夢中になった。そのことは老人になった今見ても変わりはない。
ネタバレ
青春の蹉跌
本作が公開されたのは1974年。まさに、自分の青春真っただ中である。親友と今はなき地元の映画館の深夜興業で見た。当時、文壇の権威であった石川達三の原作を70年安保後の閉塞感を背景に、長谷川和彦が自己を投影させながら大胆に脚色し、神代辰巳監督独特の空気感の演出で、僕は自らのちっぽけさと無力にさいなめさせられた。萩原健一、桃井かおりの従来にない演技、スタッフもキラキラしているのに対し、自分は野心も夢もなく、意味なく怒っていた。でも、井上堯之の素晴らしい音楽とあいまった当時みたこともない作品に夢中になった。そのことは老人になった今見ても変わりはない。ただ、萩原健一、神代辰巳、長谷川和彦、井上堯之は既に亡くなり、一緒に見た親友もいない。映画は、当時とおなじようにキラキラしているにもかかわらず・・・。
それにしても、長谷川和彦は、学生運動、内ゲバ、アングラ、フーテンなど、生々しい当時の空気をよくもこれだけ、取り込んだと思う。そのことがとても愛おしく、改めて、彼の死を、いや、彼が映画を撮れなかったことが悔しくてならない。友よ、あの桃井かおりが自転車を漕ぐシーンの美しさを語り合ったことを覚えているかい。僕らは、あの時、確実に同じ時代をそして同じ思いを共有していた。君がいないことを改めて寂しく思う。