ものすごくローカルな話だが、この映画を聞くといつも思い出すことがある。地元のおじさんが、メリーポピンズの真似をして黒の雨傘をさして鉄道の橋梁から飛び降りて大けがをした。冗談みたいな話だが、本当にあったことだ。だが、いつ思い出しても笑ってしまう。それぐらい、この映画は当時の人たちを魅了した作品であり、ディズニーを代表する作品であるのは言うまでもない。
しかし、改めて見てみるとかなり話が支離滅裂なところが多く感じられる。だが、これをウォルト・ディズニー個人の物語として見てみると、なかなか面白いメッセージが込められていて興味深い。仕事に追われて、子供の相手をすることができなかったウォルトが子供たちに向けた懺悔のような作りに見えてくることであろう。実際、ウォルトが自身の子供たちのために作ると約束した作品だったが、結局伸びに伸びて子供たちが大人になった後に作られた。作中後半のお父さんの悩みは、ウォルト自身の悩みでもあったわけである。そう思って観直してみると、この作品の狂気じみた世界観も愛おしいものに見えることであろう。