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職場の平和と秩序を至上とするOLたちの、共感力と毒舌が混在する楽しいやりとりに紛れた鋭利な言葉にハッとする。たとえば、オフィスの空調を下げた社員Aについての、「今のうちらに必要なのは真実よりも矛先だから、Aを犯人ということにして、心ゆくまで悪口を言おう」という台詞。脚本を手掛けるバカリズムの人間に対する観察と冷徹な分析が、OLのキャラクターに落とし込まれ、日常会話に仕立てられている。ドラマ版を経たからか、役者たちのかけあいも心地良い。
タイトルの“仮面”を担うピエロのヴィジュアル造形と、“中の人”の優れた身体表現が、求心力になっている。ピエロにありがちなエキセントリックな言動を排除し、沈黙と必要最小限の暴力のコンビネーションで場を支配する。正体が判明するときには、“意外性と説得力の共存”という難易度の高いカタルシスを達成。そのピエロの正体と目的を探りながら困難を打破する主人公を演じる、坂口健太郎の熱すぎないアプローチも、“脱出もの”において観客が感情移入する器として大正解。
田舎娘の愛が、おじさんたちのコーラスグループに加入するまでに80分が経過していた。起承転結の“転”に至ってようやく、この作品の主人公が愛ではなくおじさんたちだと認識。愛にだけ回想シーンがあるなど、彼女の人物造形が厚くなり過ぎ、作品の主体がボヤけてしまった。駆け足で迎えた“結”での彼女の唐突な決断とおじさんたちの元サヤは強引。生の舞台では成立しても、映像ではもっと楽曲数と尺をシェイプしないとダルい。いろいろな点でバランスが悪いが、のんの変化に★を。
父親が家族を不幸にするまでお酒を飲む理由を、主人公が最後までわからないまま終わる。漫画の原作者=主人公だからといって、わからないものをわからないまま映画にすることが、原作に対して誠実だとは思わない。実写化の意味とは、原作の人物や物語を独自の視点で考察して映像化し、観客に提示することでは? 主人公のモノローグをふきだしにして、カットを淡々と繋げる漫画的な映像にもなぜ実写化したのかという疑問を感じる。役者たちがみな、窮屈そうに見える。
映画を観てると、時々他事を考えてしまう。退屈な映画だと尚更だが、これは他事を考えさせない稀有なもの。大きな出来事もサスペンスもアクションもなく、クライマックスすらないのに時間を忘れて観た。これは一つの偉業である。退屈な日常をちょっと面白くするヒントをもらった気がした。バカリズムという人の才気が人を幸せにする。が、彼が主演をしたことで、バラエティー色を強めている。普通に女優を主役にしていたら、どんな映画になっただろうかと観終わって思ったのだった。
ピエロの仮面の男がコンビニ強盗をし、そこで出くわした女子に銃創を負わせ、彼女を人質にして病院に立てこもる。が、その病院にはおぞましい秘密が……。面白そうな話だが、女子の負った銃創にまず引っかかる。どう見ても切り傷にしか見えない。脚本も書いている原作者が現役の医師なら、それも銃創の一種なんだろうが、素人には納得がいかない。後でそれが臓器移植の手術痕だとわかるが、「ウソっ!?」である。それにしても、立てこもりの病院内の緊迫感のなさは何なんだろうか。
タイトルからして郷愁を誘う。ベテラン脚本家による舞台は、シリーズ七作まで作られている。「山田修とハローナイツ」というコーラスグループに歌手を夢見る田舎娘が加わる。もうそれで話の流れが想像がつき、思った通りに展開する。定番なのが、なぜこんなに心地よいんだろう。心躍る安心感! 味のある役者が隅々に至るまで配されている。熟達の脚本に軽やかでセンスのいい演出。どんな時にも心がどこかに飛んでいるようなのんが異彩を放っている。とても気持ちいい映画を観た。
「ルームロンダリング」は中々のものだった。それで長篇デビューした片桐健滋監督の次回作のこれは、期待に違わぬ快作。題名から連想されるような隠隠滅滅なものにはしていない。父親がアル中で、母親が新興宗教にはまった末に自殺となれば、娘の人生は悲惨としか言いようがない。実際に悲惨だが、それを淡々と軽やかに描いている。だから余計に哀しさがじわじわとこみ上げてくる。渋川清彦が絶妙だ。学生の映画にでもノーギャラで出る渋川さんの映画愛は本当に涙ものである。
コントの数珠つなぎでは90分持つのかという危惧があったが杞憂で、挿話自体がドラマで一回練り上げられて面白いし、挿話の連鎖でキャラも立ち、同じ挿話の少しずれた反復など時間経過を利用するので一本の映画としてそれなりに持続している。男が演じるOLという主人公の立ち位置は絶妙で、男の視線から距離を持ってOLたちを見る対象化と、同じ女子としてあるあるネタに共感する同一化を同時に実現している。あまり映画として構えず、日常ものアニメの実写版のようにして見るべき。
病院の謎と、犯人の謎の二系統の謎があるのだが、前者に偏りすぎ。監禁されているわりに主人公らが病院を歩き回るので、監禁の緊迫感が薄れ、流れが一方向に収斂し、単調、病院の謎も割れやすくなっている。犯人の側の謎もバランスよく配置し、犯人の正体、真の狙いを主人公が知り、犯人と協力していくという逆転を後半以降メインとしていけば、映画全体がダイナミックになったのでは。本当に悪い奴も、ほとんど名前のみで抽象性にとどまり、犯人=主人公=観客の情動も高まらず。
25年間続くシリーズ演劇と言うが、さすがにキャラも作り込まれて危なげない娯楽作に。若い女子を入れる入れないでグループが険悪な雰囲気になり、各自の来歴や抱えるものが露わになってくる辺り、やはり映画は何かが崩れる所こそ面白い。岩手が舞台でのんを起用というキャスティングは安易だが、彼女の頸さで一本芯が通った感じ。ただし女子とおっさん集団の違和感は拭えず、せめて女子を昭和歌謡マニアとでもしておけば女子参加の不自然も歌手志望という動機の古臭さも払拭できた筈。
ダメ人間ではあっても愛おしい存在として父を描けていたら少しは変わっていたのか。妻を宗教に走らせた末自殺に、娘をDV彼氏への依存症に追い込んだような存在が、死後に残した一言ですべて帳消し、いい人だったで終わっていいはずがない。父を分かってあげられなかった自分の方が化け物だったなど、殴らないでくれたDV夫に感謝するレベルの洗脳ではないか。確かに原作者にとってこれを描くことは救いだったにせよ、こんな異常を面白おかしく描こうとする映画の神経が分からない。