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未成年の移民という題材の重さを決してごまかさず随所に強調しながら、それでも誰が見ても笑って映画館を出られるコメディに落とし込んだ脚本や構成にまず唸らされる。自らの仕事に強い誇りとこだわりを持つ料理人カティの頑なさは、同様に頑固な施設長や少年たちと本気でぶつかり合うからこそ、少しずつ解きほぐされていく。その過程がカティと少年たちの共同作業のあり方やメニューの変化としても描かれるさりげない演出と、オドレイ・ラミーの人間臭さに溢れた演技も素晴らしい。
シンプルな復讐劇としてはじまった物語が、やがて思わぬ方向へと横滑りしていき、その過程で加害者と被害者の関係性が複雑化されていく。その狙いはわかるものの、プロット上もっとも重要なひねりが、ある登場人物のマイノリティ性をダシにしたものとなっている点は看過し難い。また、別の少年院からの助っ人バンチョンを除き悪役のキャラも立っておらず、たとえ終盤の転調を際立たせるための仕掛けだとしても、ひたすら陰惨な暴力が連鎖する中盤までの展開はあまりにも単調で退屈。
肉弾戦の分量を抑えつつ、老いや継承のテーマを中心にリベラルな要素を加える。ほぼ同じような条件で量産されているニーソン近作は、逆に言えば細部の工夫でいかに新味を加えるか、作り手の腕が試される場でもあるだろう。アルツハイマーの設定がサスペンスを醸成することもなく、ダラダラと進んでいく本作には創意が決定的に欠けており、惰性で銃に頼ったアクションにも見るべきものはない。せめて近作との差別化ぐらいは意識しなければ、観客の記憶に残る映画にはならないはずだ。
主人公がなぜか次々に魅力的な女性たちからアプローチされる「モテキ」を思わせるベタで都合の良い設定には乗れない観客も多そうだし、スマホ画面を写せば若者に受けると思っているかのような弛緩しきった撮影は、もう少しどうにかならなかったのかと思う。だが、ラブコメとしての斬新さには欠けるとしても、民主化運動以降の香港に住み続ける若者たちがそれぞれに異なる形で抱く、「どこに誰と住むのか」をめぐる理想と現実、田舎の現状をめぐる記録としては非常に興味深い一本。
プロフェッショナルな世界は、専門的な知だけにとどまらず、良く生きるための教訓に満ちているようだ。プロの世界とは無縁なものと思っていた私たちの人生が、実はさまざまなところで通じているというお話は個人的にはとても好きだ。本作はそこに未成年の移民という社会問題をほどよく織り交ぜている。少年たちと主人公のシェフが心を通じ合わせていく過程や、移民の強制送還に関する事柄をドラマとしてわかりやすく単純化している感は否めないが、それでも十分に面白くて魅力的。
映画の冒頭から漲っている殺意が良い。卑劣で不愉快な少年院の受刑者や教官の間で振るわれる暴力は、弟を殺した真の犯人を探すというストーリーの面白さをはるかに凌駕するほど、具体的で見るものに強い感情を引き起こさせる。回想という形で、弟が死んだ日の出来事を繰り返し描き出す演出はいささかくどいが、基本的には少年院という閉鎖的な空間に限定した映画の作りはコンパクトで好印象。浴室での肉弾戦もしっかり描かれており、浴室ファイトファンにはおすすめしたい。
毎回妻や娘を危険にさらしてしまい、苦悩するアクションスターであるリーアム・ニーソン。だから本作で彼の殺しのターゲットがよりによって「誰かの娘」であることは、非常に興味深い。本作の一つのキモは、アルツハイマーを患い、記憶を失っていくというところだが、リーアム・ニーソン映画をいくつか見ている者たちは、記憶を失うどころかこれまでのリーアム・ニーソン映画の記憶とともに、彼がいままでやってきたことと、もうできないことを嚙み締めることになる。
気になる女性がみな僻地に住んでいるため、香港中を旅して会いにいくという少し面白いアイデアのラブコメディ。しかし、香港の地理や風土を適度に楽しめる作りになってはいるものの、都市の撮り方や現代の恋愛といったものをクリティカルに映し出しているかと言われると、あまり新鮮味はないように見える。また、女性と別れたら、次の女性に。また別れたらすぐ違う女性へといった単線的で流れ作業的な展開は、アイデアばかりが先行した出来の悪いゲームのようにも感じられてくる。
「ザ・メニュー」を連想すると震え上がりそうな邦題だが、こちらは爽やかな感動を呼ぶ社会派ドラマ。気難しいシェフと様々な事情から親元を離れフランスに流れ着いた移民の少年たちとのふれあいが、流れるようにテンポよく描かれてゆく。一見不遜なオドレイ・ラミーの顔つきや存在感はもちろん、実際にパリの移民支援施設で暮らす演技未経験の若者たちによる生きた表情や言葉が何より心に残った。強いメッセージとともに遊び心も忘れぬ作り手の邪気のないまっすぐさが気持ちいい。
「美しき野獣」から早くも約20年。今回も描くところ隠すところの取捨や時間配分など脚本・演出ともに多少の粗さは否めぬキム・ソンス作品。とはいえ、全篇を覆うどこか懐かしい硬質なムードや、二役を演じたパク・ジニョンの目、および全身に漲る気迫に終始引き付けられた。少年院を舞台にした「トガニ」とも言える弱き者への卑劣な暴力や貧困、社会に潜む格差をも盛り込みながら、「イースタン・プロミス」を思わせるクライマックスへ。オチが読めてもこの濃度、なかなかに得難し。
強迫神経症の秘密捜査官救出人から、アルツハイマーの殺し屋へ。「ブラックライト」に続きリーアム・ニーソンが演じるは、寄る年波や病ゆえ引退を覚悟した男。アクションにも話の筋にも今一つキレがなかった前作に比べ、80歳目前のマーティン・キャンベルが衰え知らずの華のある演出で魅せる。腕に書かれたメモをガイ・ピアースに見せるなど、記憶繋がりの「メメント」パロディも楽しい、『必殺シリーズ』風味の老練な一本。ニーソンは「探偵マーロウ」で映画出演100作に。天晴。
なるほど、これが香港の新世代なのか。アプリ開発者の青年と僻地に住む5人の女性たちとの微妙な関係を軽やかに綴った恋愛譚。変革の時代を正面から見据える重い作品が続く中、敢えて未来に目を向けて力み過ぎずさりげなく海外移住という選択や今後の生き方について描かんとする意欲は十分感じ取れる。ただ、この手の作風では最大の要となるはずの人物造形、会話や設定の妙にパンチが足らず何とも惜しい。フェリーで島々を巡る旅は、今は遠き香港への旅情をくすぐり、心躍った。