ベルリンの街のそこここにいる天使。無垢な子供にだけ見えるその存在が、モノクロームの映像でとても幻想的に描かれる。人に寄り添い、ときに人々の沈んだ心を癒す。天使ダミエルは、限られた生でありながら、人間のように豊かな感覚を持ちたいと願う。堕天ではなく、あくまで本人の意志だ。天使ダミエルが人間になることで、世界に色彩が生まれるシーンがとても美しく、彼が表情豊かに五感で世界を感じている様に、とても幸福感を覚える。なぜかダミエルを演じたブルーノ・ガンツが役所広司と重なった。『PERFECTDAYS』も観たせいか。または、ヴィム・ベンダース監督のおめがねにかなう何か同じものを持っているのか。
高校生のときに鑑賞して、深い感銘を受け、今回再度の鑑賞。当時は意図が理解できなかったシーンが、この歳になり、さらに理解できるようになった。歳を取った自分がうれしい。
天使ダミエルがマリオンに恋し、生の美しさに憧れる一方で、相棒の天使カシエルは人の残酷さや悲しみにひきつけられている。戦争の暗い記憶を日々回想する老人や自死を選ぶ若者らと、一緒に悲しみ、寄り添っていく。
『刑事コロンボ』でおなじみのピーター・フォークが本人役で登場し、ユーモアたっぷりにダミエルを先導する存在で、とても印象的だった。
30年ぶりに再鑑賞、やはり傑作映画だ。