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アイヒマンの許で収容所の管理に当っていたユダヤ人評議会の長老ムルメルシュタインを、ナチスの協力者として断罪するものは、ハンナ・アーレントをはじめ多いが、ランズマン監督は彼の「誠実」を信じたという。強烈な個性と記憶力の持主で、その長広舌を聞くのは生理的に辛いが、次第に彼の生きた地獄、過酷な時代が浮び上がる。ガス室で死んだ者たちが遺した絵画が何よりも心を打つ。差別スピーチや悪質な歴史修正主義者の横行する昨今、一人でも多くの人に観て欲しい映画だ。
芸術家気質のフレンチのシェフが屋台のサンドイッチ屋に転身するB級グルメ映画だが、なかなか面白い。監督、主演のジョン・ファヴロー、大当りだったSF大作「アイアンマン」は敬遠してしまったが、これを観て認識を新たにした。喜劇のセンスに優れた監督だ。役者としても味がある。インディー出身だが、見せ場を心得ていてツボを外さない職人芸の持主だ。売れっ子なのに、あえて小予算で自分の企画を監督、主演で撮る心意気、なにやら主人公のシェフに似ている。
平凡な移民カップルが主人公のアクション・サスペンス。作者たちの念頭に「シャロウ・グレイブ」や「トゥルー・ロマンス」があっただろうことは容易に想像がつく。 決してよく練られた脚本ではなく、いろんなところに穴がある。にもかかわらず、いかにもB級映画然としたぬけぬけと意表をつく展開、演出で終りまで観せきってしまう。プログラム・ピクチャーの味わいを持った、小味なサスペンス映画の逸品と言っていいだろう。達者な役者たちが集められている。
原作は短篇SFの名作の一つとして知られるハインラインの『輪廻の蛇』。昔これを読んだ時は斬新なアイディアに仰天した。この「プリデスティネーション」、エンタテインメントとしてうまくまとめられているが、残念ながら元ネタを知っている私はあの新鮮な驚きを味わうことが出来なかった。原作の文庫が新装版で出ているが、予備知識を持たないで観ることをお勧めする。セーラ・スヌーク、難役に挑戦健闘。イーサン・ホーク、怪しい役を怪演。彼の作品選択眼は信用できる。
現在のボフショヴィツェ駅に立つランズマン。列車の到着が映画史を刻印する。75年ローマでのテレージエンシュタット強制収容所のユダヤ人長老だったムルメルシュタインのインタビュー。41年ナチス制作のプロパガンダ映画。三重の時間が重ねられる。長老の声が現在の風景に響く。この声のオンとオフが圧倒的に素晴らしい。驚くべき証言が現代史の負の側面を顕にしていくことの凄さにも増して、マダガスカル島から東欧の田園地帯まで時の震えを現前させる映画の奇跡が起こっている。
邦題を確認せずに見たので、展開にへえと思ったけど、知っていたら意外性皆無の筈。ここまで説明されたら逆効果。それほど、ドラマとしては単線のまともな展開。もちろん料理長のジョン・ファヴロー以下、演技過剰を恐れない大らかさと音楽、そしてメインの料理の熱々な感じが画面を彩るので、まあ幸福感は立ち上がる。料理評論家のフォロワーが12万人を超えるという設定に物語は頼っているのだが、そこがもうひとつ弾けない。映画評論家がここまで力があったら恐ろしいけど。
祖母から相続した古屋敷、それも資金難で改築が止まっているのだが、それがどう活用されるかに、ばらばらの要素が集約される。その生活苦の夫婦に訳有りの大金が転がってくるところから、マフィア、麻薬の売人、刑事を含めた四つ巴の攻防戦が繰り広げられる。それで面白くなりそうなのに、ならないのは、狙いが見えすぎるせいか。時空が躍動しないのは、作り手が生真面目すぎるせいか。空間の上下軸を活用したプランが、事件の緩急の展開と噛み合ってない。惜しい。
これは、セーラ・スヌークに尽きる。その幸薄い儚さを出した少女もよければ、イーサン・ホーク演じるバーテンダーと賭けをする男性客の存在感の異様さといったら。そこで彼が語る話がそれまで展開してきたサイエンス・フィクションから逸脱していく様に呆気にとられる。これは細部だけ取れば、とても面白い。ところが、時空を往復し、設定が結ばれてくると、なんでこんなつまらないのか。ちゃちなタイムマシンという設定がすべてをぶち壊している。幻想譚にすればよかったのに。