素晴らしき哉、人生!(1946)

すばらしきかなじんせい|It's a Wonderful Life|It's a Wonderful Life

素晴らしき哉、人生!(1946)

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レビューの数

133

平均評点

83.3(762人)

観たひと

1109

観たいひと

151

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル コメディ / ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 1946
公開年月日 1954/2/6
上映時間 130分
製作会社 RKOラジオ映画
配給 日本RKOラジオ映画
レイティング 一般映画
カラー カラー/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャプラ、ワイラー、スティーヴンスの3人が協力して設立したリバティ・プロの第1回作品(1946年)で、フランク・キャプラが製作・監督に当ったヒューマニスティック・コメディ。フィリップ・ヴァン・ドレン・スターンの物語を、「花嫁の父」のコンビ、フランセス・グッドリッチとアルバート・ハケット、それにキャプラが協力して脚色した。撮影はジョゼフ・ウォーカー(「ジョルスン物語」)、音楽は「楽園に帰る(1953)」のディミトリ・ティオムキンの担当。主演は「裸の拍車」のジェームズ・スチュアート、「地上より永遠に」のドナ・リードで、ライオネル・バリモア(「栄光の星の下に」)、トーマス・ミッチェル(「真昼の決闘」)、ヘンリイ・トラヴァース、(「セント・メリイの鐘」)、グロリア・グレアム(「綱渡りの男」)、ワード・ボンド(「恋は青空の下」)らが助演する。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

ジョージ・ベイリイ(ジェームズ・スチュアート)は子供のころから、生まれ故郷の小さなベタフォードの町を飛び出し、世界一周旅行をしたいという望みを抱いていた。彼の父は住宅金融会社を経営し、町の貧しい人々に低利で住宅を提供して尊敬を集めていたが、町のボス、銀行家のポッター(ライオネル・バリモア)はこれを目の仇にして事毎に圧迫を加えた。大都会のカレッジを卒業したジョージは懸案の海外旅行に出ようと思ったが、突然、彼の父が過労のため世を去った。ジョージは、株主会議で後継社長に推され、承諾せねばならぬ羽目となり、弟が大学を卒業したら会社を譲ることにして、一時海外旅行もおあずけになった。ところが4年たって大学を卒業した弟は、大工場主の娘と結婚しており、その工場を継ぐことになっていた。ジョージの夢は全く破れ去った。やがてジョージは幼馴染みのメリイ(ドナ・リード)と結婚した。そして豪勢な新婚旅行に出発しようとした時、世界を襲った経済恐慌のため、ジョージの会社にも取付さわぎが起こった。ジョージは旅費として持っていた5000ドルを貧しい預金者たちに払い戻してやり、急場をしのいだ。そのため新婚旅行は出来なくなったが、2人は幸福な結婚生活に入り、次々と4人の子供に恵まれた。住宅会社の業績も着々と上り、それに恐れをなしたポッターはジョージ懐柔策に出たが、彼は断固拒絶した。第2次大戦が起こり、海軍飛行将校として従軍したジョージの弟は、殊勲をたてて大統領に表彰された。だがその喜びの騒ぎにとりまぎれて、会社の金8000ドルが紛失した。実はその金はポッターの手に入ったのだが、彼はそれを秘してジョージを苦しめ脅迫さえした。そのうえ会社には会計検査官もやって来る仕末。絶望したジョージは橋の上から身投げしようとした。と、それより一瞬早く奇妙な老人が彼のそばで身投げした。ジョージは夢中になってその老人を救った。老人はクラレンスといい、自分は2級天使で翼をもらうためジョージを救ったのだと語った。自棄になったジョージが、この世に生まれなければ良かったと洩らすと、クラレンスは彼を望みどおりジョージの生まれて来なかった幻の世界に連れて行った。そこは人情も道徳もない幻滅の世界であった。ジョージはたまらなくなって元の世界へ戻してくれと絶叫した。再び現実に戻ったジョージは、クリスマス・イヴの祝いを待つ我が家に駆けもどった。そこへジョージの窮状を知った町中の人々が、寄付金をもって彼の家に押しかけて来た。ジョージは今さらながら人の心の温かさを知り、妻や子供たちを抱きしめて、人生の幸福を沁々感じた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2011年3月上旬号

第二回 午前十時の映画祭:「バンド・ワゴン」「素晴らしき哉、人生!」

1953年12月上旬号

グラフィック:素晴らしき哉、人生!

2024/05/05

2024/05/06

80点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/購入/テレビ 
字幕


発想が面白い

ネタバレ

発想がとても面白いです。
観ているうちに、この主人公の人生って可哀想だなと思わせるのですが、最後のどんでん返しのように、いやすごく素敵な人生なんだなと思わせる“力技”はさすがとしか言いようがありません。

2024/04/04

2024/04/04

55点

VOD/U-NEXT 


・1946年、第二次世界大戦直後の伝説の映画 ご都合主義で強引ではあるが出来すぎなぐらいにハッピーエンド 現在の映画に続く映画の作り方の基本がここにある

・今見るとやっぱり古い 物語の展開が強引、むかつくポッターは8千ドルを手に入れただけで罰を受けない、華やかにお金が集まる強引な展開、そもそも主人公と妻の出会いもとても付き合うようにならないような展開 現在の物差しで見るとつらかった
・主人公が彼女には手を出せない奥手もの、ピンチでは子供を含めた家族にあたる 感情移入しづらいキャラクター
 

2023/12/24

2023/12/25

80点

テレビ/無料放送/TOKYO MX 
吹替


映画の世界だからできた事

ジョージ・ベイリイは住宅ローン会社経営の父の急死で後を継ぎメリイと結婚します。
折からの世界恐慌にもかかわらず、貧しい客を救います。
しかし対立する町のボスのポッターは業務好調なベイリイを懐柔しようとするが拒否します。

順風満帆ばかりではドラマとして単調になりかねません。
その後終盤に至るや叔父が預金にいった8千ドルを紛失するなど逆境ばかりの出来事に陥るベイリイですが、天上の2級天使クラレンスがベイリイに生れなかった仮の世界見せます。
神の後押しを受け現世の素晴らしさに気付いたベイリイは始め戸惑ったものの、住人のカンパで危機から脱出をします。

ラストでの溢れ出る善意の洪水に圧倒され、キュプラワールド全開で、悪人はおらずみんなが善人で、喜んでベイリイに浄財を提供しようとします。
悪役を出来そうにもないジェームズ・スチュアートの朴訥なキャラクターでさらに心が豊かにさせられる思いがしました。

製作時期を考えると、モノクロ映画ではありますが2時間超えの大作で、RKOラジオというまだまだの弱小会社が手掛けた事は相当の覚悟があって作られたと思われ、良い映画人の結集し出来あがった良作と思います。


20120207 TOHOシネマズららぽーと横浜「午前十時の映画祭」

2023/07/11

2023/07/11

90点

選択しない 


天使は変なおじさん

 神様はクレランスという天使を地上に遣わしてジョージを助ける。この天使が変なおじいさん風で、ちっとも天使っぽくない。背中に翼をつけてもらった姿を想像すると、やっぱり変だ。久しぶりに見返す。

 この映画は善悪を超えて善意を示し続けるジョージと利益のために彼を敵視し続けるポッターの対決でもある。ジョージの奉仕の精神に報いるために、窮地に陥った彼を救おうとする町の人たちの善意がポッターの悪巧みを打ち砕く。しかし、神様が介在する映画で8,000ドルを盗んだことに何らお咎めなし。なんらそのことに触れもしないことがずっと理解できなかった。

 ポッターの行いを認める人はいないだろう。いかなる策略を巡らしても、ポッターはジョージを追い詰めることはできなかった。私欲を捨て善意を施すジョージは、いわば神の使徒のような存在だ。ポッターの悪巧みはジョージにとっての試練であり、町の人々にとって、その連帯を試す挑戦でもあったわけだ。

 ポッターは利益追求や個人的な野心に重きを置き、ジョージは人々を助け、町の発展に貢献することで幸福を追求しようとする。神様はジョージの運命に介入したが、ポッターの運命には関わらない。
 善意や奉仕の精神でポッターの欲望に立ち向かうことで人々の幸福を守ることができるというメッセージを伝えたかったのだろう。

2023/02/22

2023/02/23

87点

VOD/U-NEXT/レンタル/PC 
字幕


噂どおりの作品でした―

 結婚までは、もたついている感じがあります。ジェームズ・スチュアートは、どちらかと言うとキレやすい性格というか、感情に任せてしゃべります。思ったことは口に出るので、弁が立ちます。父のあとを引き継ぐ時も、町の有力者と対決します。
 ハネムーンに行こうとすると、預金者が押し寄せてきます。世界恐慌ということでしょう。いつもの弁で、彼らを説得します。
 ピンチを切り抜け、事業が立ち直り、クリスマスまできます。ここからが、この作品の見どころです。

 天使の世界では、翼は必要だが、金は要らない。一方、スチュアートは、世間は金だ。ごもっともです。
 8000万ドルがなくなり、事業が立ち行かなくなり絶望です。橋の上から飛び込もうとすると、天使が先です。すると、彼を助けに飛び込むのです。
 これには、ビックリ。私も若い頃、自殺の衝動は何度かありました。その心境で人を助けようとできるものでしょうか。まして、寒い冬。とても飛び込めません。せいぜい、警察に連絡かな、と思うのです。
 ここではまだ、たかが映画の世界、弁は立ち、寒い中川に飛び込めるヒーローの話だと思うぐらいでした。

 ところが、自分がいない世界という魔法から画面に釘付けになります。母は安宿の管理者、弟は若死、妻はいまだに未婚などなど。この世にまるで自分の足跡がないのです。「生きる」の主人公は、この無意味と戦ったのです。
 痛い、悲しい、苦しいといった日常の感情も、生きていればこそ成り立ちます。そう気づいた彼の、メリークリスマスの溌溂さ。

 善意の嵐の中で、やってきたことがひとつも無駄になっていないことが、彼にはわかるのです。その中の、友ある者は救われる、の一文に、涙がひとしずく流れます。

2022/12/27

2022/12/29

-点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 
字幕


資本主義の闇

当時戦勝国だったアメリカでこの映画はヒットしなかったそうだ。高揚した国民の意識は自殺しようとするジョージ・ベイリーとは大きくかけ離れた感覚だったのだろう。ところが時代が変化するにつれ、ヒットしなかったこの映画が再考されてゆく。家を買えない庶民。町を支配する資本家。間に入って金融業を営むベイリー。この映画はベイリー対ポッターの戦いのドラマである。これは富の配分のため、犠牲となったベイリーと、その富を思う存分悪用して自らの利益のためだけに生きたポッターの対比。これはまさに、資本主義の矛盾、資本主義の闇を描いた作品ともとれる。

冒頭の不思議なシーンで天使がほのめかされるが、実際にこの2級天使クレランスが現れるのはだいぶあとだ。つまり前述のとおり、このドラマはベイリー対ポッターの戦いの歴史であり、ベイリー家については世代を超越した戦いをポッターに挑む物語になっている。ジョージのあまりにも悲しく献身的な人生を、最後の最後で大きく展開させるシナリオ構成が素晴らしく、大団円に向かうまでに大きな感動が押し寄せる。
何度か見ていると、これまで意識しなかったシーンが目につく。ひとつは弟のハリーが戦争に行って英雄として戻るまでのシーンで、本当の戦闘シーンを使っている。夢のようなこの映画で異質なシーンだ。もうひとつ。2級天使クラレンスが橋のたもとの小屋でジョージと会話するシーンで、濡れた服を乾かすロープが二人をよぎっている。天使と現実の間に画面の上で線を描くことで対比させている。
このように、これまであまり意識しなかったシーンも美しく、叔父が紛失した8,000ドルをめぐるシーンも、前半の取り付け騒ぎのシーンと呼応する。
妻となるメアリーとの歯がゆいやりとりも面白い。メアリーはこの場合「聖母マリア」を象徴する。そしてジョージが自殺を試みる場面はキリストの磔が背景にある。この映画は、極めて政治的なメッセージを見えないように主張しながら、旧約聖書からの引用が背景にあることで、クリスマスという時期に大きな意味をもつのだと思う。
小さいことだが、ジョージの実家に黒人の家政婦がいる。この家政婦もまた、自由に発言し忌憚のない意見を言う女性だ。そんなシーンもとても印象深い。