原題"국제시장"で、国際市場の意。
釜山の国際市場で洋品店を営む主人公ドクス(ファン・ジョンミン)の一代記を描いたドラマ。
朝鮮戦争で興南を追われ、釜山の叔母の店に厄介になり、家長として母と弟妹を養うためにドイツの炭鉱、ベトナム戦争下のサイゴンと出稼ぎ、叔母の店を継いで孫たちに囲まれるまでを描く。
個人的な話だが、1990年代にドイツ・マインツのマクドナルドで、ハンバーガーを注文しようとして東洋人の店員に韓国語で話しかけられたことがある。在住の日本人に話すと、ドイツには韓国人が多く、とりわけ看護婦に多いと聞かされた。
ドクスがドイツで出稼ぎをするのは1960年代で、マクドナルドの店員はその子供の世代にあたる。そのドイツでドクスは韓国人看護師ヨンジャ(キム・ユンジン)と出会い、帰国後結婚する。
出稼ぎせざるを得ない貧しい境遇の二人が互いの寂しさを語り合うシーンが印象的で、朝鮮戦争後を生き延びた韓国人の戦後史が、本作の大きな見どころとなっている。
そうした点で『おしん』の類型で、邦題になっている父との約束、興南脱出時に生き別れとなった妹との再会、ヨンジャとの恋物語と、よくできたシナリオになっているのだが、『おしん』同様の過剰なセンチメントといささか大袈裟なコメディ演出が観客受けを狙い過ぎた通俗で、作品全体の質を落としている。
父と叔母のために店を手放すまいとするドクスの意思が、単に頑固者という一言で類型に嵌められているのも描写不足で、プロローグの蝶のCGも意味不明。
ファン・ジョンミンとキム・ユンジンの老齢メイクも出来が悪く、演技も良くない。