小学生の頃、連合艦隊のプラモデルにハマってウォーターラインシリーズを随分と組み立てた記憶がある。シリーズの中で自分が初めて購入した軍艦が水原の乗務した重巡洋艦青葉だった。たわいないことだが見ていてそんなことを思い出した。戦争の悲惨さをまだまだ知らない小学生が見た目の恰好の良さで軍艦に惹かれた記憶。でも太平洋戦争末期ではもしかしたら軍国教育を受けた少年兵が戦争のリアルも未だ掴めぬまま勇ましさのみを胸に戦闘機や軍艦に搭乗したかも知れない。
今年は敗戦から80年の節目の年にあたることから7月〜8月は過去の戦争を題材にした作品を見る頻度が増えていることに気づく。8月後半もそうなることが必至だ。すずさん生誕100年、敗戦から80年ということで『この世界の片隅に』がリバイバル上映され、初公開以来のスクリーン観賞となった。さらにいくつものとは力点がまた異なるがどちらも戦前、戦中、戦後を日常を語る作品としての底力は共通している。片渕須直監督のこだわった背景の細部、リアルに思わず唸る。この春、広島中島本町、呉と歩いたが江波には足を伸ばせなかった。風景が変わる前に一度は訪れたい。すずさんの実家のある海苔を作っていたあののどかな広島湾に面したあの町を見てみたい。
今年の夏ひときわ強く繰り返し報道されているのは被爆体験者の平均年齢が86歳となり、被爆の体験を直接語ることのできる方がいなくなることだ。それにより被爆の実相が時の経過の中で風化していく危惧と同時に再び戦争をすることはやむなしとする機運の高まりが懸念されている。この流れにいち早く気づき自主制作で『野火』を撮り作品を背負って毎年8月になると映画館を回っているのは塚本晋也監督だ。語り部がいなくなっても悲惨なあるいは間違った過去を国民の記憶に留めておくことに少しでも貢献しようとしている。おそらくこの活動に節目は無いであろう。
すずさんも今年だけでは無く来年も再来年も、101歳になっても、102歳になっても忘れやすいわれわれに戦争の実相を語りかけてください。そう願いたい。それだけ力のある作品だということはこのリバイバル上映での盛況ぶりが証明している。