「晩春」では父娘だった笠 智衆さんと原 節子さんですが、本作では兄妹の設定です。 前作同様、鎌倉を舞台とした戦後間もない家族を描いています。 紀子(原 節子)とその友達との女子会や親友アヤ(淡島千景)との遣り取りが華を添えます。 その淡島千景さんが滅茶苦茶チャーミングで、胸がトキメキました。 前作(晩春)の月丘夢路さんもお綺麗でしたが、淡島千景さんには完全に持って行かれました。
物語は一言で言えば間宮家の長女・紀子が結婚するまでのお話ですが、まずは紀子の仲良し四人組の女子トークから始まります。 これが主婦組二人と独身組の紀子とアヤとの見え張り(悪口)合戦で、ホノボノと笑えます。 やがて紀子の上司(専務)・佐竹が持ち込んだお見合い話へと進展し、話が纏まるかと思わせて、次男・省二の親友で幼馴染みの矢部と結婚してしまいます。 女心と秋の空って言うやつですかね。 まさかの大逆転です。 因みに麥秋とは初夏の季語だそうで、秋ではない様です。
兄の省二は、戦争で亡くなったと言う知らせは無かったようですが、今だ帰宅せず家族も諦めていると言う設定です。 また今作も肝心なシーンは映さない作りです。 前回は能を飽きる程見せられましたが、今回は歌舞伎の声だけ。 声だけの歌舞伎は音だけ聴こえる飛行機の様で全くつまりません。 佐竹が紹介した男性も省二も写真すら出て来ませんし、紀子の結婚式すら映しません。 紀子は矢部の転勤と重なり秋田へ、両親は実家?のヤマトへ隠居し、家族はバラバラに成って行くと言うラストでしたが、当然秋田の景色が出てくるだろうと思っていましたが、ヤマトの風景で幕を閉じました。
ヤマトと言うのは大和市の事ですかね。 自分、隣町の瀬谷に50年位前に住んでいましたが、あんなボタ山有ったっけなぁ。 まぁ、のどかでは有りましたけど。 何にしても上流階級のお話です。 こんな映画を観て、自分達もあんな暮らしがしたいと庶民は思ってたんでしょうね。 900円のケーキって今なら1万円位のケーキだと思います。 うどんが一杯15円の時代ですからねぇ。 言葉使いも死語が多かった様に思います。 今の人たちに「おんも」って通じますか? 「自分一人で大きくなった様な気に成って」って昭和のドラマではよく耳にしましたが、最近聞かないですよね。
撮影は晩春のセットそのままの様です。 今回も会話が当人のアップに成りますが、二人で会話する場合、左側の人は右前から右側の人は左前から撮ると思いますが、双方とも同じ向きから撮るので、並んで喋っている様な錯覚に陥ります。 とは言ってもほぼ正面なので、違和感の何故?に暫く気が付きませんでしたけど。 笠 智衆さんもセリフが棒読みですし、鉄仮面と言うか顔の表情に乏しいので、何故人気が有ったのかが解りません。 セリフを言う時は瞬きするなと言われていたのかな? 杉村春子さんを除けば特に演技の巧い人も見当たりませんでした。 二作目となると原 節子さんの「何処でも笑顔」も鼻に付いて来てしまいましたし・・・。 ただ佐竹(佐野周二)の笑い方は可笑しかったです。 ついつられました(笑)