本作は八王子の夫婦殺人事件の発生(冒頭血生臭い現場と警察の捜査)を軸に事件が解決されぬまま1年が経ち整形した犯人の画像が公開されたことで、犯人に似た全く異なるエリア(東京、千葉、沖縄)3人の男をめぐって起きる波紋と事件の終焉を描く。
複数の男のエピソードを重ねたからと言って作品が厚みと深みを出すものでもないことを本作は証明してしまった。
根本は殺人犯の「怒」という文字(現場や隠れ家に大書した)が意味するものが不明なこと。
殺人犯の言葉を信じたことが裏切られた少年の怒りを象徴しているわけでもないだろうし。
ゲイの恋人を容疑者と思い警察からの問い合わせを無視し他人ごとにしたことを悔いる男には共鳴できないし。
ちょっと頭の弱い元風俗嬢が故郷に戻って親のサラ金で暴力団に追われる身元不詳の青年を警察に通報する心理もよくわからない流れ・・・。
登場人物を演じる役者陣の熱演は評価できる。特に宮崎あおい、森山未來がいい。
米兵に強姦される(未遂?)すずちゃんも奮闘した。
坂本龍一の音楽は正に映画然とした落ち着きのあるいい作品だった。