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イワナについてのドキュメンタリーと聞いて、ネイチャー番組的なものを想像すると、意外なギャップに驚く。研究者、漁協参事、料理店の主人といった人々のインタビューを通して、イワナを取り巻く現状を多角的に描いていく内容が興味深い。環境問題全体にも関わる多くの示唆も与えてくれるが、だとしても、肝心のイワナの映像が少なすぎる。人間ばかり映しすぎ。鳴りっぱなしの音楽も、スローモーションの美しい映像(それもやっぱり人間主体)も、作品に必要だったかというと疑問。
破格の長期シリーズOV「日本統一」のスピンオフ。台湾ロケを敢行し、誘拐と爆弾テロと復讐劇をミックスした欲張りなドラマが展開するが、節約第一のOVテイストは健在。チープでけっこう、でも悪ふざけはしないという独特の美学は、作り手と常連客の信頼関係ありきのものなので、一見客には敷居の高い世界ではある。大陸におもねる経済ヤクザが登場したり、ひまわり学生運動がキーポイントになったり、独立系ならではの踏み込み方が面白い。80年代末の韓国にもこんな映画あった気が。
佐藤嗣麻子監督といえば夢枕獏と谷口ジローのコミック版『神々の山嶺』誕生のきっかけを作った功労者として有名だが、ついに念願かなって「陰陽師」を監督! まずはめでたい。若手キャストを起用し、原作にないエピソード0にするという企画も、狙いとしてはアリである。ただ、作品の根幹たる安倍晴明&源博雅コンビ=山﨑賢人&染谷将太のカップリングに意外とケミストリーが感じられないのは残念。脇を固めるベテラン俳優陣の充実にばかり目が奪われるのは、ちょっともったいない。
おお、チョン・モンホン作品のスターたちが長野県松本ロケで共演している、という感慨はあった。しかし、本格的な日台合作の青春映画という試みの面白さに、作品自体は届いていない。こういうベタな青春ドラマをただ新味なく撮っても、タイのGDHなどには全然敵わないし、今の観客に届けるための戦略を感じさせてほしい。特に回想パート。甘酸っぱさと気恥ずかしさは同義ではない。ただ、乗り鉄的には見どころが多く、クライマックスの舞台は大いに納得。そりゃ絵になるもの、只見線。
タイトルに使われている言葉の意味を、このドキュメンタリーで初めて知ったのだが、独特な進化を遂げたという渓流魚・イワナのルーツやその現状を記録した本作、実に面白く観た。タイトルにピッタリの知的な詩情とロマンがあり、渓流の流れや水中映像がまた美しい。そしてイワナほかの渓流魚について、さまざまに語る研究者や専門家の方々の、穏やかで分かりやすい言葉。切り口を変えた章仕立ての進行も効果的。ダムには“魚道”があることも今回初めて知った。
かつて一般向けの日本映画に背を向けるようにして、任俠に生きる男たちやヤクザ世界の抗争などを描き、一部ファンに熱く支持されたVシネマ。当時とは世間も状況も激変したが、本作がその路線で踏ん張っていることに少なからず感心する。しかも今回はドラマ化もされている「日本統一」シリーズ10周年記念作品で舞台は台湾、チラッと台湾の歴史に触れたりも。日本統一を目指す侠和会のナンバー2、氷室の捨て身の父性愛で、話はいささか乱暴だが、それもVシネらしい。
能楽師の野村萬斎が安倍晴明を演じた「陰陽師」シリーズとは一線を画す、青春映画仕立てにしているのが親しみやすい。若き晴明は、平安朝の慣習や陰陽師なる役職から距離をおき、染まらず流されず合理的に行動、人の心の闇がもたらす不可解な現象や事件に冷静に対処する。という晴明のキャラクターを明確にした上で、佐藤監督は幻視や夢の映像を鮮烈に演出、目が覚めるような華麗な場面も。人物それぞれの立場の野心や思惑も痛快だ。美術や衣裳も見応えがある。
そういえば劇中、岩井俊二監督の映画が好きだ、という台詞があるが、台湾と日本を舞台にしたこのラブストーリーの人物や行動、エピソードも多分に岩井俊二的で、「新聞記者」「最後まで行く」の藤井道人監督・脚本にしては、これまでになく軽やか。ひょんなことから台湾のカラオケ店に住み込みで働きだした日本娘アミと、アミに恋した18歳の僕。18年後、人生の岐路にたった僕はアミに会うため日本へ。台湾と日本のどちらにも配慮した脚本は、みんないい人ばかりだが。
釣りにもイワナにも興味がない身としては、釣りキチの綺麗事ではないかと斜めに構えて観始めたが、食と生命を真摯に考える人たちの語りに引き込まれていく。大量に釣ってから川へ戻して生態系を維持しましょうなどと言うのは勝手な屁理屈にしか思えなかったが、そうした疑問にも答えてくれる。獲り過ぎて翌日になると魚がいなくなっていた経験を語る宮沢和史が、それを大量殺戮、沖縄地上戦のようと形容することに驚くが、決して大げさではないことがわかるようになっている。
ひたすら本宮泰風を愛でてしまう。低温ながら俊敏な動きが際立ち、スター映画の残り香を漂わせる。「日本統一」シリーズが未見でも問題ない作りになっており、台湾を舞台に父子の物語へと拡張させても大味になることなく、ウエットにもならない。爆弾魔の話でありながら合成丸出しの爆発ばかりなのは不満だが、小気味良いアクションを積み重ねて終盤へなだれ込む手堅い演出は好調。東映系のシネコンチェーンで公開されるので、往年のプログラムピクチャーの味わいを愉しむのも一興。
以前のシリーズには全く乗れなかったが、さすがに原作への愛着とミステリとVFXに通じる佐藤監督だけあって魅せる。「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎」よろしく、若き日の安倍晴明が陰陽師になるための学校に通い、ワトソン役の源博雅と出会って事件に挑むという設定からして愉しい。山﨑、染谷の好演は予想通りだが、帝役の板垣李光人が浮世離れした存在感で目を引く。終盤はVFX頼りになってしまい、そのスケールに予算が追いついていない感が溢れるのが惜しまれる。
清原果耶のベストアクトというべき魅力が引き出されており、その一点押しで評価したいが、ここは点を辛く。岩井俊二の「Love Letter」が劇中へ引用されており、物語もその影響下にあるが、それなら引用元を上回る要素がひとつでも必要なのではないか。日本各地で良い人と出会い、短時間で別れを繰り返すだけなので「幸福の黄色いハンカチ」の健さんみたいな行くに行けない焦燥がない。福島が大きな位置を占め、過去と向き合う物語なのに、震災や原発も透明化されている。