「再会」の歌詞のようにミシガン湖に夕日が沈んで終わる
原題"Road to Perdition"で、破滅への道の意。劇中では、親子が逃亡を目指す叔母の家があるミシガン湖のほとりにある町の名となっている。
マックス・アラン・コリンズ作、リチャード・ピアース・レイナー画の同名グラフィックノベルが原作。
舞台はシカゴに近いロックアイランド。主人公はヤクザの長男(タイラー・ホークリン)で、お父ちゃん(トム・ハンクス)の仕事ぶりを見たのが組に知れてしまったことから命を狙われ、代わりにお母ちゃんと弟が殺されてしまう。
お父ちゃんは長男を連れて逃亡を図り追っ手を皆殺しにした上に親代わりの組長(ポール・ニューマン)も殺してしまい、抗争に決着をつけて裏社会とは手を切り、安息の町パーディションで再出発を図ろうとするが、すでに組長が雇っていた殺し屋(ジュード・ロウ)が待ち伏せしていて殺され、長男は一人ぼっちになるという結末。
全体は長男の父親の思い出という形式を採っている。
物語の狂言回しとなるのが組長の息子(ダニエル・クレイグ)で、主要人物に名優が揃っている上に、サム・メンデス監督となれば、つまらないわけがない。
跳ねっ返りで出来の悪い組長の息子。バカ息子に悩みながらも愛情を捨てられない組長。ヤクザでありながら家族思いで子煩悩なお父ちゃん。死体写真を撮るのが趣味の変質者の殺し屋。
それでも今ひとつ食い足りないのは、ヤクザ世界の二組の父子愛を描きながらも表面的で、葛藤までには至っていないためで、結局は死と背中合わせのヤクザたちのセンチメントを描いただけに終わっている。
人殺しも厭わないヤクザだった父をみんなは悪い人というが、家族にとってはいつも良い人だった…では、松尾和子の「再会」の歌詞のようで、ミシガン湖に夕日が沈んだだけに終わってしまう。(キネ旬1位)