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冒頭いきなり、VFXを駆使した映像で巨大戦艦“大和”の断末魔を5分余にわたってスペクタクルに再現、荒業級のこの構成にはかなり驚く。”大和”は死んでも”日本”は死なず、っていうことか。とは言え、数字で戦艦の建造を阻止すべく孤軍奮闘する数学者の行動をここまで面白く描きながら、最後に、詭弁に近い田中泯のことばでうっちゃりを喰らわすとは、えーっ!! 数字はウソをつかないが口癖の菅田将暉の演技は絶好調だし、娯楽映画として上出来だが、どこかキナ臭さもプーン。
おや、池松壮亮がまた美容師役? 「だれかの木琴」で、常盤貴子の静かな狂気の対象になってしまう美容師を演じていた。しかも今回も年上の筒井真理子に見張られ、つきまとわれる美容師。むろん深田監督が二番煎じふうの設定や人物を描くはずはないと思いつつ、でもやはり、またァ!? それにしても名前と髪型、表情まで変えて、ある行動に出る筒井真理子の“落とし前”のつけ方のユニークさ。一種の巻き込まれ型のサスペンスだが、通俗性と不条理劇の組み合わせが面白く、後を引く。
「ドラゴンクエスト」の新たな物語、だそうだが、ゲームとはトンと縁がないこちらは、フルCGアニメの新作というイメージしかない。だからどのキャラクターも全て初対面で、そういう意味では新鮮と言えなくもないし、何より日本のCG技術のみごとさに感心する。光、炎、風まで立体的。ブルー色の水滴型モンスター“スラりん”も可愛い。がごめん、やはり異世界の初対面キャラに馴染むまでには至らず、ただボーと観ているだけ。あっ、こっちが勝手にゲームネタに呪縛された?
“JK”とか“エレジー”とか、あまり食指が動かないタイトルだが、17歳の女子高生の、これが私の生きる道、上等だァ!! 学校とバイト、ときには親友とカラオケに行き、家ではギャンブル好きの父親と元お笑い芸人の兄の食事の世話、更に裏バイトまでしている忙しい女子。けど彼女の名前がココアって、どーなの? 折角、地に足が着いた頼もしい女子を誕生させたのに、キラキラネームとは。ともあれ、自力で前へ進もうとするココアの奮闘は、演じる希代彩の好漢もあり小気味いい!
“なんとなく右翼”(『なんとなくクリスタル』の語感で)かと思っていた山崎貴監督の好ましい転向とも見える体制批判。VFXの質はハリウッドに遜色ない。『人間の條件』主人公の梶や『神聖喜劇』の東堂太郎から現代ウケを狙ってか左翼性だけを引き算したような優れた知性が敗戦の必至を見抜き戦艦大和建造を阻もうとする原作漫画の設定がまず面白い。その道理が大波に飲まれたことはそれら文芸過去作では体験からの再話だが本作ラストが監督自身の今後の行路の予見なら怖い。
筒井真理子がすごい。観甲斐のある存在。応えた市川実日子も。男が刺身のツマ程度の扱いでそのツマ池松壮亮、吹越満は適役、的確。密度ある芝居がシャープな画面に収まる。ワイドショー的感性への批判もあるがもっと大きなドラマ。成瀬「乱れ雲」のごとく被害側と加害側にある者に通う想いを描くが優れた人間観察でもっと繊細な揺らめくものを表現。被害加害も気持ち次第で想いもその濃さと傾斜を移すが、傷つけあうことは不可避で悲劇は完成する。そしてその後の一歩がある映画。
タイトルの「~ユア・ストーリー」というのが単に雰囲気のための修辞ではなく、文字通り“あなたの物語”としてメタ的に仕掛けられ、自らの虚構性を露わにするような展開をみせるところには結構驚いた。それでも、つくりごとでもそれは生きられた体験だ、とすることで観客はより強くその世界に摑まえられてしまうのだが。本作の女性キャラクターはいまだ九〇年代前半の男の子の願望と妄想のなかのものであった。オリジナルのままで良かったのは息子が伝説の勇者だというところ。
先日「万引き家族」が地上波放映された際に眩暈をおぼえたのは、本篇と、差し挟まれるCMにある生活や家族像のギャップ。CM的物質面の豊かさに視線を固定しつつ困窮と犯罪性に強い引力を受けて下降する層がリアルに存在することを思う。「JKエレジー」が描くのはその感じ。阿部亮平演じる地元の半グレ実業家アニキが怖すぎてヒロインが無事なのが不思議&ラスト直後に彼女は陰惨な状況に陥るはず。だがバッドエンドを踏み越えて生きる彼女も想像できる。働かぬ川瀬陽太が悪い。
「数学で戦争を止めようとする男」が主人公ゆえ難解な数式が数多登場する。しかし、実際の数式や数値自体は、この映画にとって然程重要ではない。数式が導く数値によって生まれる、登場人物の”感情”が重要なのだ。以前から感じていたことだが、菅田将暉の台詞は“入ってくる”。それは、頭に入って来たものが胸の辺りまで下りて来る感じなのだ。彼の言葉には独特の抑揚やスピード、言葉を強調するポイントがある。そのコントロールが、数式や数値を超えた感情を引き出している。
映画冒頭で髪を切る姿が“変化”を、タイトルに重なる煙が“姿を消す”ことを、そして、作りかけのパズルが”記憶の断片”を暗喩しているように、劇中に登場するモチーフの数々には意図がある。“横顔”には“もう片側の顔”、つまり“見えない部分”があり、タイトルもまた現代社会に氾濫する情報の危うさを暗喩している。これまでも深田晃司監督は“窓”を画面内に忍ばせることで、フレーム内フレームを実践してきた。本作では敬愛するヒッチコックの「裏窓」構図である点も一興。
テレビゲームに縁のない人たち(私を含め)にとって、この映画の間口は狭いように見える。だが、サブタイトルにわざわざ「あなたの物語」と付け加えている理由を知った時、これは単なる『ドラゴンクエスト』の映画化作品でないことを悟るのだ。そして、地位や名誉、金だけが全てではないという価値観の論賛に、自らの了見の狭さを反省するに至る。また、8bitの映像がフル3DCGに変化する瞬間の鮮やかさは、まるでモノクロがカラーに切り替わる「オズの魔法使」のようなのだ。
空き缶やペットボトルなどのゴミを脚で踏み潰す姿。やがてそれは、劇中の現実で撮影された映像であることが判明する。つまり、劇中における“虚構”なのだ。物を壊すことでフラストレーションを発散する行為が”虚構”であるということは、主人公のフラストレーションが解消されていないということになる。つまり“クラッシュビデオ”を冒頭に見せることで、困窮したJKの収入源を伝えるだけでなく、破壊衝動が治まらないほどフラストレーションが堆積していることを匂わせるのだ。