1945年のベースボールをめぐる情況から物語は始まる.球場は暗い.ニグロリーグが地方興行に回っている.ブルックリン・ドジャースの球団マネージャーであるリッキー氏(ハリソン・フォード)のオフィスのブラインドが操作されると室内に光が入る.ジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)の身体に光が射す.
ジャッキーがフィールドで出塁すると,必ずと言っていいほど走り出しスチールを狙い,塁も一つでも多く稼ごうとする.彼は政治的な理由ではなく,金を稼ぐためにフィールドでプレーをしている.彼が走り出すと,少年たちも走り出し,列車も走り出す.帯同する記者ウェンデル(アンドレ・ホランド)が打つタイプライターの音も駆け出すようでもある.彼は,超人的な身体能力に加え,神に忍耐力を授かったといい,人種差別に対し忍耐で応えようとしている.フロリダからニューヨークへ,1947年シーズンの開幕に向け,ジャッキーとリッキーは動き出そうとしている.ドジャースのチームメイトはジャッキーとチームメイトになることを嫌がり嘆願書を出そうとしている.リッキーの指示もあり嘆願運動を阻止する監督レオ(クリストファー・メローニ)は,女性問題をスクープされ逆に1年間の謹慎をくらう.監督不在で開幕を迎えたものの,老熟したバート(マックス・ゲイル)という男が監督に座る.ジャッキーがプレーをすることで,非難や支持も含め,周囲は波立ち,動き出そうとしている.ジャッキーは出塁すると,鍵盤でも弾き鳴らすように指を動かし,塁からリードをとる.その低い姿勢は,実況者によって猫にも喩えられる.ジャッキーはバッターボックスに立つ前に,フィールドの土で手を洗うかのようにしてゲンを担いでいるのだろうか.そうした姿勢や運動を子どもたちがまねて,プレースタイルをフィールド外にも広げていく.ジャッキーには,無口でもいるが,何よりも運動が身体が乗り移っているのであろう.