1997年に起こった物語を往還する.裁判が行われる法廷と祈祷が執り行われる教会が対比され,また学校と刑務所も類比的に描かれている.
セーラームーンが流行った時代でもある.マイナス18度の寒い日にランドセルを背負って坂道を歩く子どもがいる.パパと娘に呼ばれているイ・ヨング(リュ・スンリョン)は、野球帽をかぶっていることがあり,よく殴られている.殴られているから頭が弱いのか,弱いから殴られるのか,そして少女は頭を打って死に,パパは彼女を殺した容疑で捕まっている.人工呼吸と心臓マッサージが虚しくリズムしている.その行いは,パパが駐車場整理の稼業の中で救命研修として習得した技術でもある.
「5482」として入所したパパと同じ房に,5人ほどの囚人の顔が見えている.房長(オ・ダルス)は自らの権限をデモンストレーションしているが,そうした人物によくあるように,一度,仲間として認められ,自らの権威を侵さない範囲においては,家父長のように同房の者たちを庇護し,優しくもあり,いいやつとなっている.イエスに似た名前を持つのがパパの娘イェスン(カル・ソウォン)である.彼女は段ボールに隠れてこの房の中にやってくる.それは夢のようでもある.雨の中の出来事もある.雷鳴が響く,そして火事が起こる.さらに古い出来事が回想されていく.
保安課長チョン(チョン・ジニョン)はこの刑務所で責任を負う立場にある.彼も厳しい反面,義には厚く,味方になれば心強くもあり,この房やパパとイェスンの特別な事情を認めてしまっている.房の中には楽しみもあり,学校を超えて,家庭的ですらあり,顔を並べた面々は,さながら家族のようでもある.ゲームに興じ,ルービックキューブを弄び,書き取りの勉強が行われている.また,刑務所内の労務としてはサッカーボールを作っている.模擬的な裁判も行われ,死刑に対して人々は動き出している.
携帯電話の電波を求めている.電波は空中を飛んでいる.気球も刑務所からどこかへ飛んでいこうとしている.