化するという試みは、「カーズ」とちがい、観念的だから、子ども向きではない。むしろ転校して、辛い思いをしている少女自身の物語に力を注ぐべきだった。同時上映の短篇「南の島のラブソング」の方が海底火山の恋を具体的に描いて秀逸。しかしCGアニメの技術向上は日進月歩なので、わたしが脚本に参加した「幻魔大戦」などもこの手法でリメイクしてもらいたいと思った。
劇映画とはいえ、4頭のラクダと愛犬とともにオーストラリア大陸の砂漠を横断するミア・ワシコウスカの演技と存在感には圧倒された。動物園でしか見たことはないが、映像とサウンドがいいのでラクダの口元や息遣いまでよく分かり、臨場感はたっぷり。だから野生のラクダが、正面から襲ってくる場面など怖い。恵まれた環境にあった彼女がなぜ、こういう冒険旅行をあえてしたのかはよく分からないが、人間、退屈な日常を切断して、ときには無茶をしたくなるという快感は伝わった。