この世界の(さらにいくつもの)片隅に

このせかいのさらにいくつものかたすみに|----|----

この世界の(さらにいくつもの)片隅に

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レビューの数

107

平均評点

87.7(590人)

観たひと

761

観たいひと

150

(C)2018こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル アニメーション / 戦争 / ドラマ
製作国 日本
製作年 2019
公開年月日 2019/12/20
上映時間
製作会社 2019「この世界の片隅に」製作委員会 (製作統括:GENCO/アニメーション制作:MAPPA)
配給 東京テアトル
レイティング
カラー カラー
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督片渕須直 
画面構成浦谷千恵 
脚本片渕須直 
原作こうの史代
(『この世界の片隅に』(双葉社))
企画丸山正雄 
プロデューサー真木太郎 
キャラクターデザイン松原秀典 
作画監督松原秀典 
美術監督林孝輔 
音楽コトリンゴ 
監督補浦谷千恵 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演(声)のん 北條すず
細谷佳正 北條周作
稲葉菜月 黒村晴美
尾身美詞 黒村径子
小野大輔 水原哲
潘めぐみ 浦野すみ
岩井七世 白木リン
牛山茂 北條円太郎
新谷真弓 北條サン
京田尚子 森田イト
世弥きくよ 堂本
たちばなことね 刈谷
瀬田ひろ美 知多
小山剛志 浦野十郎
津田真澄 浦野キセノ
佐々木望 小林の伯父
塩田朋子 小林の伯母
特別出演澁谷天外 

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2016年に公開され、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第一位を受賞した「この世界の片隅に」に約30分の新規シーンを追加した別バージョン。主人公すずとリンとの交流、妹すみを案じて過ごすなかで迎える昭和20年9月の枕崎台風のシーンなどが追加された。新しい登場人物や、これまでの登場人物の別の側面なども描かれ、すずたちの心の奥底で揺れ動く複雑な想いを映し出す。前作に引き続き、主人公すずをのんが演じるほか、すずの夫・周作を細谷佳正、周作の姪・晴美を稲葉菜月、周作の姉・径子を尾身美詞、すずの旧友・哲を小野大輔、すずの妹・すみを潘めぐみ、すずと仲良くなる女性リンを岩井七世といったボイスキャストも続投。監督・脚本は、前作で第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画監督賞を受賞した片渕須直。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

昭和19年、日本が戦争のただ中にあった頃。18歳で広島から呉の北條家に嫁いだすず(声:のん)は、夫・周作(声:細谷佳正)とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。だが戦況は次第に悪化、すずたちの生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。そんなある日、すずは迷い込んだ遊郭でリン(声:岩井七世)と出会う。境遇は異なるが、呉で初めて出会った同世代の女性に心通わせていくすず。しかしその中で、すずは周作とリンとのつながりを感じ取るのだった。昭和20年3月、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。そして昭和20年の夏がやってくる……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2020年1月上・下旬合併号

グラビア対談 片渕須直[監督]×のん「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」:

UPCOMING 新作紹介:「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」

REVIEW 日本映画&外国映画:「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」

戯画日誌:第116回 クリスマス直前に見た良作の数々

2023/03/08

2023/03/08

95点

VOD/Hulu/購入/テレビ 


ありがとう

この国で起きた この戦争のことを、こんなにも素晴らしい映画として残してくれて感謝です。
この時代の文化や生活をきちんと描いていて、戦争の痛みや悲しみから目を逸らさずに、まさかのファンタジー要素を踏まえて 嬉しさ楽しさを表現していて、素晴らしかったとしか言いようがありません。
ずっと残っていく名作だと思います。

2022/08/13

2022/11/13

88点

テレビ/有料放送/日本映画専門チャンネル 


さらに傑作に。

前作も良かったが、原作から削ったエピソードを加えた事ですずさんや周作さんの人物像が更に深まり、ドラマとして見応えがあった。リンさんとの三角関係という側面によってすずさんの女性としての葛藤と屈折が描かれており前作と印象が変わる。又、周作さんがすずさんとその幼馴染を出兵前とはいえ同じ納屋に一晩一緒にさせる気持ちも大分、理解できた。
リンさんの諦観した感じもグッとくるし、南国に想いを馳せる病身の若い娼婦とのエピソードも胸に沁みる。傑作。

2022/08/14

2022/08/14

-点

映画館/東京都 


別作品であり、別世界

ずっと見られずにきていたこの作品。今回、お気に入りの劇場で、しかも片渕須直監督のトークイベント付き観賞という、まさに至福の機会を得た。監督の話でまず驚いたのが、「ようやく公開をして1ヶ月たらずでコロナの影響を受けてしまい劇場で見ていただいた方が少ない」という。配信で見た人の方が多いけれどスクリーンで見てもらうために作られている。「今後も是非劇場で!」とのことだった。

見た第一印象は、前作『この世界の片隅に』とはまた違った世界観で製作されており、全く別作品のように思えた。本作では、遊郭で働く白木リンとのエピソードを追加することで周作、リン、すずの関係性そのものを際立たせた。結果、おっとりしていた印象の主人公、すずの内面は実はそうとばかりはいえない、彼女の繊細さ、ふつうさなど多面性を浮き彫りにしている。これはまさに戦時下の恋愛映画である。逆に前作には多くの人たちに受け入れられやすい戦時中の庶民を扱った大衆映画としての素晴らしさがある。

歴史考証の深さ、確かさには相変わらず唸らされる。フロアと監督とのQ&Aで「この時代に女性が絵を描く自由はあったのか?」という質問に対して、監督は先ず、すずさんとほぼ同時代を生きたはずの長谷川町子さんの名を挙げて「当時から新聞連載し、後に名を上げた人もいたこと」を示す。次に市井の人たちの書いた文章にも漫画家顔負けのイラストが添えられている文献もあるといい、庶民でも生活の中で多様な才能を持ち、控えめながら発揮できた人はいたという。

追加されたエピソードは多々あるが長尺の苦痛は全く感じられない。こうの史代さんの原作漫画に忠実になっているにすぎない。もう一つの驚きは原作のエピソードをより多く取り込むために、前作と12話からなるテレビアニメを組み合わせる構想と今回のように2作にする構想があったという。結果的に後者でいくことにまとまった。つまりは『この世界の片隅に』が企画された段階で『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の製作も決定していたといえる。映画の様に撮っておいてカットしたものを復活させるのと異なり、アニメだから加える部分を新たに製作し、編集し直したのである。そこまで聞かされればこれはもう別作品という他ないだろう。

2022/08/14

2022/08/14

95点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 


長さを感じない良さ。

片渕須直監督です。新たなカットを加えた長尺バージョン。戦時中だけど、どこかのんびりした前半から後半に向けて、あの日が近づいていくカウントダウンのような日付の表示。息苦しくなっていく。おっとりした口調から、激しい口調までのんの声がいい。これはずっと残る名作だと思う。

2022/08/06

2022/08/06

-点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 


2022/06/24

90点

VOD/NETFLIX 


この世界にそうそう居場所は無うなりゃせんよ

ネタバレ

『この世界の片隅に』から新たにシーンが追加され、原作漫画にあるエピソードはほぼ全部この映画で描かれたことになる。
戦時中という物資の少ない中でいかに生活をやり繰りするか等、他の戦争映画ではあまり見られない日常の風景を描いた作品でもある。
何より主人公のすずのぼんやりとして少しドジなところのあるキャラクターにほんわかさせられる。
と同時に戦争という非常時には彼女のような人間は生きづらいだろうなと心配にもなる。
オリジナル版を劇場で観て以来の久しぶりの鑑賞だったが、改めてアニメーションの力を再認識させられた。
これは現実とファンタジーの世界が地続きになっているような、とても幻想的な作品でもあるのだ。
冒頭のすずが毛むくじゃらの人攫いに誘拐される場面や、呉の上空をB29が爆撃する際の絵の具を垂らしたような描写などは、実写では決して表現出来ない味がある。
そしてすずの日常が牧歌的でファンタジーの要素が強ければ強いほど、後半につれて戦争の残酷さがリアリティを持ってくる。
戦時中ではすずのような人間は生きづらいだろうなと思ったが、彼女が生きづらく感じる世界の方が間違っているのだ。
それまでは笑顔を絶やさなかったすずが決定的に変わってしまったのは、義姉の娘の晴美を目の前で失ってしまった時だ。
そして彼女自身も晴美と繋いでいた右手を失ってしまう。
昨日まで一緒に笑っていた人が唐突に消えてしまう、それが当たり前の世界。
生き残った者には罪悪感が残り、誰かを責めずにはいられなくなってしまう。
戦争が終わった時にすずの、「何も考えん、ボーッとしたうちのまま死にたかった」という言葉に心が痛くなった。
命は助かっても、戦争は人の心を決定的に壊してしまう。
映画の台詞ではないが原作にある暴力で従えていたから、暴力に屈した、それがこの国の正体だという言葉が心に強く残った。
戦争が終われば憎い敵だと思っていたはずのアメリカ兵から物資をもらおうと皆が群がる。
それも人間の本質なのだろう。
原作がかなり行間というのか、コマとコマの間を読者の想像力に委ねている部分が多かったので、このアニメーションはその想像力で補っていた部分をかなりドラマチックに描いていたと思う。
原作には原作の良さがあり、またアニメーションにはアニメーションにしか出せない良さがあると思った。
すず役ののんを始め、声優陣もこの映画は誠実なキャスティングだと感じた。
「この世界にそうそう居場所は無うなりゃせんよ」というリンの言葉がとても暖かく心に響いた。