それでも夜は明ける

それでもよはあける|12 Years a Slave|12 Years a Slave

それでも夜は明ける

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レビューの数

184

平均評点

76.7(1233人)

観たひと

1832

観たいひと

210

(C) 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 伝記 / ドラマ
製作国 アメリカ イギリス
製作年 2013
公開年月日 2014/3/7
上映時間 134分
製作会社 Regency Enterprises=River Road Entertainment=Plan B Entertainment=New Regency Pictures=Film4=Regency Enterprises
配給 ギャガ
レイティング PG-12
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット デジタル
メディアタイプ ビデオ 他
音声 ドルビーSRD

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

19世紀半ばに誘拐され奴隷として非道な扱いをされたソロモン・ノーサップの自伝を映画化。監督は「SHAME-シェイム-」のスティーヴ・マックィーン。脚本は「アンダーカバー・ブラザー」のジョン・リドリー。12年もの間苦難を受け続ける黒人音楽家を「2012」のキウェテル・イジョフォーが、狂信的な選民主義者を「SHAME-シェイム-」のマイケル・ファスベンダーが、奴隷制度に反対する労働者を「ワールド・ウォーZ」のブラッド・ピットが演じる。ブラッド・ピットは本作の製作にも加わっている。第86回アカデミー賞で作品賞を受賞。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

奴隷制度が広がっていた1841年、アメリカ。ニューヨークで家族とともに暮らす自由黒人で音楽家のソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、突如誘拐され、奴隷としてアメリカ南部のニューオーリンズへ売り飛ばされた。農園での労働を強いられ、狂信的な選民主義者エップス(マイケル・ファスベンダー)ら白人たちからはむごい差別と虐待を受けながらも、ソロモンは決して人としての尊厳を失うまいと心に決める。いつかまた家族と再会できる日が来ることを信じ続けて耐え忍ぶソロモン。そして12年もの歳月が流れたある日、奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バス(ブラッド・ピット)と出会い、これを機に彼の運命は大きく変わっていく……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2014年10月上旬号

MOVIE at HOME お家でDVD & Blu-Layを:DVDコレクション 「それでも夜は明ける」

2014年4月上旬号

読む、映画:「それでも夜は明ける」

REVIEW 日本映画&外国映画 公開作20作品、60本の批評:「それでも夜は明ける」

2014年3月下旬号

UPCOMING 新作紹介:「それでも夜は明ける」

マイノリティを生きて 黒人監督が語る、彼らのものがたり:監督インタビュー「それでも夜は明ける」スティーヴ・マックィーン

2025/09/23

2025/09/23

44点

選択しない 
字幕


受験勉強

賞レース狙いの作りで、目論見通りそのまま受賞している凡作。

2025/09/22

88点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 
字幕


道を切り開ける者

もし当たり前だと思っていた平穏な生活が、ある日突然に奪われてしまったら。
それも理不尽な人間の悪意によって。

1841年、ニューヨーク州のサラトガに住むソロモンは、家族と共に優雅な生活を送っていた。
ヴァイオリニストである彼は、二人組の白人からの誘いで周遊公演へ参加することになる。
ワシントンDCでの公演の後、二人の紳士的な態度に気を許した彼は勧められるままに大量の酒を飲んでしまう。
目覚めた時、彼は鎖に繋がれていた。
彼は必死に身分を証明しようとするが、聞き入れてもらえずに奴隷商に引き渡されてしまう。
ここから彼の屈辱的で地獄のような毎日が始まる。

南北戦争が始まる20年前の出来事であり、改めて南部の黒人差別の卑劣さに衝撃を受けた。
そして奴隷として使用するために、北部に住む黒人を誘拐する事件が多発していた事実にも驚かされた。
身元を証明できる白人によって助け出された黒人もいたようだが、ほとんどの者は奴隷として生涯を終えたという。

とにかく白人の傲慢で不遜な態度に怒りを覚えたが、絶望的な状況で道を切り開ける者とそうでない者の境界はどこにあるのかを常に考えさせられる作品だった。
奴隷商によって船に乗せられたソロモンに、同じく囚われた黒人の一人が決して身元を明かそうとするなと忠告する。
白人の気に障れば簡単に命を落とすことになると。
そしてその通りに白人の気まぐれによって簡単に黒人は殺されてしまう。

従順な奴隷として生涯を終えるぐらいなら、闘って死を選ぶべきか。
このような究極な状況で答えを決めることは本当に難しい。
闘えば確実に死ぬ。
ソロモンは何とか生きて家族と再会する道を選ぼうとした。
そのためには白人に従順になるふりをしなければならない。
ただひたすら道が開けるチャンスを待つしかない。
そのチャンスが本当にあるのかどうかも分からないまま。

地頭が良く一芸にも秀でているために、ソロモンは何とか領主のお気に入りとして生き延びることが出来た。
ただ従順なふりはしても、彼の心の中は怒りでいっぱいだったはずだ。
絶対にこの運命を受け入れてはならない。
その強い思いが彼を動かし続けていた。

道を切り開ける者とそうでない者の違いは、運命に抗い続ける者と諦めて受け入れる者の違いなのかもしれないと感じた。
パッツィーという綿花の摘み取りに秀でた奴隷の存在が印象的だった。
彼女はエップスという農園の支配人のお気に入りだった。
そのためにエップスの妻メアリーからの嫉妬を買い、酷い仕打ちを受けていた。
彼女はこの地獄から抜け出したいと願ってはいるものの、諦めて運命を受け入れてしまっている。
エップスの命令でソロモンが彼女を鞭打つシーンは、胸が張り裂けそうになる。
ソロモンは従順でいるばかりではないが、エップスの命令に逆らうことは出来ない。
ソロモンの目的は生きて家族に会うこと。
だが、そのために魂を売ってしまって良いのか。
ソロモンに出来たことは、いつか天罰がくだるとエップスに告げることぐらいだった。

南部は黒人にとっては地獄のような場所だが、この映画に登場する南部の白人が誰一人幸せそうに見えないのも印象的だった。
彼らは平気で黒人を所有物だと言い放つ。
その言葉には強烈な棘がある。
おそらく彼らも自分たちの行いが正しいと心から信じているわけではないのだろう。
自分たちが圧倒的に優れていて、強い立場にいることを実感するために黒人たちを虐げているのだ。
それは劣等感の裏返しである。
どんな人間にも良心はある。
その良心に反する行為をする者が、幸せになどなれるわけがない。
だからエップスにしてもメアリーにしても、彼らの姿はとても哀れで滑稽だ。

12年もの長い歳月を奴隷として生きることになったソロモンの、あまりにも過酷な運命を思うと胸が苦しくなる。
なぜ彼はこのような仕打ちを受けなくてはならなかったのか。
もしかすると危険を回避出来る場面はあったのか。
それとも最初からこうなる運命だったのか。
神様は乗り越えられない壁を人に与えないという。
それでも信じていればいつかは救われるという保証はどこにもない。
やはり運命は自分で切り開かなければならないのだ。
その結果がどうなるかは誰にも分からないが。

生きる勇気を与えてくれる作品でもあり、人生の無慈悲さを突きつけてくる作品でもあった。
そしてとても美しい作品であるとも。

2025/08/03

2025/08/03

60点

テレビ/無料放送/BS10 
字幕


木から垂れ下がるもの

黒人の家庭があるが,それよりも黒人の奴隷労働があることに目がいく.労働はさまざまである.ハウスメイドのような家政的な労働から,庭や大工仕事などは可愛いものであり,彼女ら彼らの労働は専ら農場経営の人的資源として搾取されている.さとうきび,綿花,また新たに農地を切り拓くための木材伐採などだろうか.
しかし,中には自由黒人がおり,そこには白人並みの家庭生活がないわけではない.ソロモン(キウェテル・イジョフォー)は自由黒人でありながら,白人たちに騙され,1841年のニューヨーク州で奴隷となってさばかれていく.ソロモンは,バイオリンを弾く.サーカス労働もあるらしいが,ソロモンは手枷足枷をはめられ,奴隷船で運ばれていく.「プラット」という新たな名をつけられ,1000ドルの値をつけられている.旦那様も表面には出さないものの黒人とそのパワーに恐怖しているようでもある.先住民と踊りと音楽で交流する黒人たちもいる.プラットが知恵を出し,作業を取り仕切りながら筏を組んで木材を運んでいる.黒人女性イライザは声をあげて,ただただ泣いている.
プラットはやらかしてしまい,首を吊られているが足先はかろうじて地面についている.その吊られている周囲の木にはサルオガセも垂れ下がっている.綿花を摘む量がやたらと多い「女王」パッツィー(ルピタ・ニョンゴ)がいる.黒人たちは主人に音楽の演奏を強要され,ダンスをさせられている.奥様もだいぶて厳しく,夫の性の吐口にもなっているパッツィーは目の敵にもされ,手ひどく暴力をふるわれている.パッツィーは死にたがっており,プラットに自らを殺すことを依頼してもいる.
害虫が綿花をダメにするとされ,主人は奴隷がこうした天災を招くと考えている.埋葬した墓の前で仲間の黒人たちによって歌が歌われている.屋外労働においても彼女ら彼らは,恨みのこもったような歌を歌いながら従事していいる.鞭打ちは所有物でもある奴隷を使った遊びで,楽しいものでもあるらしい.

2014/03/12

2025/06/21

70点

映画館/大阪府/大阪ステーションシティシネマ 
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拉致され奴隷として売られること、容赦ない鞭打ちと痛々しすぎる傷跡に思わず絶句。が、何よりも衝撃だったのは、すぐそこに首を縊られている人がいるのに、周りの人たちが全く動じず淡々と普段の生活を送っていること。ここでは、こんな非日常の風景が当たり前のことなんだ、と思い知らされる。そして、あの状況下で自己を保てていたソロモンは本当に凄いと思うけれど、あまりに心が落ちなさすぎて少し違和感が。どことなく、自分は自由黒人で他の奴隷たちとは違うという特別意識があったんじゃないか、と穿った見方をしてしまう。個人的には、精神的にどん底まで突き落とされながらも、それでも這い上がってくる姿が観たかった。また、12年に渡る奴隷生活を描きながら、時間の経過がほとんど感じられなかったのも残念。それにしても、ポール・ダノってばヘタレな冷酷人間が似合いすぎ(笑)。

2014/03/14

2025/06/10

70点

映画館 
字幕


せっかくのオスカー作品賞が有名スターの顔出しでがっかり

ネタバレ

 奴隷制といえば、アフリカ大陸から大きな船に乗せられて大西洋を越えてやって来た黒人たちという、実に安易なイメージしか浮かばなかった私にはとても衝撃的な話でした。
 
 このお話の主人公、と言っても本作は事実に基づいているのですが、その主人公ソロモンは、NYで普通の生活を営む妻も子もある一家の主ですが、ビジネスがらみの詐欺に会い、奴隷として売り飛ばされてしまうのです。若い娘じゃあるまいし、そんなことがあるのか?と思うのですが、甘い、甘い。これは実際に行われた立派な拉致なんですね。

 奴隷制度については知識では分かっていても、奴隷として扱われた当時の人々の気持ちなど、所詮平和ボケした私の脳内では想像の限界を超えています。本作を見ているとき、私としてはせめて、こうした困難に会ったとき、人はどう振る舞えばいいのかという気持ちで見ることしかできませんでした。けれど、これは現実にあった話ですから、冒険小説のように主人公は戦って危機を脱することもできないし、彼を助けるヒーローも登場しません。彼の出来ることはただ一つ、生き延びること。すなわち再び家族の元に戻るまで辛抱することです。そのためには到底許すことの出来ないこの現実を受け入れる、というか目の前にある状況に適応してゆくしかありません。これは動物であれ人間であれ、命を持つ者の本能ではないかと思いました。

 本作を見てつくづく恐ろしいと思うのは、生き延びようとする本能が次第に隷属という形に姿を変えてゆくことです。家畜以下の扱いを受け続ける奴隷たちは、次第に人間らしい気持ちを失ってゆきます。目の前にある現実に何とか対処しようと考えたソロモンは、最初、与えられた仕事を一生懸命こなし効率化のために様々な提言をして主人に認めてもらおうとするのですが、それを快く思わない主人の使用人によって半殺しの目に遭います。周囲の者たちは奴隷たちを含めて誰も彼を助けようとはしませんでした。

 半生半死の状態で何時間も木に吊るされた彼の周りでは、奴隷の子供たちが遊びまわり、主人の妻も遠くから彼を眺めるだけです。それはまるで、弱ったインパラが目の前でライオンに襲われても、群れの仲間たちは何事もなく草を食んでいるアフリカ草原の光景に良く似ています。襲われた一匹のお陰で、今このひと時だけでも、自分たちの身の安全に安堵しているような感覚です。奴隷に対し、比較的優しい気持ちを持ち合わせていた彼の最初の主人に、ソロモンは自分は自由黒人であることを打ち明けるのですが、主人はそのことを二度と口に出してはいけないと忠告します。そのことが奴隷となった彼にとって、裏目に出るというのです。

 トラブルを抱えたソロモンをこれ以上庇い切れなくなった主人は、彼を手放すことを決断します。二度目の主人は奴隷に対し冷酷な仕打ちをすることで悪評高く、ソロモンの苦難はますます深く厳しいものとなります。様々な努力や挑戦は全て裏切られるなか、彼は自我というものを完全に隠し去り、次第に群れの中で息を殺して生き延びようとするインパラになってゆきます。終盤、彼が大切にしていたバイオリンを自らの手で壊してしまうシーンが痛ましいです。

 さて、奴隷となって12年目、ある日彼に思わぬ出来事が起きます。本作は解放されたソロモン自身が実際の体験を本にまとめたものを描いているわけですから、結末は自明ですし、解放のきっかけも事実なのでしょう。ただ、有名スターが突然登場し、重要な役回りをするところに大変な違和感を感じました。普段から人道的な活動に労を惜しまない彼の評判は良く耳にしますし、プロジューサーとしての才能も確かに素晴らしいですが、だからこそ、本作では顔を出して欲しくなかったです。日常の平穏な生活にどっぷり浸かる極楽とんぼの私ですら、奴隷制度はそんな単純な話ではないということは分かります。スターの登場によって、たった一人の人道的な行為が主人公を救った、そんな印象が強く残ったオチとなってしまったのが残念です。

(2014/03/14 記)

2024/07/07

2024/07/07

80点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


12年は長いな

2024年7月7日
映画 #それでも夜は明ける (2013年)鑑賞

ニューヨークで自由黒人として自由な生活を送っていた主人公が、誘拐され南部の農園に売り飛ばされ、帰還するまでの12年の奴隷生活の物語

同じ人間なのに人間扱いしない感覚って何なんだろうな。差別の感覚はいつなくなるのかな?