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誰もがアクセスできるわけではない世界をカメラに収め、できるだけバイアスをかけずに整理整頓したものを観客に届け、観た人の知見が広がる、正しいドキュメンタリー。しかも、この世に生きるほぼすべての人に関係がある、「死にゆく人」と「看取る人」の在り方を巡るテーマも意義深い。長期間に及ぶ在宅介護を終えたときの、看取った人たちの十人十色の反応と数々の亡骸をじっくりと撮影していることから、取材者が取材相手から信用されていることも伝わってくる。
ヤクザの組員たちのキャラクターと関係性が、「また奴らに会いたい」と思わされる可愛らしさ。アクション監督下村勇二&西島秀俊の貫禄の格闘シーンをお約束に、痛快人情コメディとしてシリーズ化できるポテンシャルを感じる。が、ナンセンスなギャグ、特に効果音の使い方がいただけない。例えば、豚の丸焼きの顔を何度もクローズアップにするたびに「ブヒ!」という豚の鳴き声が重なることで、会話のリズムが止まってしまう。シリーズ化には賛成なので、ギャグ禁止でぜひ。
妊活という極めてデリケートな題材を、夫婦がタッグを組んで頑張るスポ根的な切り口で描いたことで、間口の広い作品に仕上がった。生殖能力に難ありと診察された夫が奮起し、トンデモ妊活法にすら縋り、アスリートのように努力を重ねる姿は中年のヒーローだ。観客は泥臭く奮闘する彼を応援し、医師の言葉に一喜一憂する。監督の持ち味であるヌケ感のあるコメディセンスもプラスに作用。やたら耳障りのいい、FM系英語曲のBGMにより、監督の色が悪い意味で漂白されてしまった。
曹洞宗本山での修行の光景の荘厳さや、被災地を捉える映像の力強さに目を奪われる。尼僧・青山俊董老師の言葉や、被災した兄弟子が軽トラのなかで咽び泣くショットなど、ナマが映し出されたパートに対し、僧侶たちが本人として出演するドラマパートの素人芝居が実にしんどい。また、食、仏道、日本の仏教、被災地などに関する数々の問題提起は興味深いが、散漫に終わってしまった。それを包括するものとして“宇宙”という概念を引っ張り出し、帳尻を合わせた感は否めない。
在宅の終末期医療の数々を映し出したドキュメンタリー。森鷗外の孫に当たるという小堀鷗一郎氏の患者とのユーモラスで暖かい丁々発止が心を打つ。在宅で死んでゆく人々への慈愛に満ちた鎮魂歌。中でも、盲目の娘を一人残して身まかる父親の死に様は崇高とすら思えた。フィクションがどんなに頑張っても絶対に勝てない現実の人々の生き様、死に様がここにある。が、テレビのドキュメンタリーを編集し直したというこの作品を映画というには、少し抵抗がある。
ヤクザを育てる学校の話ではない。ダメな高校をヤクザが立て直す話だ。設定も筋運びも目新しいものはない。だが、面白い。東映ヤクザ映画へのオマージュなのか、劇伴にのせたメインタイトルの出から、惹かれる。全篇にまぶされた笑いも泣きも過剰になることなく、さらりと差し出してくれて、嫌味がない。話の展開もパターンと言えばそれまでだが、パターンと思わせてしまう隙を見せない。職人技である。これが今の日本映画の平均値だったら、どんなにいいだろう。
実話はなんと言っても強い。“これ、本当だよ”と言われて見ているから、邪念も入らない。作家というとだいたい太宰のような“無頼”な男を出してくるが、ヒキタさんは良識のある誠実な男だし、妻はそれに見合うように健気で可愛い。とても好感が持てるのだ。だが、今や妊活は巷に情報があふれていて、中でなされる妊活の試みはおなじみなものばかり。十年前にこれが出てきたら、驚きを持って迎えられたであろうに……。好感以上のものがほしかったとも思った。
福島と山梨に生きる二人の若き曹洞宗の僧侶の日々の営みを描いている。曹洞宗青年会のプロモーション映画なのだろうか。タイに蠢く怪しげな人間たちの生態を映し出した「バンコクナイツ」の監督が、一転して今度はお坊さんの日常生活を追っている。題材は宗教だが、説教臭さは微塵もない。些細なことを淡々と、しかし懸命にこなしていく僧侶たち。心躍るような出来事も、ハラハラするようなスリルもないが、最後まで飽きさせない。やはり富田克也という人はタダモノではない。
在宅医療=在宅での終末期医療に携わる地方の医師二人を中心に、それを選択した患者を描く。手術を職人のようにこなしてきたが、一人一人に関心を向けたいという医師、これまで避けてきた死との向かい合いに取り組む医師。国は医療費抑制のために在宅医療を推進しているというが、そんな損得勘定抜きに、家での看取りは、本人家族共々、ちゃんと死を、死にゆく人を見つめることであり「死」を取り戻すことなのだ。本作が描くのが「日常」だということ、これが重要だ。
ヤクザが学校経営という設定の奇抜さだけで終わらない、演出の映画。様々な生徒を巡るエピソードの連鎖の中で、学校の経営権を握ろうとする勢力がいることが明かされ、と飽きさせない展開。原作小説自体の錬成度が高い(シリーズ化されている程だし)うえに、反復される台詞や仕草、効果音など編集が的確なためにギャグも上滑りしていない。組員一人一人のキャラが際立っており、特に西田敏行の芸の幅には大いに助けられている。これなら続篇もぜひ見てみたい。
こちらは生命の誕生の方の映画。男性の不妊治療の話だが、不妊治療の実際の解説も交えつつ、周囲の無理解や、幾多の失敗を越えて目的達成にたどり着いた過程をユーモアと共に描いた、一組の夫婦の努力の物語。原作者は革ジャン、スキンヘッドの強面の人というが、松重豊の善人イメージのおかげで、大学教授たる妻の父が彼を嫌うのがただの意地悪、不妊治療を恥ずかしいことと断じるのも頑迷固陋にしか見えなくなり、映画的にも浅くなってしまった気がする。
そもそも仏教とは、曹洞宗において食べることの意味は、3・11後に宗教はどうあるべきか。それぞれに重大な主題であり、それをたかだか一時間で突き詰められるわけもなく、無理やり接合しただけの印象で、どの点に関しても中途半端どころか、入り口にすら立てていない。様々な自然の映像と、宇宙、道元の留学した中国の寺、巨大な仏像を素早くモンタージュして、何か壮大さを演出するシークエンスは、ただのイメージ処理で何かを分かったようにさせる危ういものである。