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今までありそうでなかった、ワンシチュエーション縦4層構成。娘を含めた女性4人に対してのそれぞれの時間軸を経て、主人公の男性を多方面から覗き見る。会話劇として肝心なはずの会話は、中身があるようでないよう。傍観するしかない観客は、どこに当の本人の姿があるのか見失う。そうしてるうちに、ひとり煙草を吸うビョンスの無の時間で幕は降りる。結果、悩める男を悲哀の者にしてしまうのだ。こういったある意味の悪事を見事なセンスでホン・サンス先生はこっそりカバーする。
ウリ号? 韓国人宇宙飛行士で月面を歩いた人いたかな?と思ったら、近未来のSF映画だった! 韓国が宇宙開発競争に限らず、世界の映画産業に対しても切り札を差し出したような結構な力作。ドラマ展開に実直すぎる部分はあるけれど、主演ソル・ギョングの勢いで物語を引っ張っていく。ツッコミどころがたくさんあったが、楽しく鑑賞した。CGでイノシシの集団が突然現れるところとか、偉い上層部の人物に限ってオーバーアクティングしがちなこととか。エンタメ要素はやや韓国ドラマ寄り。
一つ一つのシーンが幼きクレオの記憶として、大切に扱われている。秀逸なのは、映されるいくつかの手元のショット。洗濯物を畳む母親代わりのグロリアの手。しかし、そこにはいないはずの我が子たちの存在を強く感じさせる。クレオがグロリアの素肌を指で触れる。同様に、亡き母親の存在がある。それらのショットは言葉より強い仕草で愛情を示し、その深さの海図は印象的なアニメーションで表現される。グロリアとクレオの永遠の絆はカメラのフィルターを越えるほどの温もりを与えた。
人類の歴史的偉業「アポロ11号」の題材にひねりをくわえ、その裏側に存在したメディアの嘘を描いた壮大なブラックユーモア。それに留まらず、たくさんの夢と希望が詰まっている。95年に製作された「アポロ13」から、語りのアプローチがここまで飛躍するとは。NASAの当時の貴重映像とともにさまざまなギミックを駆使したオープニングから一気に心を摑まれる。後はもう映画のリズムに乗るだけ。やっと、バーランティ監督の実力が明らかになった。これからどんどん映画を撮ってほしい!
作中に出てくる台詞を聞いて、なるほどホン・サンスの映画は酒を飲みながらだらだら観るのにちょうどいいのだ(そして酔いが回ってわからなくなったらその地点からまた繰り返し観ればいいのだ)と膝を打ち、今回は変なズームとかないんだな、ある意味正攻法の撮り方だなと思っていたら、最後の最後にこんな仕掛けがあるのだから油断がならない。原題は「塔」という意味だが、階を上がるたび変わるビョンスの姿は、まさに「どれもビョンス」なのだろう。クォン・ヘヒョが美声の持ち主だと今回気づく。
映画内の人々が国の威信をかけて技術力の高さを証明しようとするのと同様、この作品自体もまた、韓国映画の技術力がいよいよ世界トップレベルにあることを証明する。複数の先行米国映画の影が序盤こそちらちらするが、手に汗握る展開を観るうち気にならなくなるはず。一方、もはやこれまでという局面を打開するのが、過去の因縁とディープな情念というのは韓国映画らしいところ。いつものように愛すべき小物感を爆発させるチョ・ハンチョルからいつも素晴らしいソル・ギョングまで、キャストも充実。
いわゆる「マジカル・ニグロ」(白人に都合よく奉仕する黒人キャラクター)のパターンになるのではと冒頭懸念したが、全然違う趣向の物語に。クレオはグロリアを実母のように慕うが、グロリアもその家族も、新しい子守が来れば他人になってしまう人々だ。クレオやグロリアから離れまいとするかのようなカメラ(ウニー・ルコントの「冬の小鳥」を思わせる)の親密さ。母親と過ごすはずの年月をクレオに奪われていた少年セザールの苛立ち。挿入されるアニメーションにも催涙効果あり。これはたまらん。
捏造映像を保険として撮影しておくことにしたのがやがてサスペンスを生み出すという、根強い都市伝説を逆手に取った着想がなかなか面白く、NASAを支えていた女性たちを讃える側面を備えているのもイマの映画らしくてよい。ところで作品の評価とは全然関係ないが、テイタムがチームメンバーを奮起させる演説シーンを見つつ、こういうのつい最近も見た気がするけど何だっけと考えてみたら「オッペンハイマー」だった。両プロジェクトの本質的類似性やら、表象行為の危うさやらを再度思い知らされた気分。
韓国のインディー映画作家を代表するホン・サンス監督の最新作は、まるで彼のアバターのような映画監督が主人公となり4階建てアパートメントを舞台に、各章ごとに一階ずつ上の階に上がっていく4章構成の繊細なコメディ。悩み多き中年映画監督だが女にはモテるところはウディ・アレン的。モノクロの画像が美しく、ウィットに富んだ会話が楽しく、時間経過が曖昧なままエピソードがつながり、最後が円環構造になる構成の斬新さに感服。「映画作家」への批評的視点も持った、見事な映画作家映画。
韓国初の月面有人探査というミッションを担い3人の宇宙飛行士が月へ旅立つが、太陽風の影響で2名の命が失われる。果たして残された1名は月面探査を行い、地球に帰還できるのか。韓国映画として最大級の超大作SFだが、構成は「ゼロ・グラビティ」×「オデッセイ」のまんま。そこに過剰なまでの愛国主義的な情感を盛り込み、かなりウエットな仕上がり。この制作費と技術力には素直に負けを認めるが、いかなる国の愛国主義映画も好まない私としては残念なプロパガンダ映画に思える。
パリの6歳の少女クレオが、アフリカ系の乳母グロリアが故郷に戻ることになり、彼女を訪ねてアフリカへの旅に出る。好奇心に満ち未知なるものとの出会いに一々興奮するクレオ役の少女が素晴らしく、劇映画とドキュメンタリーのいいとこどりをした高揚感とリアリティがある。願わくは、もう少しドラマ性があったほうが楽しめるのだろうが、そうなると映画が嘘っぽくなるのだろう。大まかな物語の筋はあるが、ほとんどドキュメンタルな現場感で作られている(ように見える)、フィクションとドキュメントの見事な交差点。ちょっとした映画の発明。
1969年の人類初の月面着陸に関わる陰謀をめぐるコメディ。切れ者のPRウーマンをジョハンソン、NASAの発射責任者をテイタムが演じ、二人の掛け合いの楽しさは50~60年代のハリウッド映画的。全体に往年ハリウッド映画的かつ、古き良きアメリカ的なテイストが濃厚で、最終的に誰も悪役ではなく、見事にハッピーエンドとなる。しかし、その後の世界を生きる我々としては「古き良きハッピーエンド」で映画を終わらせていいのかと。たとえコメディにするとしても月面着陸に対する批評的視点が必要はなずでは。