監督としての円熟味を増した傑作、サスペンス感漲る壮大なドラマ
ネタバレ
クエンティン・タランティーノは「10本撮ったら監督を辞める」と言っているそうだが、本作は7作目(キル・ビル2作は、1作と見なす様だ)。「レザボア・ドッグス」と「パルプ・フィクション」で切れ味鋭く、意味なさそうで面白い会話で世間を驚かせた後、「ジャッキー・ブラウン」と「キル・ビル」で女性ヒーローを描き、「デス・プルーフ in グラインドハウス」でちょっと休憩して、いよいよ「イングロリアス・バスターズ」で大作に取り組み、次が本作「ジャンゴ 繋がれざる者」だ。
本作では、奴隷が恰好良い殺し屋となり、愛する女性を助け出すファンタジー。劇中で、デカプリオが「何故奴隷は反乱を起こさないのか?それは、脳の隷属部分が大きいだからだ」などと語らせているが、まさに、そんな醜い白人の思い込みをバッサリぶった切る快作。ここまでやるからには、徹底的に奴隷が味わった残忍な拷問や辛酸な言葉を描き切る必要があるが、それがまた「現代では、人種差別だ」とマスコミやスパイク・リーから叩かれる、というオマケ付だった。私の様な戦後サラリーマン日本人は、画一された会社人間社会しか知らないので人種問題に疎いが、ここまでやる、という監督の意気込みを感じた。そして、ラストで豪邸を見事なまでに一瞬で爆破してみせる爽快さ。
備忘メモ:
奴隷を拷問したり残虐するシーンは、生々しくもドラマティックだった。これを見るんだ、これが昔起きたことなんだぞ、と言わんばかりに。
デカプリオの豪邸での夕食シーン、愛する人を救い出すのが真の目的であることがバレてしまう過程の描き方は緊張感満載だった。怒りにグラスを叩いて血を流すシーンは本物のデカプリオの血だそうだ、いわゆる、撮影中のハプニングだったそうだ。その血で、彼女の顔をふくシーンはもちろんアドリブだったんだろう、鳥肌が立った。