学校はあってないようなものでもあり、本作の中でも、倫理的には全く彼女らと彼の足かせにはならない。この西海岸の大都市近くには、多くの有名人が居を構えていて、有名人である彼女らは、芸能界やファッション業界を行き来するモデルたちで、物だらけの家を所有している。住んでいるというよりも、忙しいために、家を空けることも多く、そこを狙ったのが年齢的にはまだ学齢にある彼女らと彼によって組織された犯罪集団である。と言っても、集団はせいぜい5人か6人ぐらいのものであり、その犯罪も溢れんばかりの物量の中から、バレるかバレないか、盗まれた本人も盗まれたことに気づかないぐらいの少量を窃盗する空き巣である。
物は、ファッション関係を中心に、アクセサリ、服、下着、バック、靴、時計、香水、口紅、薬、サングラスなどで、時にボーナスのように現金の札束を獲得できることもある。家には猿や仔犬がいることはあるが、使用人や家族などがいることはなく、ほぼ無人であり、防犯用の監視カメラ
は慰み程度に回されてはいる。有名人たちは、この家をファッション類の物置程度に利用し、人を集めパーティーが催されたり、孤独に自由時間を過ごしたり、寝たり食べたりすることもあるだろうが、一人暮らしにしては、過剰なスペックの家であり、ファッション類は有名人たちの有名たる所以となる威光を放つのに必須の道具ではあるものの、生活に必需な物資や食糧ではない。
面白いのは、ケイティ・チャンが演じるレベッカや、エマ・ワトソンが演じるニッキー、あるいは男性のマークや、長身のクロエたち主要な窃盗団のメンバーたちに倫理が備わっていないことはもちろんであるが、それはそのための教育がなく、自前の学習プログラムによっていたため、というよりも、有名人が有する圧倒的なファッションはそもそも氾濫するものであって、やや大きなコミュニティの中に一部は還元され、還流することが正当ではないかという問題を無意識に提起している点にある。ファッション類は身に付けられなければゴミである、そうした年少者による主張が見えなくもない。ボニー&クライドが引かれるが、その強盗に正義はなくても、義賊として子どもたちに受け取られている。
4人が手を繋ぎサークルをなし、カルマといったスピリチュアルな思想が語られる。運転席と助手席で関係されるベストフレンドは、性的な不幸や幸を伴う者たちではない。ビーチやクラブで戯れる事しかしらず、丘の上の豪邸への侵入もややスリリングな遊びに過ぎない。リーダーが目指されるが、ファッションのリーダーと活動家のリーダーは紙一重でもある。子どもたちは、社会に原始性をもたらしている。
現在的な音楽の流れる中に約400カットが散りばめられている。bling ringは、きらびやかなイメージの俗語であるだろうが、bringとの間に韻が踏まれ、空き巣によってしか持ち出されない社会の富の不合理な集積を暗示している。