殺人事件の犯人に似た素性の知れない人物3人に関わった人々が東京、千葉、沖縄と異なる場所で繰り広げる群像劇。
原作を読んでいないし、予備知識もなかったので、離れた所で展開するストーリーが最終的に繋がるものだと思って見ていた。人間関係における信頼や愛、友情、あるいは悔恨といったようなテーマ性の共通点はあるものの、殺人事件とは関係のない二つのエピソードはミステリーを際立たせるためのダミーだった。これには軽い失望感を味わった。
俳優陣の熱演にはさすがプロだと感心したが、同時に残念な気持ちも生まれた。役者たちは皆、よく泣き、よく叫んだ。そのほとばしる感情の激流に気圧されてしまった。役柄に入り込みすぎるオーバーアクト感が強すぎる。それでちょっと、引いてしまった。
凶悪な犯罪をおこすだけのパワーを持っているように見える人物は一人しかおらず、しかも、それを裏切ることなく、その男が犯人だった。残りの二人は、はじめから影の薄さともの静けさが際立っていて、そのとおりの人物だったということだ。つまり、意外性はなかった。ここでひとひねりあれば…というのは欲張りか。