オードリー・ヘップバーンも38歳。若い頃のような夢の世界にいられずに、シリアスなドラマに挑んだ、というところなのだろう。「パリの恋人」「シャレード」で3度めになるスタンリー・ドーネン監督としても、ここらへんでオードリーの別の魅力を引き出そうと考えたに違いない。
まあ、高校生の頃にテレビで観た時はこのドラマの味は良く判らない。仕方ないね。子供だもんね。他のオードリーの作品よりも娯楽性が少ないのは当然だし、高校生ではこの地味で真面目な話を面白がれる訳がない。
長年連れ添った夫婦の倦怠期、分かるよ~、なんて高校生の子供が言ったら、うそだろ~となるから。
そういう意味では齢60の今、午前10時の映画祭でこの作品を観るのは良いタイミングなんだろうなあ。まあ、もう少し前、50代、40代でも良いけど。
マリッジブルーというと結婚前の不安定な憂鬱な気分のことだけど、倦怠期をマリッジブルーと称するのがふさわしいような気がするけど。
高校生のガキが観ても面白くない地味な話が染みるようにじんわり来るのであった。自分自身は倦怠期が来る前に、相手と溝が出来て別れてしまったのであるが、この夫婦の気持ちがワカル。
どんなに仲が良くても長い事一緒にいれば、飽きも来るし、マンネリだってあるなあ。
時系列がバラバラというのは昨今の映画でもよくあるが、その先駆みたいな構成で、アレ、この場面はこの夫婦の現在?過去?と戸惑うところもある。だが、それはたいして疵になっていない。
ヘンリー・マンシーニの音楽が美しい。彼のメロディはほんのりと品の良さが伝わってきて、端麗な楽曲がますます美を感じさせてしまう。
この音楽のおかげでシリアスなドラマがメロドラマみたいな雰囲気になるのであった。