自分が子供のころ、テレビで公害病の報道をしていた。そこでひきつけを起こしている患者を見て心底恐怖を覚えた。小学生であったからこれで人類は滅亡するんだなという絶望感に捉われたのだった。その公害病でもひときわ目立ったのが水俣病だった。この病名を久しぶりに見たのはジョニー・ディップ主演の「MINAMATA」だった。なんで今頃、外国から水俣病のことを描くんだと思った。しかしこれは主人公のユージン・スミスが取材したのが水俣病であったから出てきたのである。したがってこの映画は水俣病の問題を描いているものではない。ユージン・スミスが水俣病じゃなくて別のものを取材していてもこの作品は成立する。
だが、水俣病を久しぶりに聞き、この病気が過去のものではないとふたたび注目されたのは悪いことではない。私も水俣病のことは忘れていたのだから。報道やレポート記事を目にしなくなってからは、もう過去のできごとのように思われたから。
それに水俣病のことならなにもハリウッド映画じゃなくても、日本が描かないといけないことである。と思っていたら本作が公開された。たまたまハリウッド映画公開と時期が重なっていたわけで、本作が便乗映画というわけではない。製作に20年かかった。途中でこのまま安倍政権が続くことに危惧を覚えて本作を中断して「れいわ一揆」を製作している。
6時間におよぶ大作にどうなのかなあと思っていたら、観終わるとこれでもまだ足りないんだろうなあと思った。だがこれ以上の時間を使うわけにはいかなかっただろう。これが限界だ。
第一部・水俣病は末梢神経発症ではなく脳からくるものだと主張する医大の教授の奮闘ぶりを描く。しかしこの教授、患者の脳を運ぶときに喜々とした態度はSF・ホラー映画に出てくるマッドサイエンティストだなあ。
第二部・被害者の長い時間に渡る日々に焦点を当てる。
第三部・悶え神という言葉を思い出す石牟田道子の天に召される予兆を描く。
それぞれ二時間に渡るので、これらを三部作として別々に公開しても良かったようにも思うが、それだと三部作全部観る人は少ないのかもしれない。
ということでPART2の製作もさきごろ発表された。
土本典昭監督の水俣病に関するドキュメンタリー、キネマ旬報のベストテンでは文化映画に分けられる諸作品は当時の地方ではほとんど観ることができなかったので、私は彼の作品を一本も観ていない。ぜひこれらの作品がみられるようになりたいものだ。
ともあれ6時間に及ぶ長さは適切ではなかったのかも知れないが、水俣病という高度成長期における闇の部分を後世に残す映像資料としての価値は大いにある。日本史の勉強のためにもこういう記録は永久保存版にしておかねば。
今また岸田首相は汚染水を海水に垂れ流すことをした。まったく水俣病の教訓は生かされていない。もしかすると岸田は水俣病のことは知らない無知な人間なのだろう。で、歴史から何も学ぼうとしないで、こんな愚行をする。これに中国が日本からの輸入禁止を取ると、櫻井よしこなどという似非ジャーナリストが意見広告で一人千円食費を増やして海産物を食べて中国に打ち勝とうなどいう今にも戦争を起こしたいようなアピールをしている。中国がどうのこうのではない。これじゃ日本近海から取れた魚などの海産物は怖くて日本国民も喰えないじゃないか。まったく歴史から学ばない人は愚か者だ。中国を敵視し、戦争の火をつけて日本を混乱させるバカがいるから、こういう記録映画を残さなきゃならないじゃないのか。ここから学べよ、愚かな自民党員とネトウヨ的なジャーナリストは。