パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
ほとんど同じ話でアラン・ドロン制作・主演「カサノヴァ最後の恋」という劇的な作品があった。原作はA・シュニッツラー。本作はカサノヴァ自身の回想録が原作となる。ダルデンヌ兄弟の共同製作とあって、リアルで劇的な演出ではない。アルベルト・セラ「ルイ14世の死」のように、歴史上の人物の神話性をR]ぎ取り、凡庸な物語へと引き戻す姿勢。従来の誰もが虜になる美男子のカサノヴァ像とは掛け離れ、ヴァンサン・ランドンが一般人の等身大の新しいカサノヴァを提示して見せた。
さすがの韓国。まるで日本の少年コミックから出てきたような超人的主人公、その世界観とテンポ。物語の「目的」と「動機」の関係がちょっと安直な気もするが、お子様エンタメとしては十分すぎで申し分ない。撮影や音楽、演出、サウンドデザインはエンタメ系クリストファー・ノーランを目指しているのか(笑)。囲碁の知的思考からバイオレンスアクションまで主人公を超越的に成長させる修行の数々。これを見て少年たちは部活にやる気を出すのだろうか。まあ楽しいから良いのか。
ディケンス『二都物語』からの引用で、1940年代の英国は様々な対極性が共存していたと語る。この物語は引き裂かれた対極性の物語だ。青年たちの根底にあるのは、「人類の平和」か「国家への愛」か。この二大倫理の選択により分断を引き起こす。しかし最終的には「家族への愛」という小さくも尊い結論に至る。主人公を二人の女優が好演。特にデンチの不安定な老女の演技が若いクックソンを際立たせる。また撮影が素晴らしく画面に品格を与える。エンタメとしても十分堪能。
中盤からの低い彩度の絵作りは、ウクライナ地方の悲惨な飢饉を表現。宗教は民衆のアヘンとする共産主義は、言語の定義によってのみ社会を形成する。ジョーンズのような不屈なジャーナリスト魂が追い求める「真実」は、共産主義には存在し得ないというのがこの映画の主張だ。しかし今や日本を始め世界中の報道は、印象操作や各国政府のご都合主義の圧力が存在する。フリーだからこそ信念を持ち続け、国家の暗部を照らし続ける世界中のジャーナリスト精神を刺激してもらいたい。
#MeToo時代にカサノヴァとは挑発的。しかし男性客の膨らむ下心をよそに主人公はストイック、若い細身のツンデレ娘に翻弄され、バードキスに達しては突き放されウジウジ悩む弱気なカサノバだ。そもそも30代のカサノヴァ(「最期〜」とはひどい)を還暦のV・ランドンが演じるのは無理があり、しかも開巻から1時間経っても情事はほとんど発展しないので官能を期待するとガッカリする。あえて#MeToo時代のカサノバを描いたシニカルな喜劇とも解釈できるが私には笑えなかった。
孤児が異能の師に学び成長する定番路線のダーク版。囲碁のルールや戦術の知識は必要なく、日本の麻雀Vシネマをグレードアップさせたような荒唐無稽な劇画調でサンダル履きで気楽に観るには最適。スチームパンクな殺人碁盤や往年の成人映画館を思い出させる汚い便所での格闘シーンなどオッサン向け趣向に驚喜し、見事な悪役顔を揃えた俳優陣にウットリしてるとアッという間に映画は終わる。B級娯楽作が好きな読者のために★ひとつオマケ。2本立て公開ならさらに嬉しかったが。
J・デンチが力演する老女の青春時代をS・クックソンが可愛く演じる。戦時の秘密プロジェクトに一般女子がスパイとして関わる展開は実話ベースとはいえやたら接吻しまくったり少女マンガ的ロマンスを強調しすぎで現実離れな印象。英国の原爆開発計画「チューブ・アロイズ」の全体像も説明不足で、事前にNHKのドキュメント等で予習すると理解の助けになる。「007」ファンは老いて退職したMが二重スパイで逮捕され、若き日を回想するスピンオフと脳内変換すれば楽しめる。
良作。重い題材だが演出がスピーディで気分が沈みすぎず、しかも映像に70年代の男性映画のような硬質なテイストがあり引き込まれる。中盤のウクライナを描く色彩を排した寒々しい映像は圧倒的だ。宣伝文から予想しうる既知の事件を“歴史の闇”とぼかす売り方には事件を告発するだけの内容かと危惧したが、“闇”については案外比重がなく、知らなかった人は復習がいる水準。その告発後に別の問題提起を用意しているのが周到で、今日的かつ切実なトピックは深く考えさせられた。
現在の世界的な状況や時代性において、映画でただ「老いらくの恋」や「恋の駆け引き」だけを堂々とテーマにするのは開き直りに近い。しかしこの作品ではそれも味というか、呆れつつも一周回って意外に楽しめた。新しい要素や斬新な視点に挑戦するのではなく、品位をもって説明しすぎず、ゆるゆると情景を収めている空気にフランス映画の名残が見えた。ブノワ・ジャコーにこれまでいまいち特性を感じてこなかったし、本作も緩い印象なのだが、刺激の淡い食間の一服としてアリ。
「神の一手」のスピンオフで、本作も変わらず『魁!!男塾』のような過剰で突拍子のない内容だ。囲碁の天才たちとやくざ社会のルールが当然のように同化している設定と、とち狂った物語に負けない俳優たちの強い個性を持った顔。その真摯な演技。囲碁で横のつながりを持つ裏社会の、戦いのすべてが碁盤で行われるのは几帳面でミニマムだが、まるで凝視したら絢爛豪華な世界が広がって見える覗きからくりのよう。韓国映画らしい珍奇さとはいえ、哀愁や思慕なども印象に残る。
「実話に基づいた小説の映像化」で脚色があったのか、主人公を巡る人間関係が劇的な枝葉末節とともに綴られる。だが現代と過去の往来で駆け足の内容となっており、言葉が足りない部分や、辻褄が合っているのか不鮮明な箇所がある。女性の恋愛劇の面は大きく、上司との不倫関係がこじれると、彼が唐突に尊敬に値しない挙動を取るように見えるなど、感情のフィルターがかかって演出されている。本作の主人公の申し開きは、近年の暴力に満ちた世界状況からするとかなり古めかしい。
連なるシーンのテーマごとに、編集のタイミングや話法、撮影のスタイルを大胆に変えてくるホランド監督やスタッフの能力に感嘆。ウクライナでの没入感や、次の場面に入ったと気づかせる派手さはありつつ、しかし一本の映画の調和を乱さない範囲での移ろいが見事。その末期も含めて主人公と、映画全体の趣旨も絶望に突入していく恐怖を伴う、かなり強面な作品だ。カービーの激しい顔立ちも素晴らしくマッチしているが、ただ食えない人物としてのサースガードの起用は退屈。