パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
連続猟奇殺人よりも、社会に蔓延する猜疑心と不条理が恐ろしい。恐怖政治が生み出した強烈な怪物がふたり登場するが、そのうちのひとりである(そして相対的に観客の同情を引くであろう)連続殺人犯が、人知れず犯行を繰り返すさまは、あたかも社会の抑圧された部分がうごめいているかのようだ。でも、フリッツ・ラングのように撮れとまでは言わないとしても、アクションシーンの描写はもっと簡潔にすべき。スペクタクルとして魅力的なわけでもないし、緊迫感を削いでしまっている。
「なぜこんなときに限ってドアが開かないのだ」的な「間の悪さ」が次々積み重なり、それはまるで雪崩のごとく主人公一家を呑みこむだけでなく、たまたま居合わせただけの知人や、さらには赤の他人までをもなぎ倒していく。当人たちにとっては身の破滅の瀬戸際だが、傍から見たら哀しくも滑稽、だけど同時に激しく身につまされる。長回しがまったく退屈でなく、コメディ演出においてもサスペンスの醸成においても目覚ましい効果を上げている。この監督のほかの作品も公開されてほしい。
時間軸が複数存在し、すごく頭を使わないと理屈がわからなくなる点については別にいいのだけれど、今回のリブートに際してある登場人物に課された重大な変更については「それだけはやっちゃだめだろ!」と思う。それはさておき、サラの愛を勝ち取るために、カイルはシュワルツェネッガー演じる「守護神」を超えねばならなくなるのだが、どう見てもそれ、絶対無理……。登場時に「すごい大役だ!」と驚いたイ・ビョンホンも、終わるころには出ていたことさえ忘れられているという悲劇。
ブラック・コメディとして観ていたらシャレにならないくらいエグくなってきて、どういう心持ちで観るべきかわからなくなってきたあたりで、宣伝に名前が出てない某大物俳優が(「インターステラー」のマット・デイモンみたいに)いきなり重要な役で登場し、変なフランス語訛りの演技を披露しはじめて、無事ブラック・コメディに戻ってくる感じ。別に意外でも何でもないことを、勿体つけてなかなか見せなかったりする演出は謎。体格が変わっても面影の残っているオスメントがいい感じ。
殺人鬼を追うミステリーというより、全体主義の〝人々を殺しながら生かす〟おぞましさを描いた作品として観た。同僚に売られたり、家族を疑い欺くなど、その描写にはとことん気が滅入る。おかげで、劇中で誰かがドアをノックするたびにこちらもビクつく始末。さらに、鉛色の曇り空、無数の枯れ木、水たまり、泥と、これまたテンション下げるアレコレが映し出されるのだからたまらない。七三ツーブロックのT・ハーディは鳥肌実にしか見えず、ロシア訛りの英語セリフは珍妙なだけ。
父親はこうでなきゃいけない、夫婦はこうあるべきといった観念を、雪崩が見事に粉砕していく。夫妻間の不協和音を感じ取ってグズつきまくる子供たちの〝引っ張り〟も手伝って、イライラとモヤモヤがじんわりと重く迫ってくる。それでも、ある程度は「わかるわかる」「あるある」とクスクスできる範囲に収めてくれた監督の配慮に感謝、手腕に感嘆。とはいえ、めでたし×2の後で意地クソ悪いラストを用意するあたり、やっぱり油断できない。この監督の他の作品を、是が非でも観たい。
絶大な力を持つ者を「3」か「4」の頃へ送り、シリーズ止めてきてほしい。そう思ってはいたが、やはり観たくなる。現在のシュワの風貌を活かした初老のT-800というアイデアは面白いし、「1」「2」にまつわるキャラや小ネタを散りばめたファンへの目配りも○。だが、サラと初老T-800との絆の描き方は軽くて染み入ってこないし、別の時間軸がどうこうだなんてなってくると話の幅が広がりすぎてシリーズ特有のループ的スリルが薄味に。それでも、「必ず戻ってくるな」とは言えない。
切って、寄せる、セイウチ化手術(チラッと映る程度だが)とその後の調教飼育は、かなりのグロ度。それをやらかすジジイの狂いっぷりもなかなか。軽薄短小を極めた男を快活に演じるジャスティン・ロングも○。だが、サイコ・ホラーでいきたいのか、ブラック・コメディでいきたいのか、どっちつかずの印象。両方でいきたいのだろうが、なんだか咬み合わさってない。そんなチューニングの狂いを楽しめばいいのだろう。後半に顔を出す某海賊俳優は、役を作り込みすぎていて興醒め。
妻へのスパイ疑惑、左遷、拷問、スターリン圧制下で連続殺人犯を追う警官に降りかかる信じがたい苦難。パステルナークやソルジェニーツィンの世界そのままだ。ロケを多用した監督の手腕、的確なキャスティングと相まって見応えのある重厚な映画となっている。膨大な原作を巧みにまとめた小説家でもある脚本家リチャード・プライスの功績が大きい。異常な殺人鬼を生み出した歴史的背景、多年にわたる夫婦のドラマなど原作を一歩進めている。原作はロシアでは今でも発禁とのこと。
雪崩が起きた時、家族を捨てて逃げようとした夫の怯懦を妻は許せない。家族の間に大きなひびが入る。雪崩はスロープ整備の人工的なものだった。それはアルプスでスキーを楽しむセレブ家族の中に監督が投げ込んだ一発の爆弾だ。観客は誰にも感情移入しないで一家の心理的葛藤を客観的に眺めることが出来る。まさに監督の狙いであろう。幸せな家族の中のささやかな齟齬、凡そ映画的ではない卑近なテーマでユニークで刺激的な作品が出来上った。映像は極めて映画的でスリリング。
キャメロンは、自作へのリスペクトがこめられていると讃辞を呈しているが果して本音だろうか? 派手なアクション・シーンがジェットコースター的に3D画像で続き、確かにシリーズ最大のスケールではあるが、若き日のシュワちゃんやリンダ・ハミルトンに匹敵する新しい魅力を誕生させるに到っていない。人間とターミネーターの間の交歓、古典SFの持つシンプルで懐かい味わいが薄いのが淋しい。キャメロンの意図を継ぐと言うよりは「ターミネーター4」の続篇と言った方がいい。
『悪趣味映画』という言葉はトッド・ブラウニングやジョン・ウォーターズなどの映画を語る場合よく使われるが、この世にもおぞましい変身譚もまさしく悪趣味映画の一つと言える。ブラックなユーモアと奇妙な恐怖感は一寸類のないもので、ケヴィン・スミス監督の特異な感覚は非凡だ。セイウチに変身させられた主人公の醜悪で哀しげな顔(特殊メイク秀逸)は忘れられそうもない。コメディのようなタイトルだが、タスクがTASKでなくTUSK(獣の牙)だと判る人がいるだろうか。