お酉さまの夜、早乙女主水之介は道楽者の兄治右衛門のため、賭場の借金の代りに売られようとする娘お紋を助けた。これ以来彼女は主水之介を慕うようになったが、湯女の小芳も彼にぞっこん参っているので恋の鞘あてが起る。ところがお紋は柳沢吉保の推挙で将軍綱吉の側室に出世し、柳沢の傀儡となって綱吉を繰り、お犬さまを尊ぶ悪政が人々を苦しめる。主水之介は犬のため役人に追われる市民廿余人を邸にかくまって悪政と戦い、柳沢は刺客を出して彼を狙わせる。市川団十郎の協力を得た主水之介は、謎の怪人屋敷に潜入し、柳沢一派の陰謀を知り、小芳とその兄南甫の危難を救う。柳沢一派は主水之介手強しと見て、お紋に命じて色仕掛でたぶらかそうとする。二人の睦じい仲をきいた綱吉は烈火の如く怒ったが主水之介は却って将軍に切々と政治の是正を説く。綱吉も彼の誠忠にうたれ、主水之介をはじめ、妹菊路とその愛人京弥、そして小芳やお玉など市民の顔にも明るい時代の春がよみがえって来た。