これはジェームズ・キャメロン版『未知との遭遇』といった感じだろうか。
『ターミネーター』や『エイリアン2』のような脅威の存在はないものの、冒頭からラストまでスリリングで飽きさせない展開はさすが。
アメリカの原子力潜水艦が正体不明の物体に接近され、コントロールを失い沈没するまでの冒頭のシーンがショッキングだ。
艦内はあっという間に浸水し、手を打つ間もなく乗組員たちは犠牲になっていく。
この水の恐怖はこの後もずっとつきまとうことになる。
アメリカ政府は海底で石油発掘を行っているバッド率いる作業員と、SEALの特殊部隊隊員に潜水艦の乗組員の救助を要請する。
海上では凄まじい勢いのハリケーンが接近していた。
このハリケーンによって海上の支援船と石油プラットフォームを繋ぐケーブルが破損し、バッドたちが海底に取り残されてしまうという絶望的な状況が作り出される。
そして作業員の一人は調査中の潜水艦内で謎の光に接し、意識を失ってしまう。
またバッドの別居中の妻で、プラットフォームの設計者でもあるリンジーも、まるでUFOのような形をした謎の生命体と接触する。
この時点では謎の生命体が悪意あるものなのか、そうでないのかは分からない。
それよりもバッドたちにとって脅威となるのが、SEALの司令官コフィの存在だ。
実は乗組員の救助は表向きで、彼らの本当の目的は潜水艦から核弾頭を回収することだった。
やがて外部との通信が遮断されたストレスと、神経症によってコフィは正気を失っていく。
この映画の中で水は恐怖の象徴であり、また神秘の象徴でもある。
プラットフォーム内に筒状の水の形で、未知の生命体がバッドやリンジーと接触するシーンは印象的だ。
そしてこの生命体の接触によって完全にコフィは狂い出し、核弾頭を海底に撃ち込もうとする。
バッドとコフィの対決は息つく暇もなく、この作品の中で一番のアクションシーンの見せ場だろう。
そんな人間同士の醜い争いを、ただ未知の生命体は静かに見つめるだけのようだ。
今では地球のあらゆる場所に高次元の存在がいるという話は、オカルトだけの世界に留まらなくなっている。
彼らは何らかの形で地球人に気づきをもたらそうとしているのだろう。
この映画の中では彼らの目的も真意も分からないが、ラストシーンの壮大さはやはり『未知との遭遇』を思わせる。
そしてラストシーンの後に続く人類の物語が気になった。