舞台は1936年、大恐慌下のシカゴ。
詐欺で日銭を稼ぐフッカーとルーサーは、裏社会の大物ロネガンが関わっていることを知らずに、違法賭博の売上金を騙し取ってしまう。
結果、執念深いロネガンの刺客によってルーサーは命を落とし、フッカーも逃亡生活を送ることになる。
フッカーはルーサーの古い馴染であり、かつて伝説の詐欺師と謳われたゴンドーフのもとに転がり込む。
ルーサーの仇を討ちたいと息巻くフッカーの心意気を気に入ったゴンドーフは、ロネガンから大金を騙し取るためにひと肌脱ぐことになる。
全体的に緊張感のあるシリアスな設定ながら、どこかポップで軽やかな印象を受ける作品だ。
また『the Entertainer』の曲も作風にとても合っている。
とにかく大掛かりなセットでロネガンを騙そうとするゴンドーフとフッカーの大胆不敵さにハラハラさせられる。
いくら顔が割れていないからとはいえ、命を狙われているロネガンの懐に潜り込むフッカーの度胸は凄い。
騙す側の視点で描かれるために冷や冷やさせられる展開が続くが、事情を知らない者からすれば案外簡単に目の前の状況を信じてしまうものなのかもしれない。
フッカーを追いかけるのはロネガンだけではない。
スナイダーという警察官も執拗に彼を逮捕しようと追跡し続ける。
そのスナイダーにFBIが接触する。
彼らはゴンドーフをずっとマークしているのだが、決定打がない。
FBIと手を結んだスナイダーはフッカーを捕らえ、ゴンドーフを逮捕するために彼を懐柔しようとするのだが、この展開が予想もしない結末へと繋がることになる。
ジョージ・ロイ・ヒル監督で、ロバート・レッドフォード、ポール・ニューマンのダブル主演となれば、どうしても『明日に向かって撃て!』が思い出される。
あちらは悲劇的な結末を予感させる切ない内容だったが、こちらは大逆転を期待させる痛快な作品だ。
どんでん返しが凄いシナリオはいくつもあるが、この映画が観る者を惹きつけるのはシナリオの上手さだけではないだろう。
特にゴンドーフとロネガンが初めて対峙する、電車内でのポーカーの場面が印象的だ。
ゴンドーフは彼にイカサマを仕掛けるが、それを上回る手でゴンドーフは勝利を収める。
地味な画ではあるが、ジリジリとした緊張感に思わず引き込まれてしまった。
また危ない綱渡りのような人生を送ってきたフッカーが、普通の恋をする場面も心に残る。
予想もしない切ない結末と共に。