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真に独創的で、忘れがたいキャラクターをどんな映画も求めているが、それが極めてむずかしいことは映画の歴史が語っている。グザヴィエ・ドランの作り出した三人の主人公たちは、まさにそんな個性の持主だ。普段は優しい知的な少年だが凶暴な野獣と化す息子、奇矯なファッションと言動だが、自由を求める誇り高い母親、自ら病を持つがたちまちこの母子の心を掴む隣人、三人の信じがたい名演と、優れた映像感覚が相まって、衝撃的かつ陶酔の二時間十数分であった。
気の合った友人と旅に出て美味しいお酒と料理を楽しみながら好きな映画について語り明かす。そんな楽しい宴にご相伴させてもらっているような気分になる映画だ。そう言えば、本誌の前ページに執筆されている内藤誠さんの「酒中日記」も、規模は違うが同じような趣の映画だ。大スターやスペクタクル・シーンが無くても、つまり低予算でも工夫次第で面白い映画が作れるという見本だ。英国のテレビ事情には不案内だが、話題になる映画や文学は旧知のものが多く懐かしく楽しんだ。
アンドリュー・ラウがスコセージと組んだ新作ということで、勝手に過剰な期待を抱きすぎたのかもしれないが、二人の今までの作品の踏襲で、新しいコラボで斬新な作品を作り出そうという意欲が感じられなかった。「インファナル・アフェア」をリメイクさせてもらったお礼にプロデューサーをつとめて借りを返したといったところか。とはいうものの、香港ノワールの名手がハリウッドの巨匠と組んだだけあって、描写は鮮烈、十二分に楽しめる映画であることには間違いない。
ウィリアム・ワイラーの「噂の二人」(原作はリリアン・ヘルマンの戯曲『子供の時間』)あたりからの着想かと思って観ていたが、後半は少女のミステリアスな動きが、中心となってくる。韓国の中央と地方の格差、官僚組織などを背景に、上手く組み立てられたドラマではあるが、ヒロインの抱えている重大な問題を、観客に伏せておくことによって、引っぱっていくという作劇術は邪道だという気がしないでもない。飲酒がテーマの一つであるにもかかわらず、その描写が上手くない。
頭にドキュメンタリーというより監督のプロモーション映像がつくのがなんだかなあという感じだったが、本篇はなんとも凡庸な出来。表情の並列に絶叫演技。シーン間の編集がまったく出来ていない。しいて美点を挙げるなら、音響処理か。1:1のアスペクト比が空間をまったく殺してしまうので、むしろ画面全体顔のみの方が落ち着く。途中で画面が拡大するに至っては、失笑もの。画面の窮屈さは、非自由の象徴だったのか。映画が1:1・33から始まった偶然の必然を知るには必見かも。
ミニクーパーでの英国男二人組の珍道中。イタリアはいいなあ、街も料理も(調理風景が律儀に挿入される)、と思わせただけで成功だが、そこに映画俳優の物真似が思いもかけぬ真剣みで入るのが味噌。ただ二人の会話に特化したことで、映像付きラジオ番組のよう。周りの人物の会話は聴こえず、奥の二人の声ばかり響く。音の空間性がない。その映画的な空間性をという望みは最後でようやくかなえられる。片方の妻と息子が合流し、二組に別れ、その距離を声が埋めることになるからだ。
急ぐ、急ぐ。全体を90分に収めるためか、移民少年二人が中国ヤクザにスカウトされて、人を殺すまでを20分程で、それ以降が青年になった二人が組の抗争のなかでどう立ち回るか。香港調というより深作調の手持ちにストップモーションで、アクション場面のめりはりはあるのだが、恋した娘との挿話等、情がいきわたらない。その結果、非情の掟に胸が張り裂ける感じが弱い。80年代アメリカの東洋人差別を背景にした中国人刑事とヤクザの関係ももっと有効利用できないものか。
田園風景の積み重ねのなかで、観客を睨む蛙の狂暴さが凄い。いきなり自転車の通り過ぎる瞬間につなぐなど、この監督は編集に独特の感覚を持っている。警察署で、遅れて所長を出すタイミングもそうだ。所長席に似合わないペ・ドゥナが可笑しい。そんななか、点景だった少女(キム・セロン)が画面の中心を占め出す。二人の関係は、場が進むごとに、ドキュメンタリー的なスリリングさを増していく。それは社会的問題を一篇の虚構に昇華しようと苦闘する新人監督の記録でもあろう。