コンパートメントNo.6

こんぱーとめんとなんばーしっくす|HYTTI NRO 6|COMPARTMENT NUMBER 6

コンパートメントNo.6

レビューの数

58

平均評点

73.3(230人)

観たひと

314

観たいひと

25

(C)2021 - AAMU FILM COMPANY, ACHTUNG PANDA!, AMRION PRODUCTION, CTB FILM PRODUCTION

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ラブロマンス / ドラマ
製作国 フィンランド=ロシア=エストニア=ドイツ
製作年 2021
公開年月日 2023/2/10
上映時間 107分
製作会社 Aamu Film Company=Achtung Panda=Amrion Productions=CTB Film Company
配給 アット エンタテインメント
レイティング 一般映画
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット デジタル
メディアタイプ ビデオ 他
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

場面 ▼ もっと見る▲ 閉じる

予告編 ▲ 閉じる▼ もっと見る

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

カンヌ国際映画祭グランプリを受賞したロードムービー。1990年代のモスクワ。フィンランド人留学生ラウラは恋人と行く予定だった旅行をドタキャンされ、一人で寝台列車の6号コンパートメントに乗り込む。そこでロシア人労働者リョーハと乗り合わせ……。ロサ・リクソムの同名小説を原案に映画化したのは、「オリ・マキの人生で最も幸せな日」のユホ・クオスマネン。出演は、本作でフィンランド・アカデミー賞主演女優賞を受賞したセイディ・ハーラ、「AK 47 最強の銃 誕生の秘密」のユーリー・ボリソフ、「動くな、死ね、甦れ!」のディナーラ・ドルカーロワ。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

1990年代のモスクワ。フィンランド人留学生ラウラ(セイディ・ハーラ)は、美しい大学教授イリーナ(ディナーラ・ドルカーロワ)と付き合っているが、イリーナは仲間たちにラウラのことを“フィンランド人の友達”としか紹介しない。二人は一緒にムルマンスクにペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く旅を計画するが、イリーナが行けなくなり、ラウラは一人で旅立つ。モスクワ発の寝台列車に乗り込むと、二等車の6号コンパートメントの向かいのベッドに、ロシア人の男リョーハ(ユーリー・ボリソフ)がいた。同じくムルマンスクに行くという彼から「この列車で売春しているのか?」と言われ、堪えきれず席を立ったラウラは女性車掌に移動を願い出るが、我慢するよう言われる。列車がサンクトペテルブルクに到着する。ラウラはモスクワに戻ることを決め、イリーナに電話をするが、帰ると言い出せずに列車に戻る。彼女のいない間、リョーハが彼女の席に赤ん坊を抱えた親子を座らせていたので、ラウラは食堂車に向かう。するとリョーハも着いてきて、ムルマンスクに行く理由を尋ねてくる。ペトログリフを見に行くと知ったリョーハは驚く。彼は鉱山に働きに行くという。列車は夜更けにペトロザボーツク駅に着き、ここで一泊する。知人の家に行くというリョーハの誘いを断り、ラウラは行く当てもなく街へ出る。しかし、トラブルに巻き込まれたところを通りかかったリョーハに助けられ、彼と同行することに。リョーハが彼女を連れて行ったのは、彼らの母親ほどの年齢の一人暮らしの女性の家だった。女性は二人をもてなし、楽しい一夜を過ごす。二人はすっかり打ち解け、ラウラはイリーナが恋人であることを打ち明ける。終着駅が近づき、二人はキスを交わすが、リョーハは別れも告げずに電車を降りてしまい、ラウラは一人でホテルに向かう。翌朝、ラウラがホテルの従業員にペトログリフを見に行きたいと言うと、冬の間はツアーが休みであると告げられ……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2023年2月下旬 キネマ旬報ベスト・テン発表特別号

REVIEW 日本映画&外国映画:「コンパートメント No.6」

UPCOMING 新作紹介:「コンパートメント No.6」

2025/06/09

2025/06/10

70点

レンタル 


ペトログリフとは一体?

モスクワから世界最北端の駅ムルマンスクへ向かう寝台列車を舞台にしたフィンランドのラブロマンス映画。

アート系の難しい映画かと思って観たら、ものすごくストレートな恋愛映画だった。こういった作品がカンヌ国際映画祭グランプリというのは非常に意外。昔の寝台列車というのは全く知らない他人同士が相部屋になったりするんだなぁ。そりゃあ男女の繋がりが生まれる場合もあるだろう。その設定だけでなかなかセンチメンタルで夢がある。

不器用な男女2人が少しずつ打ち解けあっていく様が微笑ましい。思い出の詰まったビデオカメラを盗まれるのは、過去との決別という意味のメタファーか。そのビデオカメラで撮った映像は見るからに昔の8ミリビデオでこれまた涙を誘う。ロシア人はみな優しかった。

2025/03/01

2025/05/20

75点

レンタル 
字幕


余情深い

ネタバレ

登場人物の鬱々とした心象風景でもあろうグレートンに沈んだ画面が続く中、それを柔らかく溶融するかのように差し込む明るい光。主人公の穏やかな笑顔をクローズアップで捉えたラストショットが余情深い。下手クソな似顔絵と「くたばれ」という言葉から始まる新たな恋もある。

一見デリカシーのなさそうな男に宿る隠された思いやりと優しさ。本当の人間性は表面的な付き合いだけでは伺い知ることができないと実感。果たしてペトログリフは見えたのか、どうなのか?そしてその意味は何なのか?観る者の想像力を掻き立てる。

決して映画的な美女美男ではないS・ハーラ、Y・ボリソフの役にはまった好演に見入り、物語を淡々と紡ぐJ・クオスマネンのスタティックな語り口に引き込まれる出色のロードムービー。

2025/03/06

2025/03/08

65点

その他/図書館 


フィンランドの微妙な心情

本作のテーマはシンプルかつ陳腐。
ロシア人でもいい奴はいるし(その比率はどうか?)、フィンランド人でも悪いやつはいる。
フィンランド人の監督の母国でのロシアはいつかまたロシアが侵略するかもしれないという言い伝えを打破したい意図もあったのかもしれないが、事はそう単純ではない。
団体、組織更に国家になるとその見えなかった本性が露顕することがあるのだから。
またモスクワに留学したヒロインが、恋人(と本人は信じているが、相手の年上の教授は同じ熱量を抱いていないのは明白)がその場の中心にいるスノッブなコミュニテイで居心地の悪さを感じながら極寒の地に旅をする寝台列車で同室となる無作法で野卑で無教養な青年との共存に当初は嫌悪感と侮蔑を感じ抵抗を示すが、ふとしたきっかけで彼の優しい人柄の良さを見出す。
必ずしも教養や知性が人柄の良さを計る物差しにはならない事はよくある。
また旅の終着駅で2人が信頼し合う関係になり乾杯をしながらも、お互いの育ってきた背景と彼の嘘(経営者ではなく単なる炭鉱労働者である)がばれることを恥じて一旦別れるが、彼女の目的地が閉鎖されていてまた恋人の彼女に対する熱量も離れてみてわかる。
最果ての酷寒の地で残された希望は偶然かつ皮肉なめぐり合わせの彼であることから、彼を探し出し彼は彼女の望みをかなえてあげるのだ。
地元である地で異国のインテリの彼女を精一杯喜ばせる彼の姿と素直さは清々しさを感じるが、彼女が当初言ったフィンランド語の「くそったれ」の言葉の意味を彼は理解していなかったであろうことは微笑ましくもあるが危うさも感じる。
本作でも言うように人は部分的にしか分かり合えないのだから。
それでも共存していくために人は理解し合う営みを繰り返すのだ。
しかし本作の公開後ロシアがウクライナに軍事侵攻した事実とロシアの現状を考えた方がより真実が見えるかもしれない。

2025/02/03

2025/02/05

95点

VOD/U-NEXT 
字幕


「人間性の現出」

ネタバレ

 フィンランド人留学生のラウラが信頼し愛している女性にあっさりと裏切られる。1人で寝台列車の6号コンパートメントに乗り込む。そこでロシア人労働者リョーハと同室になる。彼は下品で粗雑な第1印象であり、ラウラは一瞬で彼を嫌いになる。
 しかし旅を続けていくうちに、優しい男に騙され大切な物を盗まれとき彼は優しい言葉をかける。ラウラは、素朴で心優しい彼に魅かれていき彼を抱きしめる。
 リョーハは、ラウラを抱きしめたがやがて手を放していく。それは男の優しさであり現実だったからだ。そしてリョーハは消える。
長旅を終えムルマンスクに着いた。目的のペトログリフを見に行こうとしたところ誰もが雪で行けないという。そこでラウラはリョーハを頼る。リョーハはすぐにラウラのもとに駆けつける。
 なんとかペトグリフを見て、ラウラとリョーハの愛が解き放たれる。光と影が風景に溶け込み二人の思いの強さをカメラに刻み付ける。
 リョーハと別れ、車に残ったラウラにリョーハからのメモ書きが。そこに書かれたのを見てまぶしい陽光のなかラウラの微笑みが印象深く胸に残る。ステキな恋をしたという表情だ。100分ほどの時間で、ほぼ動きがない、いわゆる小粒な映画なのにこんなにも感動を与えてくれる。映画はまさにマジックだ。

2024/11/09

2024/11/09

67点

VOD/U-NEXT 

・ロシア最北端の駅になる岩画を見る旅 主人公ラウラが同行予定の彼女がキャンセルになり、それでもラウラ一人で列車にのり向かう、客車で同室となったぶっきらぼうでガサツなロシアリョーハとの交流が繊細に描かれる
・初対面から酔っ払い絡むリョーハ、出発が最悪ながら、徐々に交流が進み、リョーハの寄り道する老婆宅訪問やフィンランド人同行者が同室でいる中のすねたリョーハとビデオ盗難を通して、さらに交流は深まる かわす言葉の一言一言が自然体で、リアルな人間が感じられる
・狭い車中、カメラがラウラに寄っての撮影となり、こちらも窮屈感を感じられる さらに最後の岩画の町のの凍てつく雪も閉鎖的で重々しい雰囲気が感じられる

・目的地である岩画がいまいちわからない、リョーハのおかげでたどり着けた様なカタルシスが乏しかった
 

2024/11/06

2024/11/06

60点

テレビ/有料放送/WOWOW 
字幕


描かれた線と線と

長距離列車に乗れば,その席は当然のように相席である.走行の騒音が聞こえている.窓からは沿線の景色だけではなく,夜の光が漏れてくる.客室乗務員は,機械的で冷たい.こうしたロシア人ばかりの移動環境にひとり寂しく入り込んできたのは,フィンランド人のラウラ(セイディ・ハーラ)である.
彼女は普段,知的な会話の中にあって.恋人で大学教授のイリーナ(ディナーラ・ドルカーロワ)とお楽しみ中の時もある.しかし,イリーナに半ば追放されるようにして,ラウラは,ムルマンスクへ向かう.そこでペトログリフを観るために,ロシアの僻地へと向かおうとしている.
そんなラウラが列車で相席しているのは,ロシア人のリョーハ(ユーリー・ボリソフ)である.彼はがさつでラウラは迷惑そうな顔を隠さない.彼女は硬い表情をしており,そのこともラウラに早々に指摘されてしまう.
ラウラはソニーのビデオカメラを回している.のちにソニーのウォークマンを聞いていることもある.安っぽいような曲が聞こえてくる.ビデオカメラは記録的なものでもあるが,偶然に映ってしまうもののある.列車は時々,ある駅で長時間にわたり停車する.乗客たちはその時間を使って,その地にそれぞれ散っていくこともある.ラウラは,異郷で寂しくなってしまったのか,頻繁に恋人に連絡を取ろうとするが,恋人はつれない.そして,ある電話ボックスでの出来事をきっかけに,ラウラはリョーハの親切に触れ,彼との隔たりが消えかかる.二人が訪れた老婦人の家で,婦人は心の声の話をしている.ウォッカがわりの密造酒を飲みすぎるとラウラは寝坊をして列車の出発に遅れそうになる.
相席は相席を呼んでいる.孤独な旅人はギターを爪弾き,しみったれた歌を歌い出す.犬に導かれて散歩することもある.列車はペトログリフのある都市に達するが,駅から先の道は冬季通行止めになり,ペトログリフに到達することはできない.それでも採石場で労働していたリョーハの力をかり,海のように広がる水面のところまでラウラは達している.そこにペトログリフがあるのかは定かではない.ただ打ち捨てられた船があり,まだどこかへと続きそうな感覚がある.似顔絵に描かれた鉛筆の線が,まだ続くような.