『アベンジャーズ』史上最もマイナスからのスタートである。
サノスとの戦いに破れ、地球の人口の半分が消されてしまった世界。
前作で驚異的な力を見せたキャプテン・マーベルことキャロルが駆けつけるも、既にサノスによってすべての石は破壊されており、消えた仲間たちを取り戻す機会は失われてしまった。
誰もが喪失感を抱えながら5年の時が流れる。
ナターシャはアベンジャーズの司令塔としての役割を果たそうとしているが、悲しみは未だに癒えていない。
家族を失ったバートンが怒りに任せて各地でマフィアを殺しまくっているという知らせを聞いても、何もすることが出来ない。
ソーは完全に生きる意欲を失い、酒浸りの生活を送っている。
一方で、絶望の中でも前を向いて生きている者たちもいる。
スティーヴは大切な人を失った人たちのグループセラピーを開いていた。
バナーは完全にハルクとの融合を果たしていた。
そしてトニー・スタークはペッパーとの間に新しい命を授かり、ささやかな幸せを味わっていた。
そんな中、量子世界に取り残されていたスコットが奇跡的に帰還したことで新たな可能性が示唆される。
タイムスリップによってサノスが手に入れる前にすべての石を集めることが出来れば、世界は元通りになるかもしれない。
最も今の生活を壊したくないと思っているトニーが、最終的にタイムマシーンを作り出すことに成功するのは胸熱な展開だ。
憎まれ役ではあるが、結局アイアンマンが一番頼れるヒーローなのではないか。
成功したタイムマシーンによって生き残ったアベンジャーズは時空を越えて石を探し出そうとする。
過去の作品のシーンがこんな形でリンクするのかと感心させられる。
ソーはアスガルドでその日に死ぬことが決まっている母親と出会い、トニーは軍事施設で若き日の父親ハワードと出くわす。
そしてスティーヴも過去で再び会うことの適わなかったペギーの姿を見ることになる。
生き残るための戦いでソウルストーンを手に入れるためにナターシャが犠牲になるシーンは辛い。
その場所はサノスが娘のガモーラを手にかけた場所でもあった。
ネビュラの意識を辿ってアベンジャーズの動きに気がついたサノスは、自分への忠誠を試すために若き日のネビュラを唆し、ピム粒子を使って石をすべて手に入れたアベンジャーズのもとに大艦隊をタイムスリップさせる。
世界が元通りになった喜びを味わう間もなく絶望に叩き落されるアベンジャーズ。
しかし間一髪で復活を遂げたアベンジャーズの大部隊が応援に駆けつける。
なかなか弾けきれないストレスが溜まってきたところでの総力戦には胸が熱くなる。
そして最後に地球のピンチを救うのはキャプテン・マーベルでもドクター・ストレンジでもなく、やはりアイアンマンだ。
ドクター・ストレンジが見た1400万605通りの未来からサノスに打ち勝つたった一つの未来。
その最後のチャンスを彼がアイアンマンに示すシーンはとても印象的だった。
決して万能なヒーローではなく、むしろ不完全なところがとても人間臭く、愛すべき存在だったトニー・スターク。
家族とのささやかな生活を守ることを譲らなかった彼が、最後に自らの命と引き換えにサノスを倒す姿には心を打たれる。
悲しい結末ではあるが、アイアンマンの引き際としてはこれ以上ないほど美しく感じた。
アイアンマン、ブラック・ウィドウ、そしてキャプテン・アメリカを失ったことで、これまでのアベンジャーズの時代が終わったことを痛感させられた。
最後にヨボヨボのお爺さんになったスティーヴの姿がとても悲しかったが、彼が過去の世界でペギーと再び結ばれたことを知った時、これ以上ない幸せな結末に思わず涙腺が緩んだ。