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そこがホテルだろうが、惑星間に浮かぶコロニーだろうが、舞台となる空間さえ設定されれば、あとは、その場に登場するキャラクターに工夫を凝らせばいい、という作劇法。ただ、そのキャラクター造りには、通常とは違うひねりがあるのは確かで、ここでも、見るからに男臭い遠藤憲一に、両性具有で妊娠、出産までさせるという次第。いわば、演じられる役に、ミスマッチと思える俳優を当てて、その間のずれに笑いを仕掛けるのだ。だが、それが映画としていまひとつ弾まないのは何故?
暗闇の中、奥の扉が開き、シャッターが押し開けられるのを目にして、思わず、菊地健雄は、エドワード・ヤンかと呟いてしまった。扉を開けた工場主の長男も、バスの中でビールを飲む妹や、突然キレる次男にも、最初は、違和感のほうが強かったが、途中から、この世界にも馴染んでいった。なかでも染谷将太が木魚で桐生コウジを殴り、夜の教室で松本若菜が出刃を振るって中村ゆりを追い回すあたりは、良かった。彼らに寄り添いつつも、一定の距離を置いているところが、監督の手柄か。
保護施設で不安げな目をしていた犬が、しかるべき人に引き取られ、落ち着くと、実に穏やか表情を見せる光景が印象的。ペットショップで、可愛いといって買った犬や猫を、飼えなくなったと捨てる奴、これを見て考えろと言いたい。それにしても、「行き場のない犬・猫の家族探し」をする「ちばわん」の人たちや、自宅に1300頭もの放置された犬や猫を引き取り、東日本大震災の4日後に原発の20キロ圏内に入り、犬や猫を救出した広島の「犬猫みなしご救援隊」の活動には、頭が下がる。
山口小夜子は、鈴木清順の「ピストルオペラ」の撮影現場で、舞踏の振り付けをしているところを見たことがある。本作には、そのシーンは出てこないが、世界のトップモデルから、ひとりの表現者として歩んでいった彼女の足跡は、よくわかる。と同時に、モデルとしてステージを歩くときも、独特の身のこなしや、手の動きによって、他とは違った空気を醸し出していたのを見れば、その段階ですでに、彼女は何者かを演じていたと思われる。その表現の内側までは踏み込んでいないのだが。
丁寧で商品として優れているけど観客の目と耳を塞ぐために存在するような映画はイヤ。あの素晴らしい「銀河ヒッチハイク・ガイド」を連想するがあの素晴らしい皮肉や度外れな発想はない。本作鑑賞は飽きずに楽しく過ごせたが記憶メモリーの無駄。早く忘れたい。この流通と占有にロマンなどない。SEALDsが10月18日に反安保街宣を渋谷ハチ公前でやったときにゲストで来たスチャダラパーのBOSEが、自分たちと対比して、ビジョンに映ってる三谷幸喜うるさい、と言ったけどまさにそういうこと。
若々しく、才能に満ちた未知の新人という感じではなく、程良く年経て、どう位置づけるんだ、という、菊地健雄長篇商業映画デビュー。さすがにまともな映画だ。経験は力。テキトーなものを芸能人が出てることで誤魔化してテレビで宣伝ゴリ押してるだけの映画ばかりの今、これには映画がつくられた手応えがある。 寂れることに苛立つ日本の地方が映っているがそれは「岸辺の旅」ともつながる。映画はその世界を変える装置であれと。P・T・アンダーソンくらいのポテンシャルある。
昔、小出豊監督「こんなに暗い夜」に出演した時に犬の殺処分係の役をやった。この問題は気になる。2013年「ノー・ヴォイス」という映画があり、本作と同様のドキュメンタリーの導入がなされていた(「ノー・ヴォイス」では二部構成でドラマ部分と分かれている)。愛玩動物がまさに玩弄されて捨てられ何万と殺されていることは、そのままを撮らさせる題材。人間こそ死ねと思う。本作では巧みにドラマと融合された。動物愛護団体ちばわん、と犬猫みなしご救援隊がより知られればいい。
遺品びらきという発端につい先頃まで公開されていた「フリーダ・カーロの遺品」を思い出す。実際二作は似た出来事をそれぞれ撮っているが「フリーダ~」が多くの女性に継承されるものを示し、それが産むことの喩となったのに比して本作は山口小夜子の意志的な孤高を検証する。 それは尊敬に値する美。だがあの大量の人形……。生西康典氏が登場してコラボを語り、その様が映ると、アッ、山口小夜子って完全に現在のひとだった、モデルとのみ解するのは過小評価だった、と気づく
なるほど、これが三谷流「バーバレラ」にして、「アパートの鍵貸します」なのか。そこではアニメの動物が動き回り、大竹しのぶがダミ声で絶叫し、遠藤憲一がぬめぬめと産卵して、正義の味方キャプテンソックスはたるんだゴムのようなだるだるの活躍を見せる。クスリ、はあっても大爆笑には至らぬ細かなギャグを星のごとくちりばめ、三谷幸喜にしては初めての微エロ&微グロも解禁。なのにどうしてだろう、公開直前に放映していた番宣番組『スター千一夜』のほうが面白く思えてしまった。
〝幻のシカ〟に人生を狂わされた3兄妹を中心に、田舎町の閉じた空間にひしめき合う人間模様。緩いといえば緩い、ユーモア滲む物語なのだが、全体を覆う灰色の空に、いつ何時いかずちが響き、雨風が吹き荒れるともしれぬ不気味さを孕んでいて妙に惹きつけられる。どんづまり3兄妹の運命が動く父の通夜の晩に向け、徐々に高まる不協和音。哀しみとおかしみ、絶望と希望、乾きと湿り気……両極のバランスが最後まで絶妙。長兄役で企画製作者でもある桐生コウジの顔つきもまた、絶妙。
「犬猫みなしご救援隊」の代表を追った番組が心に残ったこともあり、興味深く見た。山田監督が、分身を演じる小林聡美に思いを託し、200時間超の取材映像とドラマを組み合わせて完成。観る者もまた、殺されゆく宿命の動物たちの姿を目の当たりにし、絶句する小林聡美の目線に自然に寄り添い、わが事のように現実を〝目撃〟することができる。「〝撮る〟ことは、〝ちゃんと見る〟こと」という台詞通り、酷すぎる事実から目を背けまいとする覚悟と、根底にある温もりを監督の「目」に感じた。
遺品が開封されてゆくごとに、再び動き出す山口小夜子の人生。生前親交があったという松本監督は、彼女の神秘を傷つけることなく、踏み込み得るギリギリの線から、その魅力をじわじわと引き出してゆく。ラスト、彼女を愛した人々による山口小夜子再生プロジェクト。若いモデルに彼女が降りた瞬間に鳥肌が立った。愛をもって故人を偲び、新たな世代にその存在を伝え、残った者はクリエイティビティを今なお刺激され続ける。〝全身芸術家〟山口小夜子にふさわしい、深い魂と志に感服。