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養護施設の子どもたちに密着し、つとめて「普通の生活」を切り取ろうとするコンセプトはわかる。実際、不幸でも孤独でもない、生き生きとした表情や感情は多々捉えられているが、被写体の魅力と反比例して、作り手の空虚さや問題意識のなさを逆照射している感も否めない。躍動感溢れる映像や音楽はむしろ凡庸さをいや増す。後半ようやく「家庭」をめぐる固定観念が施設育ちの子たちにも染みついた日本の病理を浮き彫りにし、考えさせる内容にはなるが、少し時間がかかりすぎる。
人気ドラマの劇場版というと、やりたいことは大体テレビでやり尽くしたあとに作られるパターンが多いと思うが、これも多分そんな一本。もともとのファンには延長戦的に楽しめるだろうし、未見の観客も「こんなのがウケてたんだ」と眺める気分で退屈はしない。ただ、レギュラードラマ部分のおちゃらけぶりと、手術シーンの大真面目さのギャップには戸惑った(当然「M★A★S★H」の諷刺はない)。同業の芸達者陣に囲まれて楽しそうに演じる西田敏行の雄姿を見届けるために足を運んでもいい。
普通の芝居や日常的なシーンでは、記録ミスかと思うレベルでぎこちなさや間の悪さを感じさせるのは何故なのか。それに反して怪異や非日常を描くときの演出は淀みなく手慣れたもので、そこまで極端な作風だっけ?と思ってしまった。故に異界の住人に扮する天海祐希、上白石萌音は当然のごとく輝いており、一見冴えないヒロイン役の伊原六花は狂乱シーンで俄然光る。そんななか善良な凡人をひたむきに演じて好印象を残す大橋和也は、日本のコン・オニール目指して頑張ってほしい。
前半のコスプレ学芸会的ノリはしんどいが、後半で思いがけずハードな戦争映画然としてきてからは俄然良くなった。「ミクロはマクロに相通じる」という実感は年々強まるばかりなので、人体に起きる致命的な内乱や悲壮な抵抗運動は、地上の戦禍、あるいは壮大な循環システムをもつ地球史にも重なって見えてくる。だから、この星も自分のカラダもどっちもいたわろうぜ、と訴える教訓的娯楽作として楽しんだ。終盤の終末ヴィジョンのクオリティに、ツインズジャパン作品らしさも感じたり。
この児童養護施設では、幼児たちは別にして小学生になると個室に移る。一般家庭の子ども部屋と変わらない。さらに男子、女子と分かれているが、一棟に5~6人の子どもたちが職員と共同生活をしていて、職員と一緒に自分たちの食事作りをしたりも。竹林監督は、ときには叙情的映像を挟みながら、ここで暮らす子どもたちの日常を四季それぞれに記録していくのだが、監督の問いに、ここは施設、家庭とは違う、と淡々と応じる子どもが何人もいて、その本音の重さに改めて家族の不在を実感する。
人気ドラマと聞いて何度かチラ見をしたことはあるものの、しっかり観たのはこの劇場版が初めてなのだが、強気で冷静沈着な外科職人・大門未知子のキャラに、かなり“浪花節”的資質があるのを目撃。そうか、だからお茶の間受けが良かったのね。今回もお馴染みの大学病院を舞台にいくつもの因縁や思惑が絡んで進行、これがまた村社会的な賑々しさで、脚本も演出、演技も堂々と右往左往。冒頭のエピソードと後半の大手術は、現実にはありそうもなさそうだが、未知子の見せ場としてはこれもありか。
中田監督による児童向けホラー? ファンタジーといえばそれまでだが、キャラも仕掛けも話も大人が観るには、ツラ過ぎる。原作はすでにアニメ化もされているそうだか、その駄菓子屋に行くと自分の願いが叶う菓子類が手に入るというゆるい安易さは、幼児ならともかく、尻がムズムズ。駄菓子屋の店主が「千と千尋の神隠し」の湯婆婆の孫娘ふうなのも、いまさら感が。子ども向けでも大人も一緒に楽しめる映画は少なくないが、本作は思いっきり大人は置いてきぼりで、天海祐希、お疲れさま。
「翔んで埼玉」の武内監督によるさしずめ“翔んで細胞”“翔んで悪玉菌大騒動”! ただ人気コミックだという原作を知らずに観たこちらとしては、CGを駆使したカラフルな体内空間を飛び跳ね、走り回るコスプレ調擬人化キャラのケタタマシサにひたすら脱力。この辺り「翔んで埼玉」と共通する。それでも武内監督は健康な体内を平和国家?に見立て、そこに入り込んできた悪玉菌が国家転覆を企てる危ない存在風に演出して話は進めているが、紅白コンビより悪玉菌たちの方が痛快なのはどうよ。
過度にドラマチックにするわけでも、絆や感動を押しつけがましく作り込むわけでもなく、淡々と日常を切り取るのが良い。さまざまな事情を抱える子どもたちへの踏み込みすぎない視点は、場合によると淡白すぎると思えるかもしれない。だが、施設は実家ではなく、あくまで施設にすぎず、同居人たちは疑似家族ではなく、あくまで他人であるという当事者たちの達観した眼差しを前にすれば、こうした作りになるのも必然に思える。むしろ作為性を捨てて撮ったからこそ現れる無機質さが好ましい。
TVシリーズ未見につき予備知識なく接したが、各キャラが完成しているだけあって、自然と没入できる作りに安心する。往年のスターがカメラに向かって目を剥いてオーバーな演技をしたのと同じく、開腹した患者を覗き込んで目をカッと開く米倉の表情に価値あり。内田有紀とのコンビも良く、2人を見ているだけで愉しい。しかし、田中圭が米倉の故郷を尋ねて過去を探るのは唐突で、劇場版用の水増し感が強い。痛ましさなど無縁に座ったままでも躍動して笑わせる西田敏行が忘れがたい。
息子と幼児番組を見るようになって一番ハマったのがアニメの「銭天堂」。人間の弱みや悪意が巧みに描かれているだけに、この監督と脚本家が実写化するならトラウマ・ジュヴナイルを期待したくなる。だが、オムニバスではなく、新人教師と関係ある人物のみで描かれるだけに、突き放したオチにも出来ず微温的になってしまう。映画なのだからクライマックスは銭天堂大爆破ぐらい見せてほしかったが。松坂慶子と見紛う天海祐希の紅子は、ここまでするなら松坂慶子で良かったのでは?
原作未読ながらアニメは見ていたので、よくぞここまで実写化できたと感心する。永野芽郁、仲里依紗、加藤諒という〈わかってるキャスティング〉が世界観を引っ張り、佐藤健も真剣に白血球になりきるので白けない。それゆえ新たに加えられた人間ドラマ部分は、極力ドラマが削ぎ落とされているものの壮大な体内世界のみを描くのは予算的にも厳しいための苦肉の策に見えてしまう。父が外で採血した血がたまたま娘に輸血されるのではなく、移植手術によって細胞移動を描いてほしかった。