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岩井秀人や秋山菜津子ら俳優たちが文字通り体を張り、濃い目に味付けされたキャラクターが放つセリフのやりとりで笑わせる、大人の艶笑もの。バリエーション豊かなセックスシーンからは、快楽やエロスよりも、己の決めた復讐ノルマに縛られ空回りする、主人公の空洞と悲哀が強く立つ。老いに伴う孤独への憂いや、SNS社会への批判なども込めた監督4作目にして、初のオリジナル脚本で、松尾スズキらしさがようやくストレートに表出した。ラストの先を想像する楽しみも。
どんなに愛し合って結婚しても、日常生活でのストレスが積み重なっていく。夫婦に限らず、同棲やルームシェアを経験した人なら誰もが知るベタ中のベタな感情を、特殊メイクアーティストでもある監督が独創的に映像化。夫の咀嚼音をはじめとする不快な生活音や、ストレスから難聴になった妻に聞こえる音世界など、巧みな音響設計に引き込まれ、妻の心境を擬似体験できる。ヤン・シュヴァンクマイエルのような悪夢的かつ寓話的なクライマックスでも監督の本領が発揮されている。
観客に問題提起するテーマとストーリーは至極まっとうだが、いくつもの驚きがある。貫地谷しほりがファーストシーンの眼差しだけで、その後の物語を予感させたこと。永井大が二枚目俳優ではなく、島の漁師であり父親にしか見えなかったこと。なにより、産みの母と育ての母が取り合う少年の愛くるしさに説得力がある。ロケ地に暮らす素人の少年の、養殖ではなく天然の魅力が、そのまま映像に映し出され、劇映画として成立している。いったいどんな演出をしたのだろう。
6年近くもの年月をかけて、オカルト界隈の人たちに取材をし、UFOを呼べるという俳優に同行して日本各地のUFO目撃スポットを訪れる、作り手の熱量に圧倒される。とはいえ2時間は長い。オカルト好きな人を狙ったタイトルと、興味深いトンデモ人間ドキュメンタリーに落ち着いた内容がミスマッチ。また、インタビュイーとして登場する人たちを紹介するテロップがないのは、このジャンルに明るくない観客に対して不親切ではなかろうか。集めた素材の調理法に改善の余地あり。
この映画をどう評していいのか悩んでしまう。「快作」と言うべきか。マルクス兄弟を思わせるナンセンスコメディ。設定からしてナンセンス、いい意味で。「バカバカしいことこそ命」と言わんばかりの開き直り、もちろんいい意味で。松尾スズキという役者に改めて感服する。バカバカしいことにがむしゃらに体当たりしているが、がむしゃらに見せないところが得難いセンスである。このままずっと見て笑っていたい……。これからだと思われるところで終わってしまった気がして、悔しかった。
結婚五年目の夫婦の、何事もなく平穏で、退屈でさえある日常生活。そこに何かが侵入してくる。夫が持ち帰ってくる会社の同僚の話や、それまでは気にもならなかった夫の咀嚼音。犬の散歩に出た妻は、公園の隅に積まれた枯枝の中に、奇妙な穴を見つけ、それから耳鳴りが始まる。それまで何気なく目にしてきた日常の様々が、異様なものに見えてくる。うまいなぁ。音が映像以上に語っている。夫婦の日常生活に潜む底知れない怖さが鮮やかに浮かびあがっている。が、もっと長尺で観たかった。
金が尽き、乳飲み子の息子をネットカフェに置き去りにしてビルの屋上から飛び降りようとする女。が、柵を乗り越えようとした時、それで息子をあやしていたオモチャの携帯を取り落とし、そこから陽気な『おおスザンナ』が流れる。悲しい場面に楽しい音楽がかぶるとますます悲しくなる。黒澤明もよく用いた、対位法である。夕陽が痺れるような効果をもたらしている。隙がまったく見られない立派な映画だ。が、客は勝手なもので、題材にどこか既視感があるのに不満を抱いてしまう。
一時ブームになったUFO伝説。今や下火になったとは言え、探求者にとっては永遠のテーマであり、憧れでもある。僕もその一人。妻は何度もUFOを目撃しているし、僕も高三の元旦に特大の“らしきもの”が空に浮かんでいるのを見た。あれは幻だったのか? この映画はそのUFOを追う執念の人々を描いている。「フェイクか真実か」。が、そんなことはだんだんどうでもよくなって来る。そこには探求者たちの夫婦愛、人間愛、切実な現実がある。それこそが見もののとても真摯な逸品。
SNSで妻の浮気を知った男が、奪われる財産を減らすため金で風俗嬢を買いまくり、遂には「女島」へ。そもそもSNSを鵜呑みにする辺りで頭悪いだろと思ってしまうし、ギャグが下品なのはいいとして、ほとんどが上滑りしていて笑えない(これは個人差があるだろうが)上に、何が描きたいのか(エロなのか愛なのか。それにしては裸こそ多いが全くエロを感じないのは決定的にダメだろうし、妻への捩れた愛もとってつけたようで、中山美穂の無駄遣い)どこを取っても中途半端。
中年夫婦、何事もきっちりした妻が、どこかガサツな夫の些細な仕草、その音が神経に障り、その苛立ちは、林の中で耳の穴によく似た穴を見つけたことで亢進してゆく。くぐもったり、いきなり高まったり、音の設計に注意が払われている。妻の不満が一瞬に爆発した程度で元通り。ささいな違和が、我々の無意識次元で抱く怖れにまで触れ、不意に深遠な所に連れ出される、わけではない。狙い自体が編集や特撮に凝る方にあったろうが、脚本の掘り下げに注力してもらいたかった。
家族として愛情をもって育ててきた育ての母と、貧困と孤絶故に捨てざるを得なかったが、今子供を取り戻そうとする生みの母。しっかり作られていて好感は抱けるし、メッセージ自体(子供は一人の親のものではなく、社会全体のもの)は現在的であり、重要だとは思うのだが、登場人物の全員が善人過ぎて、葛藤がギリギリのものとして刺さってこない。是枝のようにあえてエグくする必要もないが、汚れ役の一人も置いて、生みの母の苦境を社会的に際立たせてもよかった。
UFO研究家に月人の解剖映像を見てもらう、その中にいた、自分はUFOを呼べるという人に興味を抱き密着、するとその人が失踪したり、その人のインチキ現場捕まえたり、と話がずれてゆくのが人間的で面白い。月人の映像のチープさ、UFOを見たという人の飲食店の異様な張り紙の多さ、呼べる人の自宅の変な画(ちょんまげの町人)と、こういう世界の人は映像センスに癖がある。フェイクでもなく、フェイクの暴露というわけでもなく、人って面白いな、という映画。