神奈川県横浜市神奈川区の生まれ。本名・栗田光子。一男二女の長女で、妹の富田恵子も女優。虚弱体質を克服するため、小学生の頃からバレエを習う。1949年11月、県立横浜第一女子高校を中退して松竹少女歌劇学校に入り、50年に松竹歌劇団に5期生として入る。52年6月、歌劇団始まって以来という異例の抜擢で『リオ・グランデ』の歌姫・ビアトリスに起用。53年1月には『春のおどり』にプリマドンナとして出演し、舞台栄えする容貌と抜群の歌唱力で注目を集める。同年5月、高まる人気に目をつけた親会社の松竹が、川島雄三監督「純潔革命」の主役に起用。同年7月には松竹と1年間の映画出演を契約し、次いで8月に『秋の踊り』の主題歌『赤い恋の花』で歌手としてもデビューする。同年秋のオールスター大作「花の生涯」に助演したあと、翌54年の「春の若草」で主役グループのひとりとして三橋達也、三島耕、月丘夢路と共演。同年5月に歌劇団を退団後は、川喜多雄二、高橋貞二らの相手役として大船調のメロドラマ、青春明朗喜劇に出演するが、彼女の意志の強そうなハッキリした顔立ちと陽性のキャラクターは、哀れを誘うメロドラマのヒロインには不向きだった。56年、松竹を退社し東宝と専属契約を結ぶ。「雨情」57では森繁久彌扮する童謡詩人が恋する芸者役を演じ、以降、森繁主演の「社長」シリーズで社長の浮気相手を華やかに演じた。同年9月、芸術座『ながれ』で東宝現代劇に初出演。翌58年には日本テレビ『光子の窓』のホステスとなり、毎回ゲストを迎えてトークをしながら、歌や踊りで楽しませるバラエティ番組の原型を確立した。62年、成瀬巳喜男監督「放浪記」に新劇女優の役で出演。以後、成瀬の「乱れる」64、「女の中にいる他人」66、「乱れ雲」67で明朗さの中に女の年輪や陰影をにじみ出させた。70年代に入ると舞台が中心となり、映画出演は少なくなる。76年の「挽歌」では女の複雑な心理を表現。76~78年には市川崑監督の「金田一耕助」シリーズ全5本にレギュラー出演し、強烈な印象を残した。81年、市川監督の「幸福」に顔を出したあとは、「逃がれの街」83、「それから」85などに助演。また「極道の妻(おんな)たちⅡ」87、「女帝・春日局」90、「首領になった男」91などの東映の大作にはなくてはならない存在として、多彩な演技で作品を引きしめた。その後は、やや寡作になるが、最近では市川崑が自らリメイクした「犬神家の一族」06や、若松節朗監督「沈まぬ太陽」09、森田芳光監督「武士の家計簿」10などで貫禄あるところを見せている。石田朝也監督によるドキュメンタリー「成瀬巳喜男・記憶の現場」05では、成瀬作品出演当時の貴重な逸話を披露した。舞台は現代劇、時代劇問わず多数出演しているが、本領はやはりミュージカルにあり、労音ミュージカル『歯車の中で』60、東京宝塚劇場『君にも金儲けができる』62、『キスミー・ケイト』66、新宿コマ『努力しないで出世する方法』64などに出演。ほかに、あばずれ女アルドンサ役に扮した帝劇『ラ・マンチャの男』69~70、家庭教師アンナ役の『王様と私』73・76や、『ジプシー』『シカゴ』『ラ・カージュ・オー・フォール』などミュージカルスターの第一人者として活躍。近年は一人芝居『私はシャーリー・ヴァレンタイン』91~96、二人芝居『6週間のダンスレッスン』06~10などで地方公演も積極的に行なっている。テレビドラマの出演作品は、NHK『繭子ひとり』71、『草燃える』79、『澪つくし』85、『翔ぶが如く』90、『八代将軍吉宗』95、『あぐり』97、『利家とまつ・加賀百万石物語』02、『昨日の友は今日の敵?』04、『どんど晴れ』07、『天地人』09、『セカンドバージン』10、日本テレビ『ソクラテスの妻』64、『熱中時代』78~81、TBS『赤い衝撃』76~77、『おんな五人で』80、『渡る世間は鬼ばかり』90~11、『エ・アロール』03、フジテレビ『グッドモーニング』94、『結婚できない男』06、『風のガーデン』08、テレビ朝日『女のそろばん』79、『菊次郎とさき』03~05、『熟年離婚』05、『てるてるあした』06など多数。99年、長年にわたる芸術への功績が評価され紫綬褒章受章。05年には旭日小綬章も受章している。60年3月19日に作曲家の芥川也寸志と結婚したが、62年に離婚。