本作は日米のポップカルチャーそろい踏みの、まるでおもちゃ箱をひっくり返したようなSFアドベンチャーです。版権取るだけでも気の遠くなるような困難が予想されるこんなオタク魂炸裂の映画、やはりスピルバーグでなければ実現不可能ですよね。
時は2045年。約四半世紀の間に一体何があったのか、地球環境は悪化の一途を辿っていました。空気はよどみ、ぶ厚い雲に覆われた空の下、人々の心は内へ内へと閉じこもるようになり、将来に希望の持てない若者たちは、ヴァーチャルな世界“オアシス”に自分たちの居場所を見いだしていました。そんなある日、オアシスの創設者ハリデーが亡くなり、彼の遺言が公表されます。その内容は、彼が生前にオアシス内に隠したイースターエッグを見つけた者に、莫大な遺産とオアシスの全権を譲るという驚くべきものでした。
とまぁ、本作のストーリーは至って単純、世界中のゲームオタクがヴァーチャルな世界でお宝を巡って派手派手な争奪戦を繰り広げるというわけなんです。ゲームの定番として、お宝にたどり着くために3つの鍵をゲットしなければならず、したがって作品の構成も3つに分かれています。まずは目の回るようなスピードレース。誰もが知ってる大物モンスターとカーマニアが泣いて喜ぶマシーンが続々登場します。次に雰囲気がガラリと変わって、映画ファンが大喜びの作品丸パクリの大サービスが続きます。そして最後のクライマックスは、見ている方がパニック起こしそうな豪華絢爛オールスターが入り乱れてのドンパチ戦闘シーンです。
ただ、日米のポップカルチャー満載と言っても、ほとんどが80~90年代のものでして、果たして登場するネタについてどの程度、今どきの観客が理解できたかは疑問です。私のような映画オタクのおばさんは、懐かしの映画ネタはともかく、ゲームやアニメに登場するアイテムやキャラクターについては、正直、一部分しか分かりませんでした(それでも十分楽しかったですが)。一方、若い人にとっては、登場するネタのほとんどが未知との遭遇なのではないかと思います。ただ、作中で描かれる仮想現実の世界観とか、オンラインゲームのお約束事項などは、なじみ深い“あるある”状態がお楽しみでしょうし、中身のネタについても、むしろ見知らぬものへの好奇心を刺激されたかも知れないです。
なにはともあれ本作を見ると、スピルバーグがどんだけ日本のポップカルチャーを愛しているかが、よーくわかります。他のハリウッド映画のように、日本のカルチャーが物珍しげなおまけとして登場するわけではなく、堂々互角に扱われているところが嬉しい限りです。メード・イン・ジャパンのどんなネタが登場するか、一つ一つコメントしたいのは山々ですが、それでは見つけてビックリのお楽しみが半減してしまいます。あと、本作ではさまざまな映画が引用されていますが、その中でも特に一つのエピソードとして大きく取り上げられている作品があります。事前に見ておくことをぜひお勧めしたいのですが、作品名を明かすこと自体ネタバレになってしまうので、それも残念ながら出来ません。もし貴方がその作品を以前にご覧になっていれば、実にラッキー、本作の面白さは確実に倍増することでしょう。
出演者のうち、メイン5人のうち1人が黒人俳優で2人がアジア系というのも正直、今どきだなぁと思いました。わが日本から参加した森崎ウィン君はなかなかのイケメンで英語も完璧、今後の国際的な活躍が楽しみです。あと、特に印象に残ったのはハリデーを演じたマーク・ライランスでして、この俳優さん、本当に上手くて、今回もジョブズ氏を彷彿とさせる天才エンジニアを飄々とと演じていました。なお、タイトルの“Ready Player One”は、テレビゲームのプレイ開始の合図だそうです。きっと、筋金入りのゲーム・プレイヤーは、このフレーズを見ただけで血湧き肉躍るのでしょうね。
(2018/4/28 記)