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すらりとスリムで清潔な透明感あふれるキム・セロンと、アニキ感あふれるマ・ドンソクとの顔合わせで、お互いの魅力を引き立て合う趣向。ただいま人気沸騰中のドンソク様の、ある意味アイドル映画的な企画かと最初は思ったが、タイトな上映時間を貫く緊迫感と、アクションの爽快さや劇的なカタルシスよりも陰惨な絶望感を押し出してくる演出が、ただごとではない感触を鑑賞後に残す。冒頭の橋、踏切、公衆トイレとその前の空間など、いくつかの印象的なロケーションの撮り方も上手い。
80年代ジュヴナイル映画みたいな少年四人組が、「裏窓」のジミー・ステュアートたちみたいに不謹慎な野次馬根性で謎解きと冒険に乗り出す。主人公が最後に得る代償は、数あるカミング・エイジもののなかでも最も苦い部類に属する。四人のキャラクターがはっきりしていてわかりやすい。けれどもそのなかに、この子についてももっと知りたいのにと思う人物が複数。こんなにも個性がばらばらな四人がなぜつるむようになったのかを含め、そこを明確にできればもっと深みが増したのでは。
チラシを読んだだけで、どんなサプライズがあるのかほぼ予想できてしまうし、そうでなくとも序盤でほのめかしすぎではないかと思ったが、サプライズがこの映画のすべてではないのだった。屋敷の狭苦しい構造を生かした演出、工夫のあるキャメラの動きなどが力強い展開を実現。ラストシーンにたどり着くころには、美しい短篇小説を読み終えたような気分になる。M・ファルメールが圧倒的存在感。最初の容貌をまるきり失ったまま、えんえんと演技を続ける若い女優たちのガッツに感動。
ここに描かれている事態が他人事と思えなくて恐ろしい。結末が悲劇だと知っていながら観つづけるのは決して楽しい経験ではないし、こちらの気持ちを明るくしてくれる一瞬すらもない映画なのだけれど、丹念に一次史料にあたっての描写は細部まで見どころ満載。集会の日の朝からラストまでがもちろん白眉だが、誰もがそれなりの力強さで演説する当時にあって、これは間違いなく当代一の雄弁家だというだけでなく、その傲慢さまで一瞬でわからせる、ヘンリー・ハント登場シーンが秀逸。
マ・ドンソクが女子高の体育教師として赴任した土地は政治家、教育関係者、それに警察署員までも悪徳の限りをつくす怪しい町で、主人公が鉄腕をふるうための御膳立てとはいえ、いささかあきれる物語展開。女子高生のキム・セロンが行方不明になった少女の謎を追うのだが、無理な話で、ヒロインらしくならない。見どころは富豪政治家に甘やかされて育った美術教師のイ・サンヨプが奇怪な絵のあるアトリエを舞台に展開するクライマックスだが、構成とモンタージュが説明的で古めかしい。
80年代オレゴン州で郊外生活を送る若者たちの等身大の物語。郷愁を確かめあいながらRKSSというユニットで、事件好きの男女3人の監督たちがホラー映画を演出しているのだ。冒頭、主人公デイヴィ少年役のグレアム・ヴァーシェールが「ポルターガイスト」を見た影響で、「ウチの土地は先住民の墓場なんだ」と言い、エイリアン、幽霊、猟奇事件の記事を収集し、望遠鏡で犯罪者だと疑った隣人宅を異常なほど見続ける。彼の友人たちも妙にリアリティがあり、物語の押し方にはナットク。
パスカル・ロジェの監督・脚本で全篇、彼の趣味で統一されている点はみごと。シングルマザーのポリーンが叔母の家を相続して双子の娘たちと人里離れた家に住み着くところから始まるのだが、この家が不気味で、そこにある数々の人形がどれを見てもからくり仕掛けとともに怖い。やがてラヴクラフトを敬愛し、ホラー小説家として成功した妹ベスと、母と一緒に古い家にいた姉のヴェラが、家に巣食う大男と魔女に襲われて惨劇となるのだけれど、物語を切り過ぎて、盛り上がりに欠ける。
ウォータールーの戦いから始まる壮大な英国の歴史劇である。大学の「英国産業革命史」で、1819年8月、マンチェスターの郊外、セントピーター広場でヘンリー・ハントの選挙法改革に関する演説を聞こうとして、約8万の群集が集まったとき、訓練されていない義勇騎兵が介入して悲劇が起きたと教わったが、その事実の背景が忠実に映像化されていて、クライマックスのサスペンスとともに、当時の庶民の貧困ぶりを理解した。ロリー・キニア演じるハントほかの人物たちもいい配役だ。
学校理事長が「トガニ 幼き瞳の告発」で校長を演じたチャン・グァンという時点で、まともな学校ではない。とにかく彼を中心に町の権力者たちの悪徳ぶりが凄まじいだけにドンソクの奮闘を応援したくなるし、戦いぶりに熱くなるのだが、肉弾戦は少なめ。それゆえにおっ始まると常軌を逸した盛り上がりになるし、その代わりにドンソク映画ではお馴染みの素手によるドア破壊は彼史上最多の枚数と思うほどブチ破る。体育教師なのに授業を一回もやらぬまま幕を閉じてしまうのもイイ感じ。
1980年代が舞台で、シンセサイザーが響きまくる音楽はいかにもだが、これみよがしに同年代へのオマージュを押し出してこないのがなんだか新鮮。たしかに少年たちが活躍するし、BMXを駆るし、玩具のトランシーバーを駆使するが、ジュヴナイル的な雰囲気は極めて薄く、まっとうなスリラーというべき仕上がりに。「うわぁ……」と漏らしそうになる事件の収束、それを経て成長するどころか精神的に死んでしまう主人公の姿など、爽快感がまったくない外し方も悪くない。
寡作家だが何年でも新作を待てる大天才だと思っているパスカル・ロジェだが、やはり今回も素晴らしい。リアリストの姉とロマンチストの妹、現実と想像。鏡を媒介して相反するキャラクターと世界をスイッチングさせながら予測不可能な物語を進めていくが、そうした彼一流のツイストはますます冴え渡ったものに。また、母子の愛情、姉妹の絆をめぐるドラマ、想像と創造の尊さを謳ったテーマにもグッときてしまう。最後の最後までまともに話さず、素性もわからない殺人者の造形も◎。
被告の置かれた状況や抱える背景など一切考慮せず、汚物を捨てるかのような態度で重い刑を言い渡す治安判事たち。マンチェスターの支配者を自認する彼らと、“生かさず殺さず”を強いられている庶民の姿をじっくりと交互に映し出し、観る者と物語のボルテージを高めていく。さすがにマイク・リーなのでジャンル映画のようなアゲ方とはいかないが、どうしたって庶民に肩入れして観てしまうから燃えに燃える。大殺戮も編集を含めてグシャグシャしているが、それがカオス感を醸す結果に。