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日本映画には、さまざまな家族を描いた“家族映画”が数限りなくあります。「東京家族」を観る前に、あるいは観た後にでも、あわせて観ておきたい、そんな“家族”を描いた日本映画15本をピックアップしてみました。
ベビーブームによる人口増加を懸念し、<受胎調整>なる法案を打ち出す政治家。本作は、彼の身に次から次へと降り掛かる親族の“おめでた騒動”という皮肉を描いた風刺喜劇。川島雄三監督が日活へ移籍した第1作で、スピード感ある台詞の応酬に相照らした俳優陣も魅力的。国の政策と一般市民との意識の違いが人の営みにおける本質を提示する一方で、奇しくもそこに高齢化社会を迎えた現代社会へのアンチテーゼが見出せるのも一興。
久しぶりに集まった四姉妹が知らされる、高齢となる父の抱える愛人と隠し子問題。昭和後期を舞台に普遍的な人生の悩みを描いた向田邦子のテレビドラマ脚本を、森田芳光監督が映画化。ドラマ版で次女を演じていた八千草薫が母親役を、長女を演じていた加藤治子がナレーションを担当したのも話題に。お互いを尊重しつつ絆を守るという家族像を、すき焼や揚げ餅、漬け物など向田作品に欠かせない食卓の品々に反映させているのも一考。
恋人と別れた妹と、突然ふたりで生活を始めることとなった兄。かぐや姫の楽曲に着想を得て、藤田敏八監督が「赤ちょうちん」(74)に続き秋吉久美子を主演に迎えた70年代の青春映画。当時ドラマで活躍していた林隆三の映画初主演作で、無邪気かつ大胆な性格の妹を演じた秋吉久美子の初々しい魅力も光る。兄と妹の生活を描きながらも、どこか近親相姦的な雰囲気を漂わせているのが特徴で、それは現代の<萌え>にも通じている。
母ひとり子ひとりで暮らしてきた親子の前に現れた若い男。彼が母親との結婚宣言をしたことから起こるひと騒動を、宮﨑あおい、大竹しのぶという新旧子役出身女優の共演によって描いた感動作。例えば「あんたら目クソ鼻クソやな」という、いっけん辛辣にも聞こえる台詞へ深い愛情を感じる所以。それは、関西弁の魅力にある。同時に、感傷的になりがちな題材が優しさに包まれる要因ともなり、そこに希望や幸福を見出せるのも一興。
肉親の死に突然見舞われた俳優夫婦が、周囲の助けを得てお葬式を出すまでを描いた伊丹十三の初監督作品。日本人の死生観を反映させながら、誰もがいずれ経験するであろう“お葬式”という儀式における混乱と戸惑い。それらを描きながら、現代の日本像を浮かび上がらせる手法は「伊丹映画」の礎となった。この後、映画になりにくい題材をハウツー的趣向によって積極的に取り組んでいった伊丹十三は、ヒット作品を生み出してゆく。
複雑な家庭環境で非行に走る弟をかばい、優しく愛情を注ぎ続ける姉との姉弟愛を描いた市川崑監督作品。撮影当時20代半ばだった岸恵子と川口浩が、10代を遜色なく演じている。撮影・宮川一夫による<銀残し>と呼ばれる特殊な現像方法とモノクロを意識した照明によって生まれた映像は、カラーとモノクロの中間のような独特の色彩を放っている。この手法は後に「セブン」(95)等で実践され、撮影スタイルの主流となったほど。
思想犯として投獄された父の帰りを待つ家族の姿を、山田洋次監督が吉永小百合主演で描いた感動のドラマ。黒澤組のスクリプターとて知られる野上照代の自伝的エッセイを基に映画化。言論弾圧によって取り締まりが厳しくなった太平洋戦争前後の世相を、健気で家族思いの母親中心に描いている。共演陣の中でも出色なのが、型破りな叔父を演じた笑福亭鶴瓶。この後「おとうと」(10)では吉永小百合の弟役に起用されることとなった。
炭坑生活に見切りをつけ、長崎から北海道を目指す家族の姿を追った山田洋次監督のロード・ムービー。日本列島を縦断しながらほぼ順撮りし、大阪万博会場や上野駅などでゲリラ的に撮影した映像は作品にリアリティを与えている。と同時に、地方と都市の地域格差を如実に浮かび上がらせているのも一考。プロの俳優を中心に配しながら、現地住民を起用したことで、本作は高度経済成長期における日本社会のドキュメントにもなっている。
母親と離ればなれになった兄妹が豪族・山椒大夫に売られ、奴隷となりながらも母の行方を探すという過酷な運命。森鴎外の同名小説を溝口健二監督が重厚な演出で映画化し、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞に輝いた感動作。平安末期を舞台に、モノクロの濃淡を活かした撮影・宮川一夫による水墨画を意識したような映像、絢爛豪華な美術・衣裳は美の極み。儚くも美しい終幕にはゴダールも影響を受けたと言われている溝口健二の代表作。
尾道から東京に住む長男宅を訪ねた老夫婦の違和感によって、失われつつある日本人の<思いやり>や<慎ましさ>を描いた小津安二郎監督の代表作。2012年には、世界の映画監督358人が投票した『もっとも優れた映画』第1位に選ばれたばかり。戦後の家族関係の変遷というテーマは、同じ構図の反復によっても実践されており、“実家の居間で始まり、実家の居間で終わる”ことで導かれる欠落が、同時に喪失感をも物語っている。
<楢山参り>と呼ばれる姥捨ての風習を描いた深沢七郎の同名小説を今村昌平監督が映画化して、カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールに輝いた人間ドラマ。撮影当時40代だった坂本スミ子は、老婆を演じるために前歯を削り、歯が抜けたように見える役作りをして話題となった。息子役の緒形拳と実際には1歳の年齢差しかないだけに、その鬼気迫る形相は凄まじく、台詞を排し、黙々と登山を続ける親子の姿を描いた終盤30分は圧巻。
母が末期ガンだと知った娘は、同時に死んだはずの父親が生きていることを知る。母娘の絆を描いた、さだまさしの同名小説を犬童一心が監督。徳島を舞台に、天の川を想起させる阿波踊りのモブシーンがクライマックスとなる本作は、映像美の数々も印象的。市内に佇む<眉山>を母親の生き様に例え、過去の確執を感じさせる松嶋菜々子と宮本信子の母娘が、確執を解きほぐしてゆくことによって深い愛情を導き出してゆく過程もみどころ。
原作者・金城一紀が脚本も手掛けた、ひと夏の青春映画。“娘に怪我を負わせた男に復讐するため中年サラリーマンが高校生からケンカを習う”という物語構造は、これまでカンフー映画や西部劇で描かれてきた師弟関係の雛型。これに父親の復権と友情を描写しているのが爽快さの一因。「俺は最後に勝つ映画しか観ねえ」と語る岡田准一に、堤真一が「灰とダイヤモンド」(58)を勧める暗喩には、映画ファン心を揺さぶられること必至。
生き別れの母を探す旅を続ける男の義理と人情。長谷川伸の同名戯曲を映画化した時代劇で、片岡千恵蔵や若山富三郎が演じてきた渡世人・番場の忠太郎を本作では中村錦之助が、母親を小暮実千代が演じている。加藤泰監督の得意とする長回しは劇中で度々実践され、中でもクライマックスとなる母との再会場面では、名台詞の数々と相まって二人の芝居の応酬に大きな効果をもたらしている。故、哀愁漂う錦之助の姿に涙誘われるのである。
好奇心旺盛なお嬢様が運命の人に処女を捧げる、弓月光の人気漫画を映画化したちょっとHな青春ラブ・コメディ。ロマンポルノでデビューした金子修介監督にとって初めての一般映画で、ロマンポルノ全盛期のにっかつにとっても久しぶりの一般映画として製作された。ヒロイン・悠乃を演じた浅野なつみは、オーディションによって選ばれた新人ながら大胆な演技を披露。彼女に運命の出会いを予言するのは、ウルトラの母というのが秀逸!
「特集1:『東京家族』作品評」を読む >>