大阪夏の陣、今、落城しようとする天主閣を前に、大阪方の勝利を信じていた三人の若武者がいた。深見重兵衛、草薙修理、奥野久之助だ。最後の砦であった天主閣も、徳川方に寝返りをうった武藤、鷲尾のために炎上した。城内の静かな場所を切腹の場所ときめた重兵衛は、そこで侍女の小里を甲賀流忍者織江から救った。いまは切腹することも出来なくなった重兵衛は、小里、国松君と共に難民に交り、国松君の家までにげのびた。危いところを救ってくれた虚無僧は、「時代の大竜巻にまきこまれて、自分を見失うな」と言って去って行った。一方国松君は六条河原で処刑に会い、徳川方は九十郎と満太を利用して、豊臣方の残党を、六条河原に集めさせた。計略にのった重兵衛は、織江に、小里は虚無僧に助けられ、秀月尼の住む尼寺へ逃げこんだ。一方辻斬りとなった修理は、偶然、小里の姉で、かつて憧れを抱いた菊江と再会した。しかし菊江は、今身を売る女となっていた。また久之助は、町で物売り商人となっていた。刑場で忍者の姉弟に捕まり監禁されていた重兵衛は、織江の好意で荒縄を解かれ、街で修理と菊江に再会し、小里の居所を知り訪ねたが、恋に苦しんだ小里も織江につかまり一軒家に連れ去られていた。一方大阪城の焼け跡から出た金二万八千枚、銀二万四千枚を、九十郎と満太は、豊臣家再建の名目で着服しようと計った。根城は小里のいる一家屋だ。御用金を前に、醜い人間の争い、九十郎も満太もそして修理も菊江も、その醜さの中で果てた。と突如、大竜巻が、人間の醜さをはらう如くひきおこり、残ったのは守重、重兵衛、小里の三人であった。「命を大切に……」守重の言葉を後に重兵衛と小里は旅立っていった。