サタンタンゴ

さたんたんご|SÁTÁNTANGÓ|SATAN'S TANGO

サタンタンゴ

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レビューの数

40

平均評点

81.1(94人)

観たひと

132

観たいひと

58

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 ハンガリー=ドイツ=スイス
製作年 1994
公開年月日 2019/9/13
上映時間 438分
製作会社
配給 ビターズ・エンド
レイティング
カラー モノクロ/ビスタ
アスペクト比 ヨーロピアン・ビスタ(1:1.66)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「ニーチェの馬」のタル・ベーラ監督による7時間18分の大作が、製作から25年を経て初の劇場公開。ハンガリーのある村。降り続く雨と泥に覆われ、活気のないこの村に死んだはずの男イリミアーシュが帰ってくる。村人たちは、そんな彼の帰還に惑わされてゆく。タンゴのステップ<6歩前に、6歩後へ>に呼応した12章が、全編約150カットという驚異的な長回しで詩的かつ鮮烈に描かれる。脚本は、原作者であるクラスナホルカイ・ラースローとタル・ベーラ。35ミリフィルムにこだわり続けてきたタル・ベーラが初めて許可した4Kデジタル・レストア版での上映。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

経済的に行き詰まり、終末的な様相を纏っているハンガリーのある田舎町。シュミットは、クラーネルと組んで村人たちの貯金を持ち逃げする計画を女房に話して聞かせる。盗み聞きしていたフタキは、自分も話に乗ることを思いつくが、その時、家のドアを叩く音が。やって来た女は「1年半前に死んだはずのイリミアーシュが帰って来た」と信じがたいことを言う。イリミアーシュが帰って来ると聞いた村人たちは、酒場で議論を始めるが、いつの間にか酒宴となり、夜は更けていく……。その翌日、イリミアーシュ(ヴィーグ・ミハーイ)が村に帰って来る。そんな彼の帰還に惑わされる村人たち。果たしてイリミアーシュは救世主なのか、それとも……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2019年12月下旬号

読者の映画評:「サタンタンゴ」岩永芳人/「トールキン 旅のはじまり」松本ひろみ/「ジョーカー」越村裕司

2019年11月上旬号

読者の映画評:「サタンタンゴ」布やハサミ/「ガーンジー島の読書会の秘密」松本ひろみ/「初恋ロスタイム」保坂朱美

2019年9月下旬特別号

「サタンタンゴ」:作品評

「サタンタンゴ」:解説

UPCOMING 新作紹介:「サタンタンゴ 4Kデジタル・レストア版」

2024/02/13

2024/02/13

-点

VOD/U-NEXT/レンタル/テレビ 
字幕


438分の映像詩篇

「誰を応援する?」
「自分だ」

経済がすっかり停滞しきったハンガリーの寒村。点在する村人はすっかり生気をなくし、虚ろに日々を送っている。秋に入り長雨の季節が訪れて太陽が差し込む気配もない。そんな村に、1年半前に死んだと思われていた若者イリミアーシュが帰ってくる。かつての不良ぶりはすっかりなりをひそめ、品行方正な青年へと変貌していたイリミアーシュ。果たして彼は村の救世主か?それとも悪魔か?
上映時間438分、つまり7時間18分。なぁなじかんじゅうはちふぅん!?この時点で既に正気ではない。そして全編通じてカットはわずかに150カット、つまり1カット平均3分弱だ。さんぷんじゃくぅ!?観る者は長回しのボディーブローを7時間以上にわたり浴び続けるのである。ちなみに劇中インターミッションは2回設けられている。
もちろん僕にとっては歴代最長の上映時間で、これまでのタイトルホルダーであった旧ソ連版「戦争と平和」(1965)を14分上回った。さらに「戦争と平和」は4部作だったから、単独作品としてはぶっちぎりの長さであることは言うまでもない。さすがにぶっ通しで観る自信はなかったので、1日のうちに観終わることを条件に小休止を挟みながら最後まで観た。
何か壮大な映像詩篇であることは間違いなく、観終わった後には謎の達成感はある。しかし、例えば「風と共に去りぬ」や「ゴッドファーザー」のように明確なストーリー展開があるわけではなく、全編モノクロであることと、晴れの描写が1分たりともないため終始暗い展開が続き体力はゴッソリ削られた。そして開始から4時間半くらいは1日の出来事を複数の村人の視点で繰り返し振り返る「ダンケルク方式」が採られているため、「同じ話を何回すんねん?」という気持ちにもなってしまう。
と、何とも暗い展開ばかりなのだが、慣れてくると何となく最後まで観たくなってしまい、結局最後まで完走させるのは自分もタル・ベーラ監督の術中にハマってしまったということだろう。
だがね、これだけは言わせてほしい。どう考えても猫に罪はないだろうよ。

2023/10/04

2023/10/07

90点

VOD/Hulu 
字幕


7時間以上の芸術作品ということで身構えていたが、序盤から下世話な話と悪徳の匂いがぷんぷんして引き込まれる。
雨の中ひたすら歩き続けたり、異常な程の長回しが続くが、映像は素晴らしく構図も個性的で完璧なので、ずっと見ていられる。
時間が前後したり、予想外の展開もあるので、続きが気になって仕方がない。
突然帰郷してくる男の発する悪の禍々しさがすごい。
警察で平気な顔で嘘をついたり怖すぎる。
村の金を持ち逃げしようとしていたり悪知恵が働くのかと思いきや、救いようのない愚かさを露呈していく村民。巨視的に見れば、我々も結局この程度なんではと思ってしまう。
そしてシュミット夫人のリアルなエロさ。
中盤の少女のエピソードも強烈で忘れ難い。
ストーリーの全ては把握できなかったが、充実の映画体験だった。

2019/11/03

2023/06/28

70点

映画館/群馬県/シネマテーク高崎 
字幕


無駄に長い凄い作品

相反する言葉をつなぎ合わせたくなる作品。

長いよ!と文句言いながら
最初の物語を視点を変えて次から次へと見せていく。
その流れに『そうか!』と思い至ったりする。

バカみたいなようでいて物凄く知的でもある。

人間社会なんてこんなものか。
東欧社会であっても、こんなものか。

騙す人は騙す
信じる人は信じる
愛す人は愛す

そのことをただただ知るだけ。

どこにいようが何をしていようが
良い人は良い人で悪い人は悪い人
そして根っから悪い人もいないという事も感じます。


しかし………


よく作ったな………

2023/04/30

2023/04/30

80点

選択しない 


ついに鑑賞

公開当時,話題になりましたが、7時間越えの上映時間を知り、敬遠。でも気になっていた映画で、先月Huluで見つけてやっと鑑賞。相変わらず美しい情景描写で、予想以上に興味深い内容でした。これでタル・ベーラ作品は3作目。未見の作品を観てみたくなりました。

2023/03/12

2023/03/12

100点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 
字幕


蒼乃桔梗56歳。『サタンタンゴ』に辿り着く

世界最長のドラマ映画『サタンタンゴ』に挑む日が遂にやって来た。昨夜は妻の元同僚がパソコン設定第二弾に来てくれて焼肉とビールを楽しんだ。家中を焼肉の残り香が漂う昼下がり、「今日だよ」と天から啓示が降りた。

終末世界に現れた畏れを纏った救世主。神話世界の映像詩。上手く表現出来ないが、牛舎から牛の群れが出てきて悠々と歩き去るファーストシーンを見て『サタンタンゴ』の何たるかを知った。やがて時間は道筋を失い神経が研ぎ澄まされる。犬の鳴き声がスクリーンの中なのか窓の外なのか分からなくなる。少女の猫虐待、居酒屋での狂乱の舞踏は全編中屈指の名場面となった。

イリミアーシュが陣頭指揮を取り始めて以降、一気にストーリーは混迷の度合いを増す。意味するところは理解出来なくても辛うじてストーリーは追える。シュリンクすれば140分で纏まる話と思うが、タル・ベーラには7時間18分が必然だったのだろう。観賞後、心に楔を打ち込まれたかのように再び『サタンタンゴ』が聳え立っていた。

取り敢えずここまで辿り着いた自分自身を誉めて上げたい。Mさんの「昔、ピンク・フロイド見たんですよ」に匹敵する体験かもしれない。

2022/12/29

50点

選択しない 


自由の到来という変革の中で希望と不安に揺れる民衆

 原題"Sátántangó"で、サタンのタンゴの意。クラスナホルカイ・ラースロー
の同名小説が原作。
 7時間18分という長尺ながら、約150カット、平均1カット3分の長回しという、『ニーチェの馬』(2011)のタル・ベーラならではの作品。
 『ニーチェの馬』同様の動かない映像に何度も睡魔が襲い、思考力を失って起きている事象を理解できず、しかも説明不足のために話の筋がよくわからないという作品にも関わらず、霧の中の脳みそが何か面白いと感じ、時間があればもう一度見てみたいと思わせてしまう不思議な魅力がある。
 解説によれば、6歩前に6歩後へというタンゴのステップに合わせた12章構成で、前半の6章は複数の視点からの村の一日の出来事、後半の6章は死んだはずの男イリミアーシュが村に帰ってからを描いている。
 舞台はハンガリーの寒村。荒廃した村は貧しく、酒とセックスしか楽しみはない。
 秋の長雨が始まると大地は泥だらけとなり、冬まで村は孤立する。そこでシュミット夫婦、間男のフタキが村の金を持ち逃げして新天地に行こうとするが、イリミアーシュが村に帰って来ることを知って諦める。
 役所の警視に仕事をしろと言われたイリミアーシュは相棒のペトリナ、シャニとともに村に帰るが、シャニの妹エシュティケの死を受けて村人たちに、村を捨てて移住するように説得。村人たちを自由にし、警視に報告書を書く。
 プロローグはフタキが町の礼拝堂の鐘を聞いて目覚めるところから始まるが、礼拝堂は崩壊し鐘は存在しないと語られる。
 ラストは町に入院していた村医者が「トルコ軍が来るぞ」と廃墟の礼拝堂で鐘を鳴らすのを見て村に帰り、部屋の窓に板を打ち付けて光を閉ざし、ノートにプロローグの文章を書いて終わるというエピローグとなる。
 暗喩に満ちた台詞と内容で、ハンガリーの国情を知らないと何を描こうとしているのかわからないが、魂に直接語りかけるものがあって、言葉やドラマではなく、映像でしか伝わらないものがあると感じさせる。
 原作は東欧革命前の1985年に発表されたもので、ハンガリー民主化運動と自由の到来という変革の中で希望と不安に揺れる民衆を描き出したのかもしれない。