数十年勤めてきた職場をこの3月末日で退職しました。4月になって多少時間ができたので、これまで「真っ先に」と考えていた広島に行ってきました。目的は、広島平和記念資料館です。広島は30年前に夫婦で訪れたことがあるのですが原爆ドームの横をすっと通っただけでした。今回は、本腰を入れて過去を振り返り、平和の大切さを感じる旅です。それに先立ち『オッペンハイマー』と『この世界の(いくつもの)片隅に』を再見しました。実際に足を運んでみた感想を作品を絡めながらレポートしたいと思います。
一泊二日の弾丸旅だったのですが、一日目は広島市内。二日目は、呉市に足を延ばしました。こうの史代さんの原作をアニメーション化するにあたって片渕須直監督は、当時の広島市と呉市を詳細に調べ上げて作品の舞台を描き込んだことは有名ですね。この旅行での先の大目的の他に作品に登場した見覚えのある風景が今も普通に遺されているので、その辺りを訪ねて歩いて見ることにしました。
冒頭、すずさんが代わって海苔を売りに来た中島本町に建つ大正屋呉服店(当時)は、今は平和記念公園のテラスハウスとなっています。この建物も被爆建築物ですね。公園から相生橋は目と鼻の先、すずさんと周作さんが初めて出会った場所。大変珍しいT字型に渡された橋でこの橋が原爆投下目標地点であったそうですね。
橋を渡りすずさんがデッサンをしていた広島県産業奨励館(当時)、今の原爆ドーム(負の世界遺産)横を通りテラスハウス前に戻りました。夜は、宿に帰りながら道々、福屋百貨店を通る。すずさんが嫁いだあと里帰りの際、スケッチをしたあの建物でこれも被爆建築物。今も福屋八丁堀本店として営業中でした。広島市巡りといっても今回は時間の関係ですずさんの実家、浦野家のある江波には行けませんでした。
二日目、安芸路ライナーで呉駅へ。嫁ぎ先、北條家のある呉市はロケ地巡りがしやすいように観光案内所でマップも配られているしポイントごとに整備もされているんですね。マップルートに沿って歩くと約9キロのコース。まずは下士官兵集会所。すずさんが周作さんに帳面を届けに行ったあの場所ですね。この建物、少し前まで海上自衛隊呉集会所としていた使われていましたが今は外壁に「この世界の」のキャラクターが描き込まれています。建物かどを曲がって坂を登ると突き当たりが海軍病院前の階段。入院している義父、円太郎さんをすずさん、晴美ちゃんがお見舞いのため階段を登っていく。今は国立呉医療センターになっている。
ここから市街地を抜けると上り坂、すずさんが町に出る時に必ず通る三ツ蔵を横目にひたすら登る登る。三ツ蔵は代々、庄屋さんを務めた澤原家の所有する建物。そして斜面に建てられた住宅街の中にようやく「すずさん家」(北條家)を見つけることができました。建物は無く間取りにみのポイントでキャラクターを配したプレートが設置されています。呉の港を見下ろす見晴らしの良い場所。近くにあの段々畑もありますが私有地なのでしょう。立ち入り禁止となっていました。そこからは下り。北條家がお花見に行った二河公園を目指します。公園ですずさんとりんさんがバッタリ会って桜の木の上に登り語り合うシーンは「いくつもの」で追加された部分ですね。でもこの公園、桜満開の季節なのに作品のような桜は見かけなかったなぁ。市街地に降りてくると周作さんとすずさんがデートをしたとき語り合った小春橋。海に注ぐ堺川に幾つかかかる橋の一つでもう現代風の欄干でありました。ようやく呉駅に戻ると総距離数11キロを超えてましたね。時間にして2時間半。とにかく斜面の街でアップダウンにエネルギーをとられますが北條家から港をのぞむ風景は絶景と言えます。