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幸せの教室 Blu-ray+DVDリリース記念企画

幸せの教室

Larry Crowne ©2011 Vendôme International, LLC. All Rights Reserved. Artwork & Supplementary Materials ©2011 Universal Studios.

「幸せの教室 ブルーレイ+DVDセット」

「幸せの教室
ブルーレイ+DVDセット」

VWBS1390

2012年10月3日(水)発売
¥3,800 (¥3,990税込)

発売・販売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

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特集1 「幸せの教室」に主演したジュリア・ロバーツ&トム・ハンクス二人の名作をあらためてチェックしよう

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特集1 「幸せの教室」に主演したジュリア・ロバーツ&トム・ハンクス二人の名作をあらためてチェックしよう

文=きさらぎ尚

オスカー受賞の名優2人が共演した「幸せの教室」

映画は時代を映す鏡と言うけれど、中年男性のキャンパスライフを描いた「幸せの教室」はまさにその好例だ。物語は会社からリストラされた男(トム・ハンクス)と仕事と家庭に情熱をうしなった女(ジュリア・ロバーツ)がコミュニティ・カレッジで出会い、心機一転、人生を再構築するというもの。ストーリーこそ大スターの共演によくあるパターンのラブストーリーだが、エピソードは学歴、雇用、再就職等々、つまり今を生きる人々の多くが抱える容易ならざる問題で構成されていて、これらには同情もすれば共感もする。

なによりも、トム・ハンクス扮する、大手スーパーマーケットで販売員をしている主人公のラリーを苦境に追い込んだリストラの理由である。大卒でないからというのがそれだが、職を奪われる理不尽さは今や日本も同じ。さらに彼を待ち受ける仕事探しと、たっぷり残っている家のローン。これといったキャリアを持たない者がひとたび躓くと人生が破滅の危機に陥るのは、もはやアメリカだけのことではないのだ。

だから50代の、しかも失業中のラリーが次のチャンスをつかむために入学したコミュニティ・カレッジという、実学的な教育システムは参考になる。ここでは年代や経験の違う様々な学生との出会いもあって、なるほど、人生をリセットする気にもなろう。スピーチの教師との恋には、人気のビッグスター共演の“お約束路線”として、細部に時代や実社会が映されて、含蓄に富んだ映画である。

不器用そうだが実直な人柄が滲み出るトム・ハンクス

それにつけてもトム・ハンクスは善良なブルーカラーを演じると、説得力が増す俳優だ。「幸せの教室」で見せた8回も表彰歴があるほど優秀で、それこそ懲罰の対象になることなど何ひとつないのに、大卒でないという理由だけで解雇された中年男性は、同情に加えて応援したくなる。なんといっても、不器用そうだけど実直そう人柄が滲むトムの風貌を見ると、切り捨て易い人から切ったのでは……、と勘ぐってしまいそう。

そこで「スプラッシュ」(84)と「ビッグ」(88)。前者では青物店を経営する、女性が苦手な好青年に扮し、人魚(ダリル・ハンナ)に恋をした。後者も12歳の少年の心を持ったまま35歳の大人に変身してオモチャ会社に就職するというファンタジー。どちらも真面目で誠実なお人好しといったトム・ハンクスのキャラクター・イメージがテーマに大きく貢献している。

そんな持ち味が多くのファンを得て、人気を不動のものにしたのが、ノーラ・エフロン監督のロマンチック・コメディ「めぐり逢えたら」(93)。ロマ・コメの女王メグ・ライアンとの共演も見どころだが、ポイントはラジオから流れる彼の声。妻を亡くした寂しさを語るその誠実そうな声が、メグが演じるリスナーの心に響いたのだ。そしてバレンタインデーに、あの「めぐり逢い」(57)でケイリー・グラントとデボラ・カーが再会を約束した同じ場所で、二人は遂にめぐり逢う。ちなみにこの映画の二人は、eメールによる運命的な恋を描いた「ユー・ガット・メール」(98)でもコラボしていた。

振り返れば90年代はトム・ハンクスのキャリアの黄金期である。「フィラデルフィア」(93)のエイズで解雇された弁護士役に続き、「フォレスト・ガンプ/一期一会」(94)の数奇な運命な男の役で、2年連続でアカデミー賞主演男優賞を受賞。映画史上50年ぶりのこの快挙は、トムを名実共に最高のポジションにつけた。以後はトップスターとして「アポロ13」(95)「プライベート・ライアン」(98)「グリーンマイル」(99)等の大作に相次いで出演する。そんな大作群の中では異色の、アイルランド系ギャングの殺し屋を演じた「ロード・トゥ・パーディション」(02)は必見である。初めて悪役にチャレンジしたわけだが、これまでには見られなかった凄みと哀しみが滲む演技に引き込まれる。

見た目が華やかだが幅広い役柄を誇るジュリア・ロバーツ

ジュリア・ロバーツといえば大きな口からこぼれる屈託のないガチョウ笑い。「幸せの教室」では働かない夫との結婚生活が破綻寸前、加えてカレッジでの教師の仕事も今ひとつというわけで、このトレードマークは冴えを欠いてしまった。役柄からすれば、それも当り前というものだ。

これとは対照的に、同じトム・ハンクスと初めて共演した「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(07)は、持ち味がいかんなく発揮されていた。実話を基にしたこの映画で彼女が演じたのは、ジョージ・ワシントンの妹の直系だというテキサス州の大富豪にして反共主義者。ソ連の侵攻で苦境にあるアフガニスタンを救うべく、酒と女性にしか関心がないかに見える旧知の下院議員チャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)を焚きつける。

もともと派手な顔にメイクもバッチリ。確信に満ちた力強い口調で、かの国からソ連を撃退して人々を救うようにチャーリーに訴え、パキスタンの大統領とも引き合わせる。その手腕のあでやかなこと!? 出番こそ多くはないが、アメリカのリッチなセレブはかくや。実際にはこの時の介入が9・11のテロにつながり、さらにはヴィン・ラディンの殺害に至り、それでも未だ平和は訪れてはいないが、CIAエージェント役のフィリップ・シーモア・ホフマンの名演もあり、嘘のような本当の話を映画にした作品としては相当に面白い。

こうして振り返ると、アメリカ映画界でもっとも出演料が高いジュリア・ロバーツは、もっとも役の幅が広い女優の一人でもある。本格的デビュー作の「ミスティック・ピザ」(88)ではピザ屋のウェイトレスの一人に過ぎなかった彼女が、翌年には「マグノリアの花たち」(89)でドリー・パートンやシャーリー・マクレーン等のクセ者女優のオーラに埋没することなく、病をおして結婚・出産をする女性を初々しく演じて、いきなりアカデミー賞助演女優賞候補に。さらに同年は現代版シンデレラストーリーとして伝説的な「プリティ・ウーマン」(90)に出演。この映画の幸せをゲットした娼婦役は、ジュリア・ロバーツの人気を不動にしたばかりでなく、例えば後の「ノッティングヒルの恋人」(99)に連なるロマンス&コメディ路線の出発点になった。

一方、遂にオスカーを手にした「エリン・ブロコビッチ」(00)では、大工場を相手に公害裁判を闘い、全米史上最高額の和解金を勝ち取った実在の女性役。どん底でも諦めないで頑張るキャラクターが女優の実像と重なる。

ハリウッド女優の中では際立って見た目が華やかなジュリア・ロバーツは、役の幅の広さという、一見して相容れない要素を兼備した数少ない存在である。