ミークス・カットオフ

みーくすかっとおふ|MEEK'S CUTOFF|MEEK'S CUTOFF

ミークス・カットオフ

レビューの数

17

平均評点

79.3(57人)

観たひと

85

観たいひと

12

(C)2010 by Thunderegg,LLC.

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 冒険 / サスペンス・ミステリー / ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 2010
公開年月日 2021/7/17
上映時間 103分
製作会社 Evenstar Films=Filmscience=Harmony Productions/Primitive Nerd
配給 グッチーズ・フリースクール=シマフィルム
レイティング
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット デジタル
メディアタイプ ビデオ 他
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演ミシェル・ウィリアムズ Emily Tetherow
ブルース・グリーンウッド Stephen Meek
ウィル・パットン Soloman Tetherow
ゾーイ・カザン Millie Gately
ポール・ダノ Thomas Gately

場面 ▼ もっと見る▲ 閉じる

予告編 ▲ 閉じる▼ もっと見る

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

アメリカの女流監督K・ライカートが、西部開拓時代の実在の人物と史実を基に現代の寓話として再構築した意欲作。1845年のオレゴン。広大な砂漠を西部へと向かう白人の三家族。近道を知っているという先住民ミークを雇うが、一向に目的地に辿りつかない。出演は、「マリリン 7日間の恋」のミシェル・ウィリアムズ、「ニューヨーク 親切なロシア料理店」のゾーイ・カザン、「グランドフィナーレ」のポール・ダノ、「エレファント・ソング」のブルース・グリーンウッド。シアター・イメージフォーラムの特集上映『ケリー・ライカートの映画たち 漂流のアメリカ』にて上映。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

1845年、オレゴン。白人の三家族が、広大な砂漠を西部へと向かっていた。彼らは近道を知っているという先住民ミーク(ブルース・グリーンウッド)を雇うが、何日経っても目的地に近づく様子はない。道に迷った彼らは、飢えと互いへの不信感に襲われる……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2021年7月下旬号

UPCOMING 新作紹介:「ミークス・カットオフ」

2024/04/04

2024/04/05

95点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル/PC 
字幕


映画が始まってすでに移民の家族は5週間彷徨っている。
この監督の映画は、道に迷ったり、彷徨ったりしているシュチュエーションが多いが、これは壮絶。
全く先が見えず、見ていて苦しくなるほど。
大きな声をいう男の言うことが正しいか間違っているのか分からないまま従って進むしかないというストーリーは、我々の人生にも思い当たるものだ。
物語は先住民が現れてさらに一転する。
3家族は、言葉も通じないこの男に運命を託してしまう。
特にミシェル・ウィリアムズ扮する主人公は、彼とコミュニケーションを図ろうとし、殺されそうになると銃を持って守ったりもする。
観客も、この男が3家族を水のある場所に導いてくれると信じている。
だが、一筋縄ではいかない。
水場にはなかなかつかないし、仲間の猜疑心は増し、馬車は壊れ、逆に悪い方向に行く。
主人公の夫が「お前はミークが嫌いなあまり先住民を信じている。それが誤っているかもしれないのが不安だ」というのが深い。
現代でも、政府に反対するものがヒーローのように扱われるが、それが権力を得た時、間違っているかもしれないのだ。
ストーリーは厳しいが、映像は素晴らしく美しい。
荒野をひたすら歩く女性たちの服が、背景に溶け合って絵画のようだ。

2023/12/19

2024/01/19

75点

レンタル 
字幕


禍々しい余韻

ネタバレ

この先何が待ち受けているかわからない茫漠と広がる大地のなか、もはや先住民を信じる他ない白人たちの不安と疑念と諦念がわずかな希望と入り混じる。終始剣呑な表情を崩さない主人公をクローズアップで捉えた終幕が印象的で、観る者の胸に禍々しい余韻を掻き立てる。見た目や言語の違いがもたらす無知と恐れが新たな偏見を生み出すということを実感。

A・ワイエス的風景が広がる西部開拓時代、水を求めて彷徨う移民たちの究極の選択をリアリスティックに描いた異色作。台詞や音楽を最小限に抑え、画面にそこはかとない緊迫感を醸し出しながら、登場人物の揺れ動く心情を紡ぐK・ライカートの語り口の上手さに引き込まれる。乾いた空気感が伝わる昼のシーンと漆黒の闇に覆われた夜のシーンの明暗の対照際立つシークエンス展開がイイ。

M・ウィリアムズはじめ、B・グリーンウッド、P・ダノ、Z・カザンなど、何気に豪華な俳優陣の役にはまった好演が光る。

2024/01/14

2024/01/15

75点

VOD/U-NEXT/レンタル/PC 
字幕


繰り返される昼と夜

新天地を求めるアメリカの庶民の息遣いがすごくリアルに伝わってきます。冒頭の数分間で、この時代にタイムスリップしたようです。

 そして、この一行が旅する姿に、何ともハラハラします。しかし、大きなドラマが起きているというのでもないのです。どちらかと言えば、地味な展開です。

 西部劇という感じはないし、アメリカンニューシネマでもありません。ただ、美しい自然が、「ノマドランド」に通じるのかもしれません。

 旅の途中で繰り返される昼と夜が、当時も今も変わらないように、生きていくということは、それほど変わってはいないと思います。何が正解なのかという答えを探すよりも、目の前の荒野を進むしかない、というのが現実だからです。

2023/11/21

2023/11/21

100点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 
字幕


映像作家ケリー・ライカート最高傑作

会話のない冒頭7分を観ただけでこの映画は凄いと思った。一部の隙も見受けられない映像は完璧だ。1845年オレゴンはこうだったのだというケリー・ライカートの確信に満ちた映画作りに畏敬の念すら覚える。本作の前ではジェーン・カンピオンの『パワー・オブ・ザ・ドッグ』でさえ通俗映画に感じられるほどの衝撃を受けた。

ミシェル・ウイリアムズ、ポール・ダノ、ゾーイ・カザンと映画初心者の私でも顔と名前が一致する俳優陣が集うのだからケリー・ライカートに対する業界内での評価は高いのだろう。現代米国インディーズ映画界最重要作家と称されるのも納得だ。

先導役のミークは事実上解任されミシェル・ウイリアムズが捕縛したインディアンに従う決断を下す。彼らを待ち受けるのは天国かはたまた地獄か?弛緩は一切なく緊張感が最後まで持続する。しかしケリー・ライカートは明確な答えを示さない。全ては私たちに委ねられたのだ。

如何様にも解釈可能だが私は人生のメタファーと感じた。結局のところ明日のことなど誰にも分からない。先達が必ずしも正しい道へ誘ってくれた訳でもない。自分で切り開いたつもりの道も俯瞰で捉えたら大きな時代の流れに翻弄されていただけだった。一歩踏み出すのは勇気だが一歩踏みとどまるのも勇気だった。

…私に善意で関わってくれた全ての人たちが幸せでありますように。

2023/10/12

2023/10/13

90点

選択しない 


冒頭から心奪われる

冒頭、砂漠の彼方に蜃気楼のように浮かび上がる幌馬車のシーンが幻想的でとても美しい。その場面で映画に一気に引き込まれます。砂漠を彷徨する絶望的な緊迫した状況と随所に挿入される美しい情景描写の対比が興味深いロードムービー。二度目の鑑賞ですが、何度も観たくなる魅力ある映画。

2023/08/08

2023/08/08

75点

VOD/U-NEXT 
字幕


誰がわたしたちを導くのか

1845年、開拓時代の米国オレゴン。
先導役の男に従って、三家族の幌馬車が牛や馬、ロバとともに川を渡っている。
女たちは、鳥かごや衣類などを頭に載せている。
川は深く、胸近くまで水が迫っている。
丘にあがった一向にひとりいる少年は聖書を読んでいる。
楽園を追われたアダムとイブの物語・・・

夜になり、男たちがなにやら話し合っている。
先導役のミークをやめさせるかどうか。
ミークは道に詳しいと言っていたものの、どうやらそれは嘘らしい。
このままでは、移民団を離れた我々は西部にたどり着くどころか、その前に野垂れ死んでしまうのではないか、と・・・

といったところからはじまる内容で、60年代あたりまで頻繁に作られた西部開拓史モノのようなスタイルだが、ハラハラドキドキのエンタテインメント西部劇とは対極に位置する。
なにせ、ケリー・ライカート監督だからね。
とはいえ、そのうちにハラハラすることにはなるのだけれど。

さて、そんなインディペンデント映画にもかかわらず、俳優陣は豪華。
先導役のミークに、ブルース・グリーンウッド(髭面で、まるで表情は見えないけれど)。
リーダ格のテスロー夫妻は、ウィル・パットンとミシェル・ウィリアムズ(映画の中核はテスロー夫人)。
年かさのホワイト夫妻は、ニール・ハフとシャーリー・ヘンダーソン(息子ジミー役は、トミー・ネルソン)。
年若いゲイトリー夫妻は、ポール・ダノとゾーイ・カザン(『ルビー・スパークス』のコンビだ)。
そして、中盤以降に登場する先住民族(インディアンと表記、発音されている)役に、ロット・ロンドー。

これが出演者のすべて。

さて、一行は西に向かっているが、飲料水も乏しくなっている。
テスロー夫人は、「何も知らないくせに、先に来た者だ、なんでも知っている、と嘘をついたことが許せない」として、ミークを嫌い、信用していない。
するうち、荒野で先住民族の男性と出くわす。
男は逃亡するが、ミークとソロモン・テスローにより捕縛される。
危険な男だ、と言い張るミークをよそに、ソロモンは先住民の男に先導させることを提案、他の家族の夫たちも承諾し、先住民の先導で旅が続けられることになった(正確には近くの水場までの案内であるが)。

この中盤から、ある種のハラハラ感が醸成されていきます。

夜間、これまでは無音の闇の荒野だったのが、先住民男性の言葉が低く響き渡り、その声にテスロー夫人はある種の不安を覚える。
移民団から離れたのは間違いだった・・・
いや、そもそも、こんな異国の、何もわからない無明の土地へやって来たこと自体が間違いだったのではないか。
楽園を追われたアダムとイブと同じではないのか・・・

一向に水場に到着しないこと、その上、行く先々で、先住民男性が壁画様の痕跡を残していることに、ゲイトリー夫人は極度の不安に怯えるようになる。
わたしたちは、先住民の一団に襲われ、皆殺しにされる、と。

いずれも、未知なる土地・未知なるひとに対する不安からくる恐怖なのだが、テスロー夫人は先住民男性に悪意がないことに気づき始める。
それに対して、ミークはいつまでも「危険な男だ、危険だ」と先住民への恐怖を煽っている。

終盤、先住民男性は丘の上で、ひとつ向こうの丘を指さし、天を仰いだりしながら何かを叫んでいる。
テスロー夫人は、それを「向こうの丘を越えたら水場がある」と解した。
(先住民男性の言葉には、日本語はおろか英語の字幕もないので、実際に何を言っているのかは正確にはわからないが)

急斜面を慎重に下したが、幌馬車三台のうち、最後に下したテスロー夫妻の馬車は抑えが効かず、大破してしてしまう。
荷物を分散して、歩を進める一行。
先導するのは先住民男性だ。
やがて、一行の前に、一本の樹が現れる。
荒野の真ん中に。
それはアダムとイブが追われた楽園にある「生命の樹」のようにも見える。

テスロー夫人は、先導した先住民男性を見つめる。
彼はまだ荒野を歩いていく、その後姿を。

わたしたちを導いてくれる者は何者なのか?
キリスト教でいうところの神なのか。
もしくは、文化的な先人なのか。
それとも・・・

20世紀を超えて21世紀に入ったわれわれの道程は、誰に導かれてきたのだろうか。
驚嘆すべき傑作でした。