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筆者が、前衛映画やドキュメンタリーに惹かれるのは、劇映画が男女の問題や家族の問題など、同じテーマをくり返し描くことに倦んだからだ。ワールドシネマやアジア映画の先鋭性に関心が向いたのも同じ理由。本作は、建設会社の御曹司と未亡人のメイドの階級差を超えた恋というメロドラマで、現代ではインドくらいでしか成立しない物語に思える。食事、被服、労働、家屋など繊細なディテールを映像的に重ねることで、職人的に説得力を持たせている監督やスタッフの仕事には感服する。
今年西アフリカへ旅してから、アフリカ映画が気になって仕方がない。舞台はアフリカ南部の内陸国マラウイ。農村部における不作、飢餓、政治の問題や、主人公の少年の家庭における貧困や学問の問題を掘り下げる物語。冒頭から登場するボロ布をまとった精霊信仰の神々も気になるし、族長を囲んだ大人たちの集会、必ず混乱に終わる政治集会など、見聞したアフリカと同じで頷いてしまう。数年以内に、アフリカ大陸から新しい映画の才能が現れ、私たちを驚かせるだろうと予言しておく。
ここ数本、ヴェンダースの作品に何か彼らしくなさを感じて、やや不満に思うことが多かった。むろん原作があり、製作には資本の問題もあって、作家が常に自分に適した企画に出会うことは難しいが……。ソマリアに潜入するイギリスの諜報員と、深海探査をする海洋生物学者の女性がバカンス先で恋におちるという非現実的な物語。しかし、世界各地で起きているテロの問題、そして人類を含む地球上に暮らす生命の問題を、ひと組の男女の恋愛話のなかに落とし込んだ先鋭性は素晴らしい。
むろん歌手を夢見る少女を描いた娯楽作だと心得ている。家庭内における家父長制的な暴力と、女性や少女の人権へのメッセージが入っており、良心的作品だとも思う。だが、インドで少数者であるムスリムに対する偏見(背後にはパキスタンがある)を助長しかねない描写が散見される。さらに本作が中国で大ヒットしたそうだが、中国政府によるウイグル人の虐殺と弾圧を考えれば、その無邪気さに顔をしかめざるを得ない。映画も場合によっては人を傷つける武器になることを忘れずに。
ストーリーは住み込みのメイドと雇い主の恋なのだが、身分差だけではくくれない洗練がこの映画の魅力。二人は立場をわきまえた主従関係で接し、実はこの点がドラマの肝。主人公の間には確かにカースト制にルーツをもつ貧困層と富裕層といった階級が動かしがたい事実としてある。そしてこの事実を互いが生まれながらの階級として受容しているのであり、階級制度の困難な変革を待つのではなく、受け入れた上で自分の夢を叶える道を見つける。このポジティブな視点が洗練をもたらした。
発明の陰に感動的なエピソードはつきものだが、学者でも研究者でもないこの映画の主人公の、村を救った奇跡の実話は、少年の切実な願いがすべて。雨期と大干ばつが農作物を襲い収入が途絶え、日々の食糧にも事欠くとなれば、子どもたちは学校に行く場合ではなくなる。ここまでは予想の範囲内。素晴らしいのはここから先。本から独力で、風力発電機で畑に水を引くことを学び実現したのだから。現地マラウイでの撮影が効果絶大。感動と共に、教育の大切さを胸に刻まなければ。
休暇中のホテルで出会い、運命的な恋に落ちた男と女が、南ソマリアと北極圏の海底へと、それぞれの任地に赴く。ストーリーの軸ははっきりしているのに、涯てに隔てられた二人の鼓動が伝わってこない。テロリストから人々の命を救う任務を負った諜報員と、深海探査で生命の起源を解明する生物数学者。地上と海底から相手を思う深い気持ちは解らなくはないのだが、主演の二人のケミストリーがミスマッチか。ノルマンディーの風景など映像が美しいが、服の上から背中を掻いているような。
今回は図らずもインドの差別を扱った作品が2本。こちらは女性蔑視(=DVを含む男性の横暴さ)。テーマはシリアスだが、夢を追う少女の利発さと行動力が、インド映画に特有の強引さと娯楽性たっぷりな展開とで描かれているので、単純なサクセス物語を超えて痛快。特に青春ど真ん中のヒロインを演じるZ・ワシームのエネルギーと、A・カーンの硬軟自在な存在とがベストマッチ。エンタメ性と社会性ががっちり絡まり、インド映画にしては珍しく、150分を長尺に感じない。面白い。
近年はボリウッドと一線を画す作品を目にする機会も増えたインド映画。欧米で教育を受けキャリアを積んだ女性監督ロヘナ・ゲラの手がけた本作は、外からの視点を取り入れながら現代の祖国に生きる女性を見つめる。雇い主と使用人の関係ではあるが、一つ屋根の下に二人きりの男女、その間に流れる空気の揺らぎを繊細にとらえた手持ちカメラの映像。そこで部下が上司を呼ぶ「Sir」という原題が効いてくる。デザイナー志望のヒロインだけにサリーの色合いや着こなしにもセンスが光る。
風車と映画は相性がいい。とにかく絵になる。しかも社会的にフックのある実話ベースで、ドキュメンタリーのラインナップも充実しているネットフリックス作品ならではのフラグは何本も立っている。廃材を組み合わせた装置はDIY感あふれる見てくれだが、学校にも通えない中、独学で風力発電を完成させたウィリアムはいわば天才少年だ。ただ、親子ドラマに焦点が当たっているせいかそのすごさが伝わりづらい。エピソードの特異性がオーソドックスなドラマに吸収されてしまった形だ。
海辺でおもむろに服を脱ぎ荒波に入っていくヴィキャンデルと、案の定それに翻弄されるマカヴォイ。恋に落ちる瞬間というのはこういうことだ。急速に惹かれ合った二人はその後それぞれの目的地へ向かい、拘束されたジェームズとは音信不通に。相手がスパイでも連絡の取れない恋人同士が置かれる状況は同じ。恋愛の濃度が時間に比例するとは限らない……というのはドラマチックにすぎるかもしれないが、物理的な接触を超えたつながりを信じたくもなるロケーションの交錯が美しい。
こちらはインド版「アリー/スター誕生」といったところか。しかしやはり厳格なムスリム家庭で父親という男性の抑圧下にある少女が歌で自立を目指すテーマを描いており、どちらかというとそちらがメイン。ヒロイン役のザイラーのワイルドな風貌と太い三つ編みに説得力がある。大スターのアーミル・カーンがプロデュースと出演も。カーンはムスリムのヒットメーカーでありながら、女性や子供の地位向上につとめる活動にも貢献しており、インド映画界においてその功績は計り知れない。