あまりに清楚でオードリー・ヘプバーンが苦手なのだが、この映画に彼女には脱帽。何度か漫然と見てウィリアム・ワイラーの手腕を楽しんではいたが久しぶりに改めて見直すと、隅々まで計算された演出の見事なことに驚いた。モノクロの美しい画面は勿論のこと音の使い方が見事。女王が安定剤でもうろうとしてアメリカ人の記者のアパートに泊まったあと、アパートの門をくぐった途端の街の喧騒。彼女の冒険の始まりを期待させる音。人々の生き生きとした雑踏の描写が素晴らしい。何の押しつけもなくスッと物語に入っていける・・・よい映画とはこうした映画。